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2015年10月28日水曜日

「ガンバレ男よ!」




調剤薬局で薬が出るのを待っていた。
大型のTVがある、そのTVである男性(五十代とか)の悩み事相談をやっていた。
昨日の朝のことである。

相談に応えるのは、ゲイが売りの芸人、女性心理学者、男性お笑い芸人。
女性アナが相談事を白板にマジックで書く。

司会の男「相談事は?」
音声の男「私は五十代なのですが、会社の若い男に心を奪われてしまっているのです」
司会「それは肉体的にですか、それとも心理的にですか」
男「えー、よく分からないんです。でもいつも頭の中から離れないのです」
司会「あのー、その若い人とはいわゆる◯△関係はあるのですか」
男「それはないのです」
ゲイの芸人「あなたは小さい頃から男子に関心があったの」
男「それはないです」
女性心理学者「ご結婚されているんですよね、お子さんもいらっしゃる、夫婦関係というかSEXはあるのですか」
男「ハイ、あります」
女性心理学者「どれ位?」
男「月に3回位、でもその時ずっと若い男のことを考えてしまうのです」
司会「相談事は奥さんにカミングアウトしてその若い人と付き合いたいって事ですよね」
男「えーまあ、そうなんですが年頃の娘が二人いるし」
ゲイの芸人「ダメ、絶対ダメよ、そんなことしたら地獄を見るわよ、あなたが一方的に想っているだけで相手はそんな気がないんじゃない」
男「でも何となくいつも近づいてくるんです」
男性お笑い芸人「未だ何もしてないのにカミングアウトするって、何でなの未だアウトではなくセーフじゃない」
司会「その若い男って肉体的に美しいとか、見た目が格好いいのですか」
男「えーまあいい男です」
ゲイの芸人「この世界に入ってしまったらあなた、大変よ人生失っちゃうわよ、ホントよ」

とそこでお薬用意出来ましたよ、これお薬手帳です、いらないよ家に何冊もあるから。
朝からバカバカしい相談、本当かよと思った。
白板には黒いマジック文字が女子アナの手でビッシリと書かれていた(やりとりをみんな書いて行く)。

どうなってんのかねまったくと思いながら外の自販機で缶コーヒーを買った。
自販機には、タモリとトミー・リー・ジョーンズが仲良く並んでいた。
「ブエノスアイレス」という映画を思い出した。幸い私の回りにはその道の人はいない。

晩婚で子供をつくらない社会、男が女性にアタックしない社会、その結果は嬢王蜂が支配する蜂の世界のようになるという。
ガンバレ男よ!

2015年10月27日火曜日

「行きづらい映画館」






「シキテンを張る」「シキテンを切る」ともいう、ある社会の用語だ。
その意味は、「見張る」ということ。
オイちょっとシキテンを切ってろとか、誰かが来るかもしれねぇからしっかりシキテンを張っておけと使われる。

私たちは今そこいら中でシキテンを切られている。
監視カメラという機器に。私たちは一歩家から出ると見張られるのだ。
歩いていても、走っていても、その途中でトイレに入っても、レストランやそば屋さんの中でも、ありとあらゆる所で。

東京渋谷宇田川町は有数のラブホテル街だ。
その真ん中にユーロスペースという名作を上映する映画館がある。
当然そこいら中に監視カメラがあり、映画を観に行っても、もしかして本当はラブホテルへと疑われる。
ユーロスペースに映画を観に行く時は、誰かにハッキリと何の映画を観に行く、一人なら一人でと、二人なら誰と、何時何分の回に観ると高らかに宣言しておく必要がある。

私◯△×□は本日ユーロスペースに一人で行きます。
名作◯△を◯時△分から観て◯時△分に終了、その後宇田川町を抜けて東急文化村入り口方面に向かいます。途中キンキンギラギラのラブホのネオンがありますが私には全く関係ありません。映画の途中に抜け出してシンネコ(内緒)でラブホに入ったりしません。

私の全ては監視カメラがシキテンを切ってくれています。左を見ても、右を見ても、上からも、斜めからも、下からも見張ってくれている。
ユーロスペースは主に単館上映観たい映画が多いのだがそんなわけで近づけないのだ。
いい映画やってんだけどなぁ〜。

刑務所から無実を訴えていた夫婦が二十年収監されていた。
大阪高裁が検察の異議を棄却した。
放火殺人で無期懲役を受けていた夫婦が釈放された。
日本では一度高裁で刑が確定した者が再審に持ち込めるのは、針の穴にラクダを通すほど難しいとされていた。
モノは考えようである。
今では監視カメラのおかげで無実を証明できることになったりしている。

「猫は知っていた」確かそんな映画があった。
家の中の出来事は猫はしっかりシキテンを張って見ている。
猫は決して騙せない。
猫派が犬派をついに追い越したらしい。
その主な原因は散歩が大変だから。そういう事なのです。

知り合いに警察関係の人がいる。
一度捕まえた人間は何が何でも犯人にする、それが警察です。
怖ろしい人間たちなんですよといった。くれぐれもタクシーに乗ったら領収書を、映画を観たら半券を、アリバイ証明のためにとアドバイスされたのを思い出した。

2015年10月26日月曜日

「レオクリビ」



あいつは「かたり」だから気をつけろ。
かたりとは人の名を使って人をダマクラかす、いわば詐欺師のような人間だ。

“山田雅人「かたり」の世界”というのを1120日金曜日午後七時〜九時、大井町駅ビル内の“きゅりあん小ホール”に行った。
二階席まで満員、その数150180人位であった。
友人の代理店社長とその友人の代理店社長と三人で行った。
かねてより友人がぜひ観てほしいといっていた。

山田雅人、知る人ぞ知る天才話術師であった。
知らない人は知らないのだが、私はその知らない内の一人であった。
「かたり」とは何ぞや(?)舞台にはアルミ椅子一脚とマイク一本、片隅に一台の小さなプロジェクター。正面にそれを写す白いスクリーン。
二階席はかなりキツく、丁度コの字に曲がったところだった。
よく入っているね、「永六輔物語」と「島倉千代子物語」漫談だなと思っていた。
なんで「かたり」というのだろうかと思った。

七時十分程前に山田雅人さんがこんばんはと現れた。
みなさん、今日は来れないかもしれない、来れるかもしれないとおっしゃっていた永六輔さんが来てくれはりました(大阪の人であった)。
永さんは昨日転んで顔をぶつけて右目を傷つけられたのです。
でも来てくれはりました。いつまで持つか分からないが、ダメだと思ったら帰られます。

大拍手と共に車椅子に座った永六輔さんが現れた。
ヤクルトスワローズの野球帽に赤いジャンパー、ジーンズに白のスポーツシューズであった。難病のため手は大きく震えている。
言葉はたどたどしいが記憶力は抜群であり、ユーモアのセンスはやはり天才であった。

山田雅人さんが、これから永六輔物語をかたります、もし間違っていたり、文句があったらこの笛を鳴らして下さい、と永六輔さんの首に笛をかける。
さあ〜それでは永六輔物語です。いやはやその記憶力と弁舌の凄さ、永六輔に関する一代記、生まれてから現在まで一気に語り続ける。

渥美清との出会い、中村八大、いずみたくとの出会い、作詞との出会い、名曲誕生秘話、「上を向いて歩こう」に込めた想い。山田雅人がかたりをすると永六輔さんが笛を鳴らして、それはこうだ、あーだこーだと軽妙に解説する。
山田雅人はそれを受け、話をさらに展開する。

私は足もとにバッグを置き両足をつぼめていたのでふくらはぎがつってしまう。
だが二人の掛け合いと話の面白さに引き込まれてしまった。
永六輔さんは一時間近く舞台の上にいて大拍手に送られて帰って行った。
プロフェッショナルは難病すら笑いの種にしてしまう。
途中怪我をした右目の眼帯を外して見せた。


第二部は島倉千代子物語、スクリーンらしきものにプロジェクターから島倉千代子さんの秘蔵写真が映し出される。
♪〜しあわせになろうね あの人はいいました 「からたち日記」が山田雅人によってかたり続けられた。島倉千代子さんの人生はヒット曲通り、人生いろいろであった。

九時に終わり、明るくなったのでチラシを見てビックリした。
「しゃぼん玉一代記」「盲導犬の父・塩屋賢一物語」「藤山寛美物語」「ラグビー青春物語」「テンポイント物語」「中山律子物語」「長嶋茂雄物語」「植村直己物語」「二十四の瞳」などなどずらっと100ばかりが書いてあった。
人間のあるところ歴史あり、物語あり、山田雅人ありなのだ。

「かたり」とは、漫談でも落語でも朗読でもありません。
一人芝居のような動きもありません。
「真っ暗な空間にスポットライト一つ、マイク一本で届ける感動です」とかいてあった。その場で観客からリクエストされた競走馬の何頭もの名を聞き、即座に競馬中継をやりはじめた。
その馬の歴史をスラスラ話す、台本なし、八百長なし、もうあまりにビックリして言葉なし、記憶力は大型サーバー並みだ。

NHKラジオ隔週月曜「語りの劇場・グッドライフ」はレギュラー番組、夜九時〇五分〜五十五分まで。ブログは「山田雅人背番号31」。

1226日亀戸カメリアホールに行けばきっとビックリギョーテンして足がつっちゃうよ、一人3000円なり。笑って、感動して、泣いてしまうよ(涙活にもなる)。
あまりに驚くことを裏社会では“レオクリビ”という。オレビックリのこと。(文中敬称略)

2015年10月23日金曜日

「大差」




玄関(といっても狭い)の扉を開けるといつもより開けにくい。
何かが置いてある。力いっぱい押し開くと段ボール箱の中に「ライオン洗剤トップ NANOXナノックス 320g詰め替え用」が20個も入っている。

誰かが立っている。何だというと、朝日新聞ですと応えた。
何でだというと、もしかして朝日を止めるかもと聞いたもんで。
誰にというと集金の人間にといった。

いいよいいよこんなに沢山、この辺りで朝日を止めるのが今でも多いというけど本当なのというと、実は本当ですといった。フーンやっぱりそうなんだ。
全然駄目だからな朝日は、確かに先月集金の人に朝日はあんまり駄目だから記者の人に世話になった東京新聞にするかもといったからな。

東京新聞は今赤旗と同じ位反安倍政権、反戦争法案を貫いている。
朝日は腰砕けばかりだ、まあいいよ東京と大差あるけど朝日続けるからといったら、また持ってきますといった。いいよいらねえよといった。
仕方ないから玄関の中に引きずって入れた。

辻堂駅西口券売機、缶チューハイをもったオジサンがキップを買っていた。
キップが出てくると取り上げるまで、ピー、ピー、ピーと音が出る。
オジサンはその音が気に入らないのか、大声でピーピー鳴くんじゃねえと怒鳴った。
キップを取って缶チューハイをグビッと飲んだ。
実は私もピーピー音が大嫌いである。

列車に乗ると隣の会社員風中年男子が週刊誌を読んでいた。
ドッカーンと見開きのページに大見出し。
第二弾!「下着ドロボーから大出世!特集・高木毅復興相の露出癖」とあった。

私は自販機で買った缶コーヒー(ブラック)を飲んで目薬をさした。
やけに体が熱い、やけにノドが痛い。朝晩寒くて昼は暑い位、そのせいかもしれない
缶チューハイを持ったオジサンが車内をユラユラ歩いている。進行方向に向かって。
向かいの席に座っている若い女性は大きなどら焼きを食べながらスマホを見ている。

日常はいつも大差がないが、気が付くと大きな変化や事件が起きている。
中国の習近平主席がバッキンガム宮殿に宿泊し、キャメロン首相と共に「黄金の関係」のような共同声明を発表、フランスのオランド大統領、ドイツのメリケル首相は近々中国訪問、シリアのアサド大統領はロシアを電撃訪問、プーチン大統領とガッチリ握手。
国連の常任理事国はアメリカを除いてガッチリ手を結んだ。

その頃我が国のリーダーは臨時国会なんて嫌だよとばかりに外遊へ。
中央アジアの小国を訪ねていた。親分アメリカの子分日本に世界はシカトで、大差ありなのだ。世界は激動しているの我が国はいつも置いてけぼりだ。
缶チューハイを飲んでいるオジサンは前から三両目の中をユラユラしていた。
ピーピー鳴くんじゃねえよか。