ページ

2012年10月29日月曜日

「十月二十四日早朝」




とある国の、とある哲人が晩年、とあるインタビューに応えてこんな言葉をいった。

話法は私なりにアレンジした。
「マアわしの人生で自慢すべき事は何にもネエけど、しいていえば書物を一切読まなかった事だな」これにはいろんな解釈があった。なにしろ世界的哲学者の言葉だからだ。

ある人は自分の為になる書物は読まなかったのだろう。
本当は万巻の書を読んだに決まっていると。
ある人は自分の書いた書物以外はみんな悪書だと皮肉っているのだろうよと。
また、ある人はケチンボだったから書物は図書館で借りて読み、自分で買った書物はないと。

原稿用紙2000枚、738ページ、小さい活字びっしりの巨編を十月二十四日午前四時十一分十二秒、ほぼ三週間をかけて読み終えた。

古川日出男著「聖家族」だ。
異様かつ怪奇かつ詳細かつ難解かつおどろおどろしい「血」の歴史、東北六県にまつわる歴史と現代史。この作者は福島県郡山市出身の人。

不眠症の人にお勧めしたい。
読めば読むほど頭は興奮し、副交感神経は機能不全化し、混乱を極め、目は一段と覚めていく。とある友人に読んでいただいて解説をお願いしたいと思った。

菊地信義氏の装幀がすばらしい。集英社刊です。

読書などというなれない事をしてしまった。
だが、出羽三山を全て登った後の様な不思議な疲労感が気持ちいい。

0 件のコメント: