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2016年12月12日月曜日

「ポルシェと板わさ」




四十年以上会社を共にやって来た、私の何より大切な仲間の一人が先夜、夢は赤いポルシェに中古でもいいから一度は乗りたかったとはじめて言った。
クルマのことがまったく分からない私だが、家の近所にある松下政経塾の隣にポルシェのショールームがあるのは知っていた。
その隣は三菱自動車のショールームだ。
そのトイメン(まんまえ)が私がよく行く「紅がら」というおそば屋さん。

昨日午後二時ちょっと過ぎ、床屋さん帰りにポルシェのショールームに行った。
勿論はじめてである。
すいませんポルシェあると言えば、歯を矯正中の33才位の女性が落ち着き払って、ハイございます。
目の前にドーンと2台。
赤いのあると言えば、今ここにはありません、どんな車種でしょうかと言う。

少し遠くで42才位の店長らしき人がパソコンを見ながら私を見た(その顔にはこの客はただのヒヤカシと描いてあった)。
道路の側の丸テーブルで40才位の一人の男性が上着を脱いでなにやら書類を作っていた。はじめてのポルシェショップ、外から見るのとは大違いでかなり大きい。
どんな車種をお探しですかと再度聞かれて、うん、あのカタログあるというと、ハイございますとカウンター奥に行った。

白い方が1750万、黒い方が1950万位だった。
価格表示の数字が多くて良く確かめられなかった。おっと振り返ると矯正女子が立っていて、いろいろオプションをつけたりすると、2000万円位になるんだと。
いいねえ、いいクルマだ、なんて言いつくろってカタログを受け取った(何しろ運転免許も持ってない)。

ミニチュアカーがガラスケースの中に入っていた。
一台9800円、よしとりあえずこれを買ってあげようと思い、赤いのはないのと聞いたら、申し訳ありません、今ここにはありませんと言われた。
おクルマに乗ってみますかと言うから、と、と、とんでもないと断った。
分厚いドアーの中は分厚い革のソファーがあった。

ずい分前からここにショールームがあるけど、外からは薄暗くてよく見えないね、このあたりでこんな高いの売れるのと聞いたら、ハイ、お買上げいただけますから、ずっとやっておりますと言われた。スミマセン失礼いたしました。
今度赤いポルシェに乗りたいという男を連れて来ますと言ってショールームを出た。
トイメンの紅がらに行こうと信号を待ちながら振り返ると、ショールームのドアの外で矯正女子が深々と頭を下げていた。

ふと知人の歯科医師のクルマのことを思い出した。
特注のポルシェで3800万位したと言っていた。注文して3年かかったとか。
やっぱり歯医者さんはもうかるんだな。

我が愛する仲間よ、まずはカタログで勘弁しろ、いずれ中古の赤いポルシェを。
あるいわ9800円のミニカーを。少し大きいミニカーは29,800円だった。
夢は追うためにある。レースは未だこれからだ。

山口百恵ちゃんが唄った歌の中に、真っ赤なポルシェが出てきた。
その歌の中に♪~バカにしないでよ そっちのせいよ ちょっと待って プレイバックプレイバックというフレーズがあった。
初心にプレイバックだ。みんなで力を合わせて戦うのだ。

紅がらで小ビール一杯、酒一合、つま味にまぐろ山かけと板わさ。
〆はざるそばであった。

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