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2016年6月28日火曜日

「命日」




中国では酒を飲むことを「忘憂」という。
忘憂とは嫌なことをしばし忘れ、楽しく酒を飲むべしなのだ。

酒にはいい酒とそうでない酒がある。いい酒はお金の話を一切しない酒だ。
歴史や魚釣り、映画に登山、ジャズに演歌、小説に絵画、野球にゴルフなど人それぞれの趣味を肴に飲む。

一方、株や金、大豆に生糸、FXに追証などの金儲け、追い込みにかけられた身を肴に飲む。前者は和やかな酒席だが、後者はそうはいかない。
アノヤローちゃんと詰める(返す)と言ったのに金を持って来ない。
アノヤロー必ず上がると言ったのにウソつきやがって見つけたらただじゃおかねえ、というような話に展開していく。

一方趣味の話の方は、あの映画のアノシーンが良かったな、あのセリフしびれたなとか、あの絵はよかったなとか、あの落語はやっぱり十八番だけのことはあるとか、やっぱりあの仕掛けがよかった、だから天然イワナが釣れたとか、あそこの波はやっぱりサイコーのサーフポイントだとか、ライブ良かったな、フュージョンもよかった。
アドリブは最高だったなとか、オレだったらあそこはエンドランだとか、あのラフだったら9番アイアンだぜ、で盛り上がる。

六月二十六日大磯の大親友の命日だった。
この人を失ったのは私の飲む時間の楽しさを失ったに等しい。
四年の月日はあっという間だ。
毎朝毎晩生きていてくれたら一緒にいい酒が飲めたのにと思う。
金に関する話は絶対にしない男だった。一緒にいるだけで勉強になった。
何でも教えてくれた。友をみんな「神様」みたいと言った。
朝起きたら先ず前の日知らなかったことや、不可解なことを聞くために電話をすると、それはですねと言って何から何まで教えてくれた。
この友の墓を参ることは未だに許されない、福島のホットスポットにお寺があるからだ。

先日古い仲間と三人で献杯をした。
友の持ち歌だった♪〜哭(な)いているような長崎の街…、で始まる“思案橋ブルース”はサイコーだった。友の死以来私はずっと思案をしている。
私に答えを教えてくれる先生だった。♪〜あなたのために 守り通した女の操…。
この歌もまた得意だった。私に心底尽くしてくれた友であった。

愚妻が毎朝電話している最中に、あなた変じゃないの(?)と言った。
ウルサイバカモノと言った。私は死は全く恐くない、不眠症が治るから。

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