この頃山形県蔵王にあるシベール工房の「ラスク」にはまっている。
かなり評判の「ラスク」はシンプルで奥が深い。
ラスクの為にパンを焼く、自社で焼きあげた専用フランスパンにシャトーバターをたっぷり塗ってサクッと焼きあげるので、口当たりは軽く、ウイスキーオンザロックやジントニック、バカルディラム、ハイボール等によく合う。
厳選した小麦粉に赤穂の塩と山形の美味しい水がいいフランスパンを生むという。
ブルーベリー、チョコ風味、アールグレイ、くるみのハーモニー、サクサクガーリックを選んで食べる。
私は深夜から明け方にかけ映画のDVDを見ながらパリパリ食べる。
パラパラとパンの粉とか砂糖があぐらをかいた足許に落ちて溜まる(指で突いて一つずつ取って行きそれを舐める)。
昔同じ様に「ラスク」にはまった時がある。少年の頃見た仏映画にギャングが二人で「ラスク」を食べるシーンがある。映画の題名は「現金に手を出すな」、原題は主題歌でもある「グリスビーブルース」であった。主役は私の大好きなジャン・ギャバンだ。
「現金に手を出すな」 |
ギャングのボスギャバンの友人が相手のギャングに追われる、それを逃すギャバンは自分の隠れ家に連れて行く。暫く使ってないから何もない、とりあえずこれに着替えろときちんと畳んだパジャマとガウンを投げ渡す。
その次にこれっきゃねえんだと「ラスク」を出し与える。ギャングが二人「ラスク」をポリカリカリポリと食べるのだ。男の友情を現した名シーンだ。
それ以来「ラスク」ばかり食べ家の中をラスクの食べるごとに落とす粉で一杯にし、うるさい姉に叱られた。
臨床心理学者の故・河合隼雄さんの著書の中にこんな一節がある。
「夜中の十二時に、自動車のトランクに死体をいれて持ってきて、どうしようかと言ったとき、黙って話に乗ってくれる人」(『大人の友情』)というのがある。
さて、そんな友人はいるでしょうか。近頃あの人には本当の友達がいなそうというのが最も手厳しい罵倒ではないかと何かで読んだ。
携帯電話に何百人も「友達(?)」を登録して精神安定剤にする若者達が増えているという。友達が居なくて寂しい人はぜひ「ラスク」を食べながらいい映画を観て下さい。映画の中にたくさんの友達がいるからです。