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2012年7月17日火曜日

「涙と雨」




一度やったら止められないものといえば、飲む、打つ、買うが三大メインだがこれに匹敵するものがある。
それはする(舞台役者)だ。

七月十三日午後七時〜八時五十分、池袋のシアターグリーンという小劇場に友人と行った。
気が滅入る事が多い日々、気が滅入る雨や洪水、気が滅入るイジメや増税。

知り合いの役者さんがゲスト出演するというので行く事とした。
左右15メートル位、奥行き7メートル位の舞台に20名程の役者さんが80人程で満席となった斜め45度の客席に向かって芝居する。この人達はみんな芝居好き、日頃は様々な職業をしながら手弁当で集結する。

演出・脚色はVシネの名作「ミナミの帝王」全60作を手掛けた萩庭貞明さんだ。
刑事役の指宿豪さんが知人の役者だ。銀座で深夜Barを経営しながら自ら劇団を主宰している。
「愛しのバックストリート」という劇は裏通りにある小さなおでん屋さんに来るお客さんたちとその店のマスターと娘さん達の織り成すヒューマン群像劇だ。

舞台が終わると全員登場のカーテンコール。
拍手!拍手!また拍手!これがどうにもたまんないらしいのだ。
あ〜やってよかったもんね、楽しいもんね、うれしいもんねと出演者の数だけまたやるもんねとなっていくのだ。

“岸部一徳”名でビール半ダース、“竹内力”名で花。他に酒とかワインとかおせんべいとが所狭しとある。
出口で出演者一人一人がお客さんと挨拶を交わす。これがまた、小劇場のいいシーンなのだ。

人間好きな事を持っている人はいいもんだ。同じ事をずっとやっていると人間は日々退化してしまうからだ。
何か一つ日常の中に刺激を持つ、遊び心を持つべしと七月十四日()午後四時三分、小雨降る海岸で海に向かって一人芝居をする事とした。

砂浜で拾った流木を右手に海に向かってバカヤロー、バカヤローと怒鳴っていたら、親子連れの釣り人が私の後を通り、あの人バカみたいだねと言った。何!このガキ、もう一度バカヤローと怒鳴った。
この俺だって泣きてえんだ、ただ人前で決して泣いてはいけない役回りを演じなければならないんだ。
例えクサイ三文芝居でも。

バカヤロー!雨がどっと降ってきた。顔中涙と雨でびしょびしょになった。
黒い灰色の雲が亡き友の無念の形に見えた。

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