夏といえば夏祭りと縁日、といえば楽しい、美味しい、いろんな露店だ。
その露店を出さない夏祭りが増えているという。
その原因は若者たちのケンカや酔っ払っての大暴れとか、公共物や各種の器物破損らしい。露店の出ない祭りは、抜けた水の入っていないプールみたいだ。
露店を楽しみにしている老若男女はがっかりするし、露店でメシを食べている人々もガックリだ。
この人たちを「的屋」とか「香具師(やし)」とかいう、元々は「野師」または「矢師」ともいった。ここで少々的屋の用語を書く、何の役にも立たないが暑さで頭がボアボアしているのでこんな事を書く。
露店に出すときは的屋の土地の親分に庭(縄張り)を借りるあいさつをする。
親分は「張元」と呼ばれる。中に入って仕切る人を「世話人」という。
あいさつのことを「ネタツケ」という。店を出すところは「高市(たかまち)」または「高町」という。
商売のしやすい場所は「テンショバ」といい、そうでない場所を「ガリショバ」という。大勢の人を集める者は「大ジメ師」、客を半円形に集める者を「中ジメ師」という。
お客さんのことを「キャー」という。
投げ売りは「ヤセリ」、植木屋は「ハボク」、易者は「ロクマ」、飴や風船を売るのを「コミセ」、手品師などは「スマ師」という。
こんなことを書いても仕方ないのでお終いにする。実に業界言葉とは面白い(どんな業界にもある)。
若者よ露店が出せないようなことをしては男にはなれない。
私は露店大好きなのでガキの頃、的屋さんに憧れた。
いろんなイカサマにあったが楽しかった。同じお客同士と思ったのが実はサクラの人たちであった。サクラのことを「コツ」という。あっ、いけねえまた書いてしまった。
一度詰将棋をやってとんでもない額を請求され、台をひっくり返したことがあった。
私と一緒にやった先輩以外の数人の見物客はみんなサクラであった。
だます「コツ」を知っているのだ。
夏祭りに行く機会が増えるのでくれぐれも気をつけて下さい。
詰将棋が35手か50手詰めというとんでもないほど難しいので。
最後にイカサマを見抜いてそのまま乗るのを「横揚げ」という。
これができれば的屋の“敵や”となる。プ
ロの将棋指しはこれでお小遣いを稼いだと何かの本で読んだ。
プロの上には超プロがいる。
※参考文献「ヤクザとシノギ」高田燿山著・双葉社刊