左々舎HPより |
「美の壺」という大好きな番組がある。
NHK Eテレ日曜日午後十一時〜十一時三十分。以前は違う時間帯でやっていた。
ずーっと昔から見ている、これはと思うのは資料としてモニター会社に頼んでダビングをしてもらっていた。
昨夜は「鱧」ハモであった。魚は見た目が悪いほど、恐いほど繊細である。
オコゼ、カマス、ナマズ、マゴチ、トラフグ等など。ハモは鋭い歯を持っている。
魚の暴力団みたいなのだが、これほど芸術的な食材はない。
何しろ捨てるところがない。
ハモシャブ、ハモ寿司、ハモの柳川、ハモ鍋、ハモの薄造り、ハモの皮、ハモの浮袋、ハモの顔面、ハモの肝の甘露煮、ハモのハラワタ、ハモの骨、ハモの肉体には無数の小骨がある。
気合不足の鱧料理店のハモにはやたらと小骨がある。
抜いていないからだ。ひとくち食べればすぐに分かる。
この小骨をパーフェクトに抜くには鱧一本で五、六時間はかかるという。
神田明神下に「左々舎(ささや)」というこじんまりした店がある。
路地裏であるから通い慣れた人でないと分からない。
といって京都のようにお客を選んだりしない。誰でも入れてお値段もそれほど高くない(それほど安くもない、コース(A)で七千円)。
ひと夏に一度か二度位鱧料理のフルコースを楽しんでもよいのではと思っている。
魚+豊と書く位だから実に気持ちが豊かになる。
一本一本小骨を抜くのを知っているからやはり予約を入れる。
料理人の店主は朝早くから予約の分だけひたすらトゲ抜きのようなもので小骨を抜くのだ。気の遠くなるような作業を料理人という職人はやりぬく。
“一本も入ってなかったでしょ”と言うのに、一本も入ってないと答えるとニコッと笑う。
今年は若い者を二人連れて一度行って来た。
初めての鱧料理なのでその豊かさが分かったかどうか不明であるが社会勉強のために経験してもらった。何を食べているかでその人間が分かるんだよと言ったのは、“北大路魯山人”だったと思う。池波正太郎さんも同様なことを言っていた。
高価なものを食べるのではなく、その季節に合わせ、何をどんな風に食べてるかだ。
で、煮干しを三匹ほど焼いてちょいと海岸で拾って来た貝殻なんかに置いて、庭にある小さな葉っぱなんかを添えると、もう一丁前の料理になる。
おしょうゆをポツンとたらせばもうお酒の肴にこの上なしとなる。
旅館の料理に出てくる七輪の小さいやつ(一輪?)に小さな金網を乗せて固形燃料で焼くと申し分ない。一度愚妻に買って来るようにといったら家は旅館じゃないわ、なんて言われた。仕方ないからオーブントースターで焼く。
雑魚の小さい、小さいのが旨い!5cm位がいい型だ。あーハモが食べたい。
頑張って働くしかない。それにしても暑い、ガリガリ君を三本もかじってしまった。