雲呑(ワンタン)ほど見た目、気合の入っていない中華料理はない。
へらへらして、無気力で、ユラユラしている。
あのヤローワンタンみたいな男だなというのがいる。
近い人間にハンペンみたいな男がいる。
ワンタンもハンペンも裏表がないので、きっと正直で誠実で真面目な人間が多い。
自己主張をあまりしないので主役は演じられない。
が、ハンペンの入っていないおでんは魂の入っていない仏像に近い。
昨日会社の仕事仲間二人と、早い、安い、旨いの中華料理店「菊凰」に行った。
シュウマイ二個ずつ、カニ玉三等分、エビチリ三等分、今年はじめての菊凰は期待通りである。あれこれ話をした後、ヨシ、ラストにチャーハン三等分、スープ代わりにワンタン三等分ということになった。
ワンタンはつかみにくい、箸ではつかめない、スルッと逃げるのだ。
まるでクラゲのように。そこでレンゲというのを登場させる。
だがレンゲだけだとやはり取りにくい。一発でレンゲの中に入らない。
アレッと逃げるこら待てと追うのだがヘニャヘニャっと笑いながらすべり落ちる。
で、左手にレンゲを持ち右手に箸を持つ、レンゲを45度位にして下を向かせ、そこに箸でワンタンをつかんでサッとレンゲにすべり込ませる。
大ぶりのワンタンが威風堂々とレンゲ内にはみ出し気味に広がる。
ワンタンの中にはお肉がしっかり入っている。
マンガのヒット作に「ゲゲゲの鬼太郎」というのがある。
その中に“一反木綿(イッタンモメン)”というヒラヒラしたお化けがいる。
ワンタンはイッタンモメンがお肉を食べて腹がふくらんだ状態に近い。
菊凰のチャーハンは絶品なので、ワンタンとの組み合わせは大ヒットであった。
三人それぞれビールにお酒にウーロンハイ。私はお酒一合半。シメテ約9,000円。
ちょっと名のある中華料理店なら24,000円位はするだろう。
今年も私は菊凰に通うのである。今度はワンタンメン単品と思っている。
銀座昭和通りにある大衆向け中華料理、この店には実はかなりの人たちが遠くから食べに来る。ランチは800~1,000円位でイロイロ選べる。特別ヤッホーなのだ。