スペアリブは明るい処で食べてはいけない。
私が本物のスペアリブを食べたのはアメリカテキサス州の小さな町にある店だった。
薄暗い明かり、古ぼけたビリヤード台、煙草の煙、それが染み込んだBARのカウンター。
ショットグラスで一気に飲み込む、バーボン。白い泡のないビールを大きなジョッキで飲む男たち、テンガロンハット、ジーンズにブーツ、ダンガリーのシャツに大鹿とかライフル銃の刺繍の入ったジャンパー。
小さな舞台に四人のカントリーミュージシャン。
太った老人のバンジョー、中年男のバイオリン、陽に灼けた男のウエスタンソング、若い女性のアコーディオン。
私たちを見るといかにもヨソ者が何しに来たという感じで全員視線を向ける。
木製の丸テーブルにアルミの大皿、そこにスペアリブが無造作に山の様に置いてある。
それをむしゃぶる様に食べる男と女。手についたスペアリブの脂を大きなペーパータオルで拭き始める。
乾いたビリヤードの球が当たる音、木の床を歩くブーツの音、ブーツに着いた風車のビジョーの金属音。
何もかもがまったりしている様だが独特の生命感が充満している。
労働の後の汗を感じる。トランプを切っていた老人が私たちに声を掛けた。
煤けた店の空気の中に笑い声が起こった。その夜私はスペアリブを何本も食べた。
先日あるレストランに居た。
明るくキレイな店に3人の女性が居た。その店はアメリカ風のステーキハウス。
スペアリブは若い人に人気であった。大きな話し声、笑い声、両手で指先で骨に付いた肉をむしり取り突き崩す。
ベトベトした手を何枚もの紙を使って拭きまくる。見ているだけでベトベトして来た。
女の子たちの口の周りは脂まみれだ。美しくない、汚らしい、似合わないのだ。
一人の女の子の白いシャツにスペアリブの脂の付いた指の跡があった。
きっとクリーニングに出しても消えないだろう。
あの日ロデオ大会を見終わった後食べたスペアリブは最高に旨かった。
トランプのカードを切っていた老人が私たちにかけた言葉を後で聞いてみると「お前たちはアパッチ族か」であった。
♪私たちは生きてゆく、なぜこうなのかと一日中悩みながら、私たちの隣には幸せな人々がいて、何の苦しみもなく暮らしているのに、ずっと歩んでいけばきっと分かる時があるだろう。
妹よ元気を出してその中で生きて行こう・・・。
久々にウエスタンの映画をDVDで観た。そのテーマソングの詩が良かった。