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2017年3月31日金曜日

「原宿ロール」




「原宿ロール」がいいんじゃないですか、と教えてくれたのはタクシーの運転手さんだった。仕事をさせてもらっている代田橋の会社まで向かっていた。

青山通りから表参道に入った時、お土産を買ってないなと思った。
運転手さん悪いけどなんかお菓子屋さんかなんかあったら止めてよと言ったら、ゴッツイ顔からやさしい声で原宿ロールを教えられたのだ。
で、着いた店は「コロンバン」であった。店内は若い女性で満員であった。
午後四時三十分頃である。

私の前に三人組と二人組の若い女性がお菓子ケースの前に並んでいた。
ケースの下段に宮内庁御用達原宿ロールとPOPがあった。
独特のハチミツと生クリームが人気らしい。
直径8センチ位、長さ12センチ位が一本1080円であった。それを四本買った。
一本ずつ白い箱に入れてくれた。
そしてその箱の上に保冷剤を長く切ったセロテープで貼り付けてくれた。

私は辛党なので生クリーム系は年に11回しか食べない、それも少々。
10回は家族の誕生日、後一回はクリスマスだ。
運転手さんありがとよ、かなり旨そうだよ。原宿ロールは人気なんですよと言った。

二時間位アレコレみんなと打ち合わせ後、社長さんと食事でもと思っていたが、原宿ロールを太く切って食べたのでおなかが一杯となった。
社員の方々が旨かった、美味しかったと言ってくれた。男女共に人気であった。
ちょっと珈琲でもとなり、社長さんと小一時間話をして四ツ谷駅へ。
四谷から東京→辻堂と乗り継いで帰った。

八時四十五分頃に着くと腹が減っていた。
駅のホームからおでんの赤ちょうちんをよく見ていた。
線路ぞいの店でいつか入りたいと思っていたので店に向かった。
アタマの中は日本酒とおでんになっていた。
初めて入るのでかなり古くなったスライド式の扉をゆっくり開けた。
おっ小さい、おっおでんだ、おっ満員だであった。
五人位しか入れないカウンターだけの店だった。残念ながら常連さん風ばかりだった。
仕方ない帰るかとなった。
家に帰りブリの塩焼きと、ハンバーグ、しらすおろしを食べた。


東京新聞の夕刊に好きなコラム「大波小波」というのがある。
お茶を飲みながら読んだ。村上春樹の新作がらみのことをちゃんと書いていたので原文のママ書く。
「発売日の発行部数が百三十万部。待ちに待たれた『騎士団長殺し』は、社会現象になるほどの反響かと思っていたら、どこの書店へ行っても店頭に売れ残りが高く積まれている。予約部数の多さからして当然ベストセラーにはなったものの、読者のツイッターや各紙に出た批評家たちのコメントには、さほどの熱がない。
主人公が山の家に籠もって絵を描くばかりで、行動範囲が極端に狭い今回の作品は、いかにも村上春樹らしいと言えばそうだが、どこか昔の作風に逆戻りしたようで、大胆さや新鮮さには乏しい。東北の港町や東日本大震災は書かれるが、原発事故への記述が全くない。期待が大きすぎただけに、肩透かし感が残る。
出版社頼みの綱のハルキ特需も、ぼちぼち限界なのではなかろうか。今回の発行部数は読者の熱意よりもスマホでの宣伝まで駆使したセールス主導のバブリーな数字である。
呆れて背を向ける人口が逆に増えた気がする。あとに残るのが返本の山にならなければいいのだが。金の卵を産むガチョウも不死身ではない。いっそ商業的に失敗し、お祭り騒ぎから開放され、誠実な読者だけを相手に書けるようになればいい、と作者は望んでいるのではないか。穏やかな老後を送らせてあげたい。(イデア)」
コラムのキャッチフレーズは“ハルキ特需は限界?”であった。

セックスレス夫婦には受けているらしい。何!ヤッテルってか、ならば買うことはないかも。ラストシーンが衝撃的映像の「草原の実験」を又借りて来ていたので午前二時二十分五十八秒から見始めた。セリフは一切ない。
映画を志す人は必ず見てほしい。天才中野裕之監督も絶賛している。いい週末を。

2017年3月30日木曜日

「マタギの教え」




「マタギ奇談」工藤隆雄著、山と渓谷社。
「天は我を見捨てた」と北大路欣也が猛吹雪の中で叫んだ。
大ヒット作「八甲田山」のシーンだ。

私はマタギの話や、柳田国男の山の話とか、折口信夫の本とかをホンノ少しばかり読む。マタギ奇談にはこんな話が書いてある。

1902年(明治35年)歩兵青森第五連隊2010人が青森市南方にそびえる八甲田山に入り、199人が凍死した大事件だ。
当時、日本は日清戦争が終わり、近い将来ロシアとの戦争を始めようと目論んでいた。そのために雪中行司軍の訓練を各隊がしていた。
マタギたちはこんなときに八甲田山に入るのは危険だ、中止すべきと言ったが、なんのこれしきの雪、我々は雪と戦っているのではない、ロシアと戦っているのだと言って、無謀な行軍を進めた。

マタギの指示を聞き入れ生き残るための方策をした弘前隊は助かり、マタギの意見を聞き入れなかった青森隊は強行をし全滅した。軍はこのことを秘密にする様にした。
マタギたち案内人に八甲田山中のことをしゃべったら牢獄行きだと口止めした。
生き残ったマタギたちは凍傷で手と足の指を落とした。が村や国の補償はなかった。
凍傷が原因で廃人になったり、若くして死んだ。

北大路欣也は青森隊、高倉健が弘前隊であった。
この事件を後年時事新報社の記者であった、小笠原孤酒(本名広治)が丹念に調べ自費出版をした。1970年である。「八甲田連峰吹雪の惨劇」全五巻。
それを読んだ新田次郎が更に調べ1971年「八甲田山死の彷徨」という小説にしてしまってベストセラーとなった。小笠原孤酒はこのことに愕然とした。

高校生たちが雪崩に遭って多数死んでしまった。実に悲惨だ。
マタギたちを指導者の中に入れておいたら助かっただろうにと思った。
高校生の雪山の訓練は絶対に止めなければならない。山は恐いのだ。
インタビューを受けていた教育者には危機感が全くなかった。

2017年3月29日水曜日

「便利の先」




待つ時間のない時代。便利といえば確かに便利である。
朝アマゾンというのに本を頼んでもらうと早ければ夜に、遅くとも次の朝には届く。
書店に行って取り寄せを頼んで、本が入りましたの電話が4、5日後あって、ハイありがとう取りに行きますがフツーであった。
川上書店に行って本に出会って、近所の喫茶店かなんかに入って、珈琲でも飲みながらパラパラとめくる。一つの楽しみであった。

フィルム使用のカメラでパチパチと花やら海やら、孫たちを撮ってカメラのキタムラに行く。かつては二日後に出来上がるのでそれを取りに行くのが楽しみだった。
ママチャリに乗ってリンリンさせながら何度も何度も通ったが、カメラのキタムラは閉店した。デジタルカメラ時代、フィルム利用がなくなったのが主なる原因(?)で不採算店は整理された。

もしもし魚昌ですが、いい干物が2日後に入りますと電話が入る。
あっ、そういいね、取りに行くからと大好物のアジやサンマやカマスの干物の夢を見て、徒歩約10分位のところに取りに行ったもんだが、魚昌は店を閉めた。
お取り寄せ便に電話をすると次の日に届く。
白いアツアツのご飯の前にジュウジュウするアジの干物の夢を見る間もない。
何しろなんでも早いのだ。

もしもしハイ今出ますと電話の声、だが料理は未だ出来ていない。
中華料理店の出前だ。すぐ着きますと言ってすぐ着かず、十五分、三十分待つのをそば屋の出前と言った。腹がペコペコになった人間はイライラする。
ヤサイイタメとギョーザとライスとかを頼んで仕事をしていると、頭の中はギョーザライスになってしまう。
頼んだ上司は部下にオイ電話しろ、どうせそば屋の出前だから未だ作ってないんだろう、早くしろ、早く!なんてことになる。

私の好きな銀座菊凰は今でも出前をしている。私がいる間何本か電話が入る。
ハーイ今出ましたと応える。そして厨房に向かって出来たと聞く。
相変わらずだねと言えば、出前はねえ仕方ないの、待って頂くほど美味しいんだもんねえ、二人の女性は顔を合わせる。
もしもしハイハイ、マーボー丼にチャーハン、レバニラライスにギョーザ三人前ですね、すぐ行きまーす、となり昼の菊凰は忙しいのだ。

デートとは待つことなりと言ったのは、女性にモテる男だった。
約束の時間より小一時間早く行って待つ時間を楽しむんだと言った。
どんな服着て来るかなとか、どんな靴とか、どんなヘアースタイルとかをイメージする。マメな男がモテると言うがとにかくマメな男であった。
デートに遅刻は禁物らしい。私にはデートしたという感覚的記憶がない。
全然マメでなかったのだ。動物的行動をした記憶はある。便利の先には何もない。
アイルランドの若者は映画の中でそう言った。

2017年3月28日火曜日

「トレイン・スポッティングとアジフライ」




ヘロインとSEX、SEXとヘロイン。
幻覚、興奮、禁断、脱糞、絶叫、誘惑、暴力、サウンドの洪水、死への恐怖、狂気と生気との格闘、1000倍気持ちいいというSEXに溺れる若い男、男、若い女、女、エイズとゲイ。

無気力と無目的、検査への恐怖、夫が麻薬をしだすと妻も使用する。
逆に妻が麻薬をしだすと夫もする
何故か、1000倍気持ちいいというSEXができるからだという。
終わりなき快楽、あくなき性欲は人間の本性でもある。

私は一度も経験ないが、麻薬で死んだ男女、別れた夫婦、共に刑務所に入った夫婦を知っている。
かつて何度も相談を受けたが、麻薬(ヘロイン、シャブ、マリファナ、古くはヒロポンなど)で人生を台無しにした人間を何人も知っている。
それでも強い精神力で立ち直った人間も多い。

麻薬は1000倍気持ちいいというSEXを知った女性の要求のほうが多いという。
カラダが忘れられなくなってしまうからだ。
日本の売人は高級マンションや団地妻のお客が多いという。
主婦売春が多いのもそのためだろう。デリヘルの多くは主婦である。
それに気づき攻め立てた夫もやがて麻薬を知ってしまい人生を破滅させる。
妻にデリヘルをさせてしまう。

イギリスのユアン・マクレガー監督の「トレイン・スポッティング」は世界中の若者に影響を与えた。日本の若者のバイブルにもなった。
トレイン・スポッティング以後、以前とも言われる青春ヘロイン映画だ。

企画書を20数枚書いた後、昨日深夜もう何度目かになるが気分直しに見た。
人間が凸と凹の関係である以上快楽を求める。先日数百キロの麻薬が発見された。
時価数百億だ。今年に入って二度目の大量発見だ。密告があったはずだ。

北朝鮮と中国で精製されたのを台湾マフィアが運ぶらしい。
地下水脈では生産地ラオス、カンボジアなどと繋がっている。
中国のいう“一帯一路”とは麻薬ルートのことと言ってもいいだろう、国家予算の相当部分を麻薬が占めている。警察にパクられた売人たちは言う。
この世に主婦がいる限りシャブ(麻薬)は売れる。
売人たちは言う、シャブは売るものでヤルものじゃないと。

見てない人には一度オススメの映画が「トレイン・スポッティング」だ。
注射だけではない座薬も塗り薬もある。
目がトロンとして肌がパサパサ、妙に痩せだしたらご注意を。
それとやけに寒がりだったりするらしい。
映画のラストに仲間を裏切った男は大金を手にしてこういう、これでカタギになるんだ、みんなと同じ楽しみ、出世、家族、大型テレビ、洗濯機、車、CDプレイヤー、健康、低コレステロール、住宅ローン、マイホーム、オシャレ、スーツとベスト、日曜大工、クイズ番組、公園の散歩、会社、ゴルフ、洗車、家族でクリスマス、年金、税金控除、平穏に暮らす。寿命を勘定にして。

午前三時〇三分四十六秒、いつものグラスにタカラカンチューハイ。
つま味は夕食の残り物、トンカツ少々とアジフライ、いただき物のカキの佃煮。

2017年3月27日月曜日

「三月二十四日のこと」




先週金曜日は心ならずもブログを休載してしまった。
そのことに気がついた時はすでに土曜日となっていた。

アメリカ、スペイン、ドイツ、海外ロケを一緒にしていた写真家と久々に会い話が弾んだ。ごく一部の人気写真家以外は写真家不況である。
そんな中で四谷に80坪近くあるスタジオを二つ持ち、スタッフも10人位揃えている。
そのスタジオに見学に行く事になっていたので、アレコレ仕事やら資料整理、何本かの連絡を取り合っていたら思いの外時間がかかってしまった。

凄まじい早さで私のブログを打ってくれる敏腕女史が私の代わりに「ひろしま さとやま未来博」(25日より開始)で広島に出張しているのも要因であった。
代打をしてくれる人には急ぎの仕事を頼んでいた。

写真家の友人と行きつけの店に行き、男三人でお互いに大好きな将棋の話、囲碁の話、大相撲の話、籠池証人喚問の話。歴史の話は大化の改新から中世、戦国時代、関ヶ原から明治維新そして近代まで話は弾んだ。
一緒にロケに行った時はいつも飛行機の中で小さな将棋盤で時間をつぶした。
写真家はとても強く、勝つことはできなかった。
将棋雑誌の表紙の写真をずっと撮っていた。
ワイン通で有名なのだが私はワイン不通である。で、ワインを語ってくれた。
なかなかに奥深い話であった。

被写体としての籠池泰典氏の話になった。写真家の目は鋭い。
籠池氏は覚悟を決めたのか、やけにすっきり爽やかであった。
未だ勝負手を何枚か持っているのか余裕が出ていた。
ひとまず世間を巻き込むことに成功した。“追われる者は人民の海へ入れ”という。
近々一緒に仕事をする事を約束して別れた。

このブログを書いている今現在は、三月二十六日(日)午前四時二十三分四十秒である。写真家と別れ帰宅した土曜日午前二時すぎから、借りてきた映画をアレコレしながら見ている。
テレビドラマを超えられないと思ってずっと見てなかった「64(ロクヨン)前後篇」約5時間、「オマールの壁」98分、もう何度目かの「トレイン・スポッティング」126分、「家族はつらいよ」108分、「モディリアーニ・真実の愛」127分、「夢二・愛のほとばしり」108分、途中に食事をしながら、椅子に座り、床に横になり、(立ち上がり)ボクシングのシャドーをする。
右手にリモコンを持って、朝刊、夕刊を読みながら見る。

昼、天丼(エビ・イカ・キス・カボチャ・ナス・シシトウ)を食す。
夜、握り寿司を一人前食す。他にホッキ貝と赤貝、ミル貝の刺身を食す。
日本酒二合。

昼寝らしきものは鍼灸の達人の治療を受けながら。
平塚の達人にはホントは三倍払わないといけない程、私の体はガチンガチンになっている。達人は治療でなく工事ですと言う。
その後「裏関ヶ原」吉川永青著を100ページほど読む。

佐藤浩市という役者はなんで声高かに叫ぶ芝居ばかりするようになってしまったのだろうか。新人の時は虚無感があってよかった。
「64(ロクヨン)」で日本アカデミーの主演男優賞を受賞したが、私にはワンパターンの演技であった。一人だけ浮いてしまう。
テレビドラマで同じ役を演じたピエール瀧に及んでいない。
刑事から広報官に格下げ(?)された男の耐える姿が出てない。
何しろ長過ぎるのであきれてしまった。
奥田瑛二は相変わらずスーツの着こなしがすばらしい。

原作者横山秀夫は上毛新聞の記者出身、映画は地方紙と警察内部の話だが、本庁(警察では本店という桜田門)の記者クラブより多人数なのでかえってリアリティがなかった。
「オマールの壁」はいい映画であった。パレスチナの今が見える。
数十メートルの壁を超えると恋人がいる、秘密警察がいる。拷問とリンチが待っている。仲間との愛。
山田洋次監督の「家族はつらいよ」は、フーテンの寅さんを失った山田洋次さんのつらい気持ちが出ている喜劇であった。

現在五時〇二分三十六秒、思い切りつまんない「夢二」を見ている。
絵を描かず女性を抱きまくるだけ。六時からTBSで時事放談があるのでそれを見る。
外は雨がシトシトピッチャンと降りはじめた。過去に見ている他作はいずれ後日に。
やっぱり映画は脚本が第一である。そして何より監督。
いつものグラスにバカルティラムを入れた。(文中敬称略)

2017年3月23日木曜日

「幸福考と抗菌」




私たち日本人はどこの国にも負けず働いている。
世界一勤勉と言っても過言ではないだろう。
みんな税金をこれでもかという程払っている。

だがしかし、二十日「国際幸福デー」においての国連の発表によると、日本の幸福度は調査対象155カ国中、51位だというではないか。前回は53位だった
第1位はノルウェー、2位デンマーク、3位アイスランドなど北欧諸国が上位を占める。
米国は14位、韓国が56位、中国は79位だった。

社会福祉や自由度、一人当たりの国民総生産(GDP)や社会支援の在り方などを基準に算定しランク付けをした。北欧諸国は昼間の時間が短い、つまり夜が長い。
夜が長いので若者たちは恋をし、愛を楽しむ。
勿論中年、老人も同じだ。フリーセックスの国もある。

人間という生き物は不思議なもので、好きなだけ、好きなことをやってもいいよと言われると自制心が生まれる。きちんと相手を選ぶようになり、ホントの愛を求める。
遊びと本気がきちんと区分けされる。人間は愛なくしては行きて行けない。
親子の愛、友愛、仕事への愛、仲間への愛、師弟愛、夫婦愛。
近頃ではペットへの愛などは人への愛を超える。
働くご主人のランチ代より高いペットフードを食べさせる。
幸福でないかといえば幸福なような気もする。

若い女性たちが電車の吊り革が汚いのでつかまりたくないなどと言って抗菌グッズが売れているとか。日々働く男たちの手は神聖なのだ。
働く女性に至っては更に神聖なのだが、抗菌グッズを買う人間は男女を問わない。
小・中・高生の3~4割が他人の握ったおにぎりに抵抗感があるという。
コンビニのおにぎりを買う習慣が定着しているからだろう。
図書館の本に消毒液を吹きかける人間もいる。
だが千円札、五千円札、一万円札にいちいち消毒液をかけている人間は聞いたことはない。

世界ではどうだろうか。幸福度は一人ひとり違う。
国それぞれ違うが、勤勉な日本人が51位というのはやはり国家百年の計がなく、さまざまな権力闘争の結果だろう。次のリーダーを選ぶリトマス試験紙はここにある。
着眼大局、着手小局(まず大きな絵が描けて、細やかなところまで手が打てる)を持つリーダーが出現してほしいと願う。私には期待する人がいる。
今日国会で籠池氏という人間の証人喚問があった。
抗菌グッズが必要な人の名前が次々と出た。

ワイドショーには相変わらず、時事通信の田崎史郎他のメンバーが雁首を揃えていた。
しっかり本業をしろと言いたい。この人間たちに消毒液を吹きかけたいと思った。
幸福度を上げるには全く不必要なバカ者たちだ。私は私に消毒液をかける。
(文中敬称略)

2017年3月22日水曜日

「肉屋さんの二代目」




二人はしまいに泣いていた。丼ぶりの中から小指大ほどの一本のうどん。
切れ目なくずーっとつながっている。

一本うどん通だなんて言って無理して飲み込もうとすると、とんでもないことになるらしい。ずるずるとすすり始めてしばらくすると飲み込み不足、で少し腰を浮かす。
更に、そしてついには立ち上がる(?)。

一本うどんは70センチ近くあるから、ノドチンコを通過して、食道から胃袋に入ってもまだ半分くらいは口の中にある。苦しい、グルジイ、一本通は一気にすすり込むんだよ、なんて男は言いつつ目から涙が出ている。
口の中からうどんという白い管が、まるで滝のように丼ぶりとつながっている。
必死にすする、ウグッ、ウグッ、ゲホッ、ゲホッとなり、鼻水が二本出る。
彼女はそれを拭き取ってあげる。もうよしなよ、箸で切れば、切ってあげるからと泣き声になる。アタシ小ばさみあるからなんて言ってバッグに手をやる。

一本うどん通としては一気にすすり切り、プハァーウメェと言いたかったのだ。
丼ぶりの中にあった鰹節がデーブルの上にヒラヒラとくっついている。
一本うどんは極めてシンプルで、丼ぶりの中には汁と鰹節ときざみネギと、グルグルと蛇のようにトグロ巻きになったブットイうどんのみ。

半立上り状態になった男はうどんをくわえたまま泣いている。
優しい彼女はそれを見てもうやめなよと泣いている。
彼女も一本うどんを頼んでいたが、彼氏の悪戦苦闘を見てすっかりすする気をなくしていた。男は名のある精肉店の若ダンナ、彼女はやがて嫁になる女性。
これ以上書くとバレてしまう。

店で会った時は二人共ニコニコしてチョコン、チョコンと頭を下げたが、そんな余裕は失っていた。日本のどこかでノドに小指大のうどんがつまって死んだ人もいたと聞いた。ホントかよと思ったが本当なので、老人や子どもには出さないとか。命がけなのだ。

♪~オレはみんなから ダメな二代目と言われているけど ナメんじゃねえ 見てろよテメーラ この一本うどん 葛きり飲み込むみていに すすり込んでやっから ノドン、テポドン上等だよ こちとら一本うどんだ せいのの合図で イチニノサンシゴーロクナナで飲み込むぜ 見てろよオレは ダメジャネエ ダメジャネエ オレと結婚したら シアワセ一杯 腹一杯 トンカツ、コロッケ、メンチ一杯食べ放題 ダッツーノ。 

なんてノリノリのラップ風ファッションだったが。
フツーの店の何倍もこの店は手強いらしい。私は一本うどんに興味はなかったが、一度山梨で挑戦したことがある。すするよりぶつ切りにして食べた。

2017年3月21日火曜日

「流せない話」




裏社会に「おりゅう」という言葉がある。
「お流」つまりこの話、その話は「水に流す」という意味である。
別に「飲み込む」というのがある。
分かったその話はオレも飲み込むからオマエも飲み込めという。
男を売る世界ではこの約束を外すことは許されない。

町奉行遠山金四郎は桜吹雪の刺青を見せ片肌を出して、この件この遠山金四郎がしっかりと飲み込んだ、オマエラも分かったな、娘およねの件は何もなかったんだ、他言無用口にした者は打ち首だ。
なんて言って父を思い母を思い、妹、弟のために、ダンゴとか薬を盗んで罪を犯した娘およねを助けた。

大岡越前守なら更に、このような事が起きるのはご政道に間違いがあるからだ。
長屋に住む父と母は長の病であり、長屋みんなの力を借りている。
八歳の娘は腹を空かせた五歳の弟のために、店先にあったダンゴ一本を手にしてしまった。
薬問屋ではずっとお金を払っていないので薬が貰えない。
ちょっとした隙きに薬を手にしてしまう。

手代はこの盗っ人めと怒るが、大岡越前守はその店を怒る、人の病でおのれが私腹ばかり肥やすなと。向こう三年罰として娘およねを店働きとせよ。これなら文句あるまい。
娘およねは働いて薬代を返せ、店は娘を働かせ人手とせよ。
娘およねよ、父、母、弟を思う心はほめてつかわすが、盗みはいかんのだぞとなる。

人情のない社会が今の日本だ。
自分さえよければいい、わずらわしい事に関わりになりたくない。
自分たちにもしかして害が及ぼす前に、針小棒大にネットで拡散させる。
あることないことを盛る(つくる)。
我が国はこのアホでバカで、ヒマで、イジワルで、話を盛り付けるネット住民によって支配される。とっつかまえてブチ倒してやりたいと人は言うが相手は分からない。

私の知人の子が今警察に泊まっている。
高校一年の娘が友人と共に万引きをした。
娘はグミ一袋とカラーボールペン一本。
それを命じた娘は大人向けアダルト雑誌とヘアカラー。
命令した娘の父と母は、ウチの娘は命令しただけと言い張る。
ガソリンスタンドを経営していて充分に金持ちだ。その娘は万引きの常連である。

グミ一袋を盗まされた娘は同じ服をずっと着ている。
すでに学校中のメールには話がグミ五十袋のようになっている。
中にはレジから金を盗んだとか話を盛りだくさんにつくっている。

先週金曜日の話である。相談を受けコンビニのオーナーに詳しく説明した。
オーナーは苦労人でいい人だった。命令を外した娘には、保護観察がついていた。
自室に閉じこもりメールで子分たちを動かす。
家に行けばちんまい体にブルーグレーのジャージ姿。

何でと言えば、ババア(ママ)やジジイ(パパ)が大嫌いなので困らせてやるんだと、ギャーギャー叫んだ。聞けば十六歳(私学在学中、父親は不明)妊娠四ヶ月だという。
オジサン話が分かるじゃんと言われた。
ウチんとこのババアはいい年こいて派手な下着つけて、ジジイはババアのいいなりでサイテーだと言った。
弟が私みたいにならなきゃいんだけどと言いながら、私に缶コーヒーを出してくれた。

この子たちは決して嫌な思いを「お流」にしてくれない。
ずっとずっと憎悪は沈殿している。今度一緒に映画を観に行こうと約束した。
ウチにはさあ、お金があり過ぎんだよ、だから何でもお金で済ませる。
三千円も四千円もする弁当を学校に持って行ける訳ないでしょう、と言った。
「おりゅう」にできない話だった。その娘は、その弁当を捨ててしまうと言う。

2017年3月16日木曜日

「『ひろしま さとやま未来博』始まる」




本日丸ビル1Fイベントスペースにて「ひろしま さとやま未来博」のキックオフイベントが始まった。

昼一時頃には一袋五個入り(だと思う)の“ひろしまレモン”が1000袋(だと思う)全てプレゼント完了となっていた。残り一袋が三、四歳の子どもに渡された。
午後五時頃までに完了すればと思っていたが、まさか一時に完了するとはと、はるばる広島から来たボランティアスタッフの人たち十数人がステージでよろこびのあいさつをした。

書道家坂口赤道氏と、アーティスト石原悠一氏のパフォーマンスには沢山の人。
丁度昼休み時なのでギャラリーの数がビックリするほど多かった。

十一時三十分からの一日限りのイベントは盛りだくさんのメニュー。
夜七時~七時四十五分までプレミアムトークやセッションのゲストとして、廃校リノベーションを手掛けた建築家隈研吾氏と東京カメラガールズの田中海月(みづき)氏が登場する。
ナビゲーターはソトコト編集長指出一正氏、総合プロデューサーはソトコトのボス小黒一三氏である。あらためてその人脈の広さを知る。

昨年から少しばかりお手伝いをさせてもらっている。
「これからのニッポンの見本になる」をスローガンコピーにして、いよいよ三月二十五日から十一月二十六日まで「ひろしま さとやま未来博」は始まる。
広島に興味のある人にはぜひ友人、知人と共に行って見て体験をしてほしいと願う。
また、さまざまな企画イベントもあるので楽しんでいただきたい。
詳しくはインターネットにて。
さとやまには“なつかしい未来”がある。

2017年3月15日水曜日

「先週末のこと」




我思う、故に我あり。我思うヤキが回ったか。
俺はそんな事言わないよ、ハッキリ自分でやると言ったんですよ。
俺はやる覚悟を決めたと言ったんだ。違います変節したんです。
稲田朋美弁護士兼防衛大臣が虚偽をへらへらと言ったが、私も似たような者であった(大反省)。

家に帰り日記をめくると、変節はしてないが変説をしていた。
余程アタマに来ることがあって冷静さを失って口走ったか、興奮して後先を考えなかったか、アタマがロートル化したのだ。が、やるべき事はキッチリとやる。
自分への落とし前は自分でつける。
アタマをクリアにするには映画に限るのだが、海外ドラマ通の友人から絶対オススメだよというのを一気に見た。
アイスランドを舞台にした連続ドラマ①~⑧全約800分、ついでに借りて来たドイツのドラマ①~④全約400分。

前者の題名は「トラップ」、後者は「スニッファー 嗅覚捜査官」、
ついでに「ベストセラー」という映画と「ティエリー・トグルドーの憂鬱」「超高速参勤交代(リターンズ)」そして「女が眠る時」映画の総計約440分。
腰はパンパンになり、粗大ゴミに近い丈の椅子に座布団を置いたが、おけつはズッキズキ、約1640分。
先週末の土日で約27時間一気、二気、三気と見続けた。

ドラマは映画と違ってあるテーマを描くことより、次々と事件を起こして次も見たくなるように終わる。トラップはアイスランドの雪深い特徴がたっぷり味わえる。
BBCも製作参加しているので重厚である。
結局男は女性の欲望に勝てないことを知らされる。

NHKの深夜の再放送で、特別嗅覚の効いた阿部寛と香川照之であらゆる事件を解決していく。人間捜査犬だ。
NHKやるじゃんオモシロイと思っていたが、NHKがリメイク権を得たとジャケットに書いてあった。なんだ、NHKにしてはグッドアイデア物だと思っていたのだが。
嗅覚捜査官に出てくる女優がいい。おっぱいバレー(胸の谷間が満点)。
嗅覚捜査官はクンクン嗅ぎ回る。いかなる物も科学的に分析する。
でもアレルギー性鼻炎だった。

E・ヘミングウェイや、スコット・F・ジェラルドなどを見出した名編集者、新人作家の話はややフラットで残念だった。参勤交代は全作はグッドアイデアで面白かったが柳の下にドジョウはいなかった。100点満点で18点位だった。

ビートたけしが不気味な男を演じる。
いつも連れている若い女性の眠っている姿だけを十年間撮り続けている。それをのぞき見したインポ気味の新鋭小説家は、想像力をかき立てられ久々に編集者の妻と激しくSEXをする。川端康成の「眠れる美女」のようであった。
下腹がずい分突き出たビートたけしがよかった。民宿(?)のオヤジ、リリー・フランキーが抜群だった。
制作に友人のPARCO金子学氏のクレジットがありうれしかった。

2日掛かりで27時間を見た。やる時はやる約1640分だった。
私は職を失い、やっとスーパーの万引きを見つける仕事に就いた中年男の静かな姿が身につまされる。「ティエリー・トグルドーの憂鬱が」が好きであった。
インポ気味のヒトには「女が眠る時」をススメる。

「蟻の一穴」




世界でいちばん難しいと言われるのが、日本の司法試験と言われる。
司法試験に受かると、司法修習を経て、判事、検事、弁護士の道を選ぶ。
司法試験に受かったからといってその資格者が全て善人であるということはない。
彼らもまた人間であるから、悪徳であったり、銭ゲバであったり、変態だったりする。

それぞれイロイロだ、が共通している特性がある。
それは等しく記憶力が並外れていることだ。
大六法、小六法は勿論過去の判例、裁判記録の殆どを記憶もしくはインプットしている。刑法、民法、商法。米粒のような文字、漢字とカタカナの難解な法律用語を記憶する。

10年位前とても失礼なことをされたのでそれ以来付き合っていないという相手を覚えていて、10年位前その相手の弁護を引き受け(受任という)、それを忘れていたというのは法律家失格というか、大臣失格である。
何故ならここ数日国会においてずっとシラを切っていたからだ。
もしこんないい加減で詭弁を繰り返す大臣が居座るなら、国会は不要となる。
福井県選出の稲田朋美防衛大臣のことだ。


福井県には友人もいる、また仕事仲間もいる。みんな正直で誠実である。
度の入っていない眼鏡をかけることによりすでにフェイクしている。
ウソをウソと思い、日々反省している私から見ると、ウソをウソと思わない法律家の存在がこの国の防衛大臣であることは考えられない。まして夫婦共に法律家である。

このところ国民をナメ切っていることが露出している。
いかなる強権を持つ者も獅子身中の虫がその強権を壊しはじめる。
安倍晋三総理・総裁においては、妻安倍昭恵であり、寵愛する稲田朋美である。
他にリークの王様世耕弘成がいる(妻は民進党)。

強壁も蟻の一穴から崩れるという。
「民衆とはいつも観衆である」と中国のある思想家は言ったが、民衆をバカにし、観衆をナメた権力者は断罪を受けて来たのが歴史である。
記憶力を失った法律家はその資格を返上するべきである。
一強独裁に穴が空いたことを影の総理大臣といわれる菅義偉官房長官はすでに読み切っている。

これ以上やってられないと思うことが続々と出て来ることを。
結集した民衆がいちばん強いことを。機を見て敏な公明党はすでに自民党と小池百合子の両面(リャンメン)待ちに展じた。潮目が大きく変わって来た。(文中敬称略)

2017年3月13日月曜日

「串カツ一本でも」




現在地球上の大陸には約70億人の人類がいる。
全員を巨大な秤に載せたとしたら、その総重量はおよそ3億トンになるという。
もし乳牛や豚、羊、ニワトリなど、人類が飼育している家畜をさらに巨大な秤に載せたら、その総重量は約7億トン。
ヤマアラシやペンギンからゾウや鯨まで残存する大型の野生動物の総重量は、1億トンに満たない。

約15億頭の畜牛がいるのに対し、キリンは約8万頭ほど、約4億頭の飼い犬に対しオオカミは約20万頭、チンパンジーは約25万頭位という。
これらはやがて絶滅する。人類がいつまで生きながらえるかは分からない。
ゴキブリとネズミが生き続けるらしい。

人類はやがて化学によって作られた食物ばかりを食わねばならない。
遺伝子組み換え食品を食べる。食品表示の部分をよく見れば判別できる。
食物は減るが世界の人口は増加する。が、日本は人口が減少し続ける。
腹は減っては戦はできないと、食物を奪い合う戦が起きる。

かつては石炭や石油資源の奪い合いであった。
インドや中国、パキスタンの人口で世界人口の約50%近くになって行くだろう。
すでに中東からユーラシアそしてアジアは飢餓人口に満ちあふれている。
空腹は人類最大の敵だ。

あるドキュメンタリーフィルムを見た。佐賀県名護屋は近海捕鯨が盛んであった。
巨大な鯨に対し裸にふんどしの漁師たちはたくさんの小船に乗って鯨を追った。
手には数キロの鉄のモリ、10数メートルから20メートル近い鯨に漁師たちはモリを投げて刺す。何本も体にモリが刺さり、やがて鯨は弱ってくる。
そこに羽刺という飛び切り凄い漁師が巨大なクジラの上に飛び乗りへばりつきトドメを刺す。彼らの技術は四国、中国地方の捕鯨に伝承されて行ったという。
鯨一頭で村だか町が、100日は空腹でなく満腹だったのだ。
鯨は捨てるところがない。100日天下と言われた。

人類は食うためならどんなことでもする。そしてどんな物でも食べる。
キミが食べたステーキはかわいい子牛だった。
あなたが食べたトンカツはかわいい子豚だった。
ヤキトリはついさっきまでコケコッコーと鳴いていた。
子熊を守る親熊も、子を生み川に帰った鮭もソックリ食べる。
人間ならやがて子となる。
イクラも鮭がいくらなんでも子どもまではと頼んでも、イクラ丼にしてしまう。
人類は他の生き物に一切の同情をしない。飢餓となれば絶対全て食べる。
いい人ぶって、かわいいなどと言った豚を豚鼻、豚足、豚耳まで全部食べてしまうのだ。

活魚という言葉は私はあまり好きではない、ついさっきまで活きていたということだから。ピクピク動く活き海老もそうだ、白魚のおどりなんて生きているのを飲み込むのだから。
かわいい子羊がチューチュー母羊のお乳を飲んでいる。
人類はその両方をおいしいと言って食べまくる。
子羊のローストステーキだとか言って。

夜食に残り物のおでんのチクワブばかり食べていたらやけに頭の中が、白いメリケン粉のようになってしまった。チクワブは生き物でないから罪悪感がない
何だか胸騒ぎがする。人類が恐竜やマンモスになる日は近いのかもしれない。
生き物を食べた物は一度必ず地獄に行かねばならぬと、僧源信の「往生要集」にある。
ヤキトリ一本、串カツ一本でもだ。

2017年3月10日金曜日

「銀座四丁目」

なんかこのところ笑ってないな。
何か面白いヒトはいないかなと思い銀座四丁目交差点のところに立っていた。
午後二時八分和光の大時計を見上げた。ビル風がやや冷たく吹いていた。
「銀座あけぼの」は相変わらず混んでいる。その隣りのワッフルの店からはいい香りがしていた。
四丁目の交番には何か事件でも起きないかな(?)とヒマそうなお巡りさんに道を訪ねるヒトが二人。その前のオープンカフェには外国人がチラホラと。
四丁目の交差点を正方形のようにひと回りした。「木村屋のあんぱん」店内はぱんぱんにお客さん。
風が止むと三月の日差しは強い。

なんかつまんないヒトが多いなと思いながら和光から教文館書店に向って歩いた。と、その時白いママチャリに乗ったアフリカ人風の女性が山野楽器店前に止まった。
サーモンピンクのジャージの上下、サーモンピンクのショートブーツ、口には煙草ひと吸いして二つの鼻の穴から二本の白い煙が出ていた。
ヘアースタイルが凄かった。まるでグルグル巻いた縄の輪をボコッとのせたようであった。
やけにおなかが大きいなと思って見ていたら、胸の前に赤ちゃんがちょこんと顔を出していた。まるでカンガルーの親子のようであった。
ママチャリの前の籠の中に、セロリの緑の葉と赤いトマト、黄色いパプリカなどが入っていた。
銀座の風景の中で色彩やかなシーンであった。
一服しおわったサーモンピンクの女性は中央通りを京橋に向って走って行った。

今日は雲水さんが立っていなかった。行き交う日本人の顔を見ているとみんなつまんない顔だった。
松屋にあるFENDIのウィンドウを見ていたら、変な顔が写っていた。自分自身だあわてて目をそらして歩き出した。
週末は喜劇の映画でも見ようと思った。

3.11まであと一日。


2017年3月9日木曜日

「ヤッパ(刃物)とサバの塩焼き」




エリア・カザン監督の名作映画に「欲望という名の電車」というのがある。
今この国に起きているさまざまな出来事を見ていると、この国は「絶望という名の電車」に乗っているのではと思ってしまう。

深夜、布団の上に座り沈思黙考。
その日の自分の有り様を振り返ると強烈な疲労感と恥ずかしき思いが全身を襲う。
総理大臣夫婦が私人と公人の違いを分からず、教育者もどきはもどきすらでないエセ右翼、役人は役を放棄し権力の下でペロッと舌を出す。
野党などという存在はスピッツ犬の様に吠えるだけで、猟犬のように獲物を仕留められない。

愛するもの、恩義ある人々に少しでも役に立ち、常日頃の反省を込めて一途に生きて希望への電車に乗りたいと思っているのだが、欲望という名の電車に乗っている人間の、人とも思えない所業に顔色を失うしかないと悶々とする。
パンドラの箱の中にあったのは、たしか希望の二文字だったはずだ。
腹の底から笑うこともなく、心の底からの歓喜もない。
法の正義などという言葉は、粗大ゴミのように黒いビニール袋に入れて捨てられる。
反骨、反発などという言葉は薄ら笑いをしている。

チクショウ負けてたまるかと思うが、泉谷しげるの春夏秋冬の一説を口ずさんでいる。
♪~またひとつずるくなった 当分てれ笑いが続く 今日ですべてが終るさ 今日ですべてが始まるさ。
♪~明日という字は明るい日と書くのね、なんて唄った歌手を思い出す。

人に物事を相談する人にはストレスはない。
一升瓶に二升は入らない。背伸びは滅びる。
人のリスクを背負った人が報われるケースはこの世にない。

ある年私のところに借金に来た人間は、なんとタクシーで帰り、私が人の借金を背負っている時こんな電話をして来た。
ヒトゴトであまり無理しないでくださいよ、体を壊しますから。
録音スタジオで箱弁をスタッフと食べていたら、六本木の高級寿司屋からどーんと出前が届いた。何だこれは頼んでないと言えば、電話の主からだった。
バカヤローシメるぞと本当に怒ったのを思い出す。

スタッフは夜も寝ずにがんばっている。休日返上でがんばっている。
私もがんばろうと思っているが、実は大迷惑をかけているのではと、布団の上で黙考している。

売り上げという数字はこの世の数字の中でいちばんのヤッパ(刃物)だ。
午前一時過ぎ遅い夕食を食べ始めた、こんな気分の時はサバの塩焼きと、浅利の味噌汁に限るのだ。

2017年3月8日水曜日

「元老院」



「ビックリしたなぁ、もう」てんぷくトリオのリーダー、故三波伸介の決め言葉だった。三越伊勢丹の大西洋社長が任期途中3月末をもって退任するという報に接して私が発した言葉は「やられたなぁ、もう」であった。
現在の流通業界において卓越した営業センスと経営手腕を持っている人と思っていたからだ。

新宿伊勢丹の売り場はすばらしい。接客もすばらしい。
流通業界に入った者は伊勢丹を見に行くのがイロハのイであった。
特にメンズ館は他の追従を許さない。食品売場の美しさは目を見張る。
歩いているだけでも気持ちが豊かになる。

大西洋社長は業績悪化、業績低迷の責任を負わされたと昨日の毎日新聞にあった。
デパートという業態が終わっているようだ。

これは私見である。
伊勢丹が“三越伊勢丹”になった時に、伊勢丹内部はガタガタとなった。
三越のDNAと伊勢丹のDNAは全く違う。血液型不適合だ。
日本橋と新橋、オジサン、オバサンとシティボーイ、シティガールの違いとでもいうのだろうか。
着物を来た女性とブルージーンズに白いTシャツ、コットンのジャケットの男が手をつないでデートしているとでもいうのだろうか。

三越と合併(あるいは吸収)大反対と、イヤイヤでも賛成と絶対反対とに分かれたのだろう。
ある経済専門雑誌には三越の人間を伊勢丹の人間は番号で読んでいるとか、昇給にも出世にも大差があると書かれた。
この記事は数ヶ月前位だったから大西洋社長はすでに元老院から不本意な扱いを受けはじめていたのではと思う。

三越と合併させたのは元老院であり、いち早く大失敗だったと思ったのも元老院のはずだ。大西洋社長は三越の人間を番号で呼ぶような人でないことは、業界の人間なら誰でも知っている。
この一年間盛んにテレビ出演したり、本を出版したりしていたのは元老院への抵抗でもあり、世間を味方にするためだったのかもしれない。

私は若かりし頃、売れない百貨店の宣伝部にいた。
そこで見た百貨店は出入り業者にあれ買え、これ買え、あれも買えと勝手に売り上げをつくる。業者の取引額によって割り当てが決まるのだ。
ダイヤモンドからたくあん業者までその対象となる。
大西洋社長は苦悩したに違いない、古い百貨店体質に。

百貨店の外商部というのは外からは見えないが売り上げの相当部分を持ついわば影の軍団だ。レディースやメンズが花形なら、外商はヤクザ者だ。
私は在職中そう思っていた。絵画、陶器、宝飾品、高級呉服、高級時計、高級家具。
あなたの目の前で、ハイこれくださいというのを見たことがありますか?
中国人爆買い以外余り見たことはないはずだ。でもちゃんと売り上げているのだ。

私がいた百貨店は大手百貨店に吸収された。
主任、係長、課長補佐、課長、次長、部長代理、部長、販売促進本部長代理、販売促進本部長、店長代理そして店長。あっという間にどこかへ消えました。
一人だけ特別な奴がいました。ヨイショとゴマスリとセクハラの達人だった。
私は大西洋社長のファンだった。ローマ帝国の時代から元老院は恐ろしいのです。
伊勢丹の創業家とは。

2017年3月7日火曜日

「コンニャク」




金融機関→地面師→不動産業者→役所の窓口→係員→主任→係長→課長補佐→課長→次長→部長補佐→部長→その上司→その上の上司とぞくぞく役所ルート。
一方では町の有力者→町会議員→市会議員→県会議員→元国会議員のルートが。
その一方で元請けの建設会社→解体業者→産廃業者→下請けの業者→孫請けの業者、裏社会などのルートがあるらしい。伝聞である。

世のため人のため、自分たちの老後のためにと、先祖伝来の土地を売ってある施設を建てた。
私の知人は言われるままにあっちこっちに金を渡した。その額は途方もなく、ん億円を超えたという。
ゴルフにカラオケ、そしてお決まりのコース。
おおむね三つのコースを経て許認可事業の施設はやっとこさ建つ。

大化の昔以来日本国はこうした構図によって成り立って来た。いちばん笑うのは金貸しと金融業者であることは言うまでもない。いちばん怖ろしいのは地面師たちであることも言うまでもない。

「悪い奴ほどよく眠る」「生きる」で黒澤明監督はこの仕組みを描いた。
あれから何十年経っただろうか、この国の在り様は何も変わっていない。
永遠にアナログなのだ。

コンニャク→200万、ういろう→500万、レンガ一ケ1000万。
いずれもピン札の場合でこう表現されているらしい。裏社会は実にネーミングが上手い。
ロッキードの時はピーナッツであった。

今、肩で風を切っている東京都知事は、いずれは何かでやられるだろう。
山吹色の誘惑に勝つほどの良識は持っていない。
役人という組織は食えないコンニャク、食えないういろうなのだ。

それにしてもこの頃、権力に挑む山崎富子のような社会派の骨太の映画が一本もない。
無礼者!オレは不動産屋じゃねえ、とっとと持ち帰れ!と勇ましく芝居がかったことをしていた国会議員のオッサンがいたが、太陽が西から上ってもそんなことは絶対しない。
コンニャクはおでんの代表だが、国民の代表のオッサンは煮ても焼いても食えないのだ。