ドカ、ドカ、ドカ、ドカ、ドカ、ドカと乗って来たのは、ひと目で分かる新入社員たちだ。
黒いスーツに白のワイシャツ。新しいバッグ。ネクタイの締め方がなってない。
ドカが六つということは六人であった。
四人は私の前に座り、二人は私の方に座った。長い座席には八人座れる。
午前十一時ちょい過ぎ、朝小学校の入学式に行った後、茅ヶ崎駅から乗っていた。
入学式に知人の市会議員が二人ゲストとして来ていた。
あっ、どうもと二人が寄って来てあいさつをしてくれた。
お子さんですかと言うから、バカ言うな孫だよと言った。市会議員は入園式、入学式、運動会、田植え、イチゴ狩り、老人ホームの慰問、ペットの表彰式、(十三年と十六年が対象)剣道や柔道、空手の大会、地元企業の入社式なんかでは会社の入り口で頭を下げる。
老人カラオケ大会だって行かねばならない。
で、大変だな一回生議員はとなる。
市会議員はギリギリ1600票位で最下位に当選できる。国会議員は雲の上だ。
次も当選するには、人が集まるとこへは何があっても行かねばならない。
かつて選挙中にイボ痔がとてつもなく悪化して激痛となり、緊急イボ痔退治をした初挑戦の男がいたが、力が入らずあえなく落選した。あるマル秘の場所で言葉を交わした。
ハイ、コレと言って私の前の席の新入社員が私の隣の新入社員に、半分食べたポッキーを下からトスした(トスとは野球用語で下からちょっと投げること)。
あっと、ありがとうと言って自分のバックからクロレッツをホイっとトスした。
バカヤロー電車の中で遊んでんじゃねえと思った。
胸章に45thのバッジを付けているから、創業45周年の会社に入ったのだろう。
あとの四人はマンガ雑誌、スマホ、何やらのパンフレット、そしてスマホであった。
入学式に感動していたので私の心はすこぶるおだやかさんであった。
いいね若者は、がんばれ若者よ、お、ポッキーか、銀座の高級クラブでポッキーをバカラのグラスの中に林立させて出て来たら、それだけで5,000円近くは取られるからなと思った。
小ぶりの皿の上に亀田製菓の柿ピー(ピーナッツが20粒位と柿の種が30粒位)でやはり5,000円位、席料、女の子一人のサービスチャージが10,000~15,000円×2人×3人と席については、一杯口をつけて他の席へ。
で、これで数万円。こんな世界とはすっかりお別れしました。
やがて新入社員たちも夜の銀座、赤坂、六本木、西麻布を経験して行くはずだ。
信じられないような美人と、吸い込まれるような魔女と、考えられない悪女とカマトトのあどけない(?)バイトの学生と。修羅場をくぐり抜けて来たド厚化粧のママさんと会うことになる。
新入社員の月給位が、ポッキー、柿ピー、少しばかりの果物と小梅ちゃん。
クラッシュアイスの上のレーズンバターで消えて行く。それでも行け、若者よ。
酒と女性は人生の先生だから。