「引くな、引くなバカヤロー」オシリを竹刀でバシンバシン、バケツの水をドヴァーとぶっかける。
「引くな、押せ、押せ、引くなバカヤロー」私の仕事場は遠い昔両国であった。
目の前はある相撲部屋であった。仕事でほぼまい日徹夜に近い日を送っていた。
午前四時頃には下の力士たちの朝ゲイコが始まる。親方はとにかく引き技を怒る。
楽して勝つなという事である。
私が相撲をこよなく愛するのは、実にここにある。
楽をするな引くな、逃げるなが私の生き方の手本だった。
私たちは例え何度も競合プレゼンに負けても、着る服や、履く靴やシューズまで変えさせられることはない。ただあいつに頼んでもプレゼンに勝てないとなると、新たな仕事はこなくなる。
私たちは芸を売っているので、お座敷の声がかからないと枕芸者みたいになる。
しばらくぶりにお声がかかった時、受話器に向ってハイ、ハイ、ありがとうございます、としきりに頭を下げている先輩の姿を見て、絶対にそうなるものかと心に決めて来た。
仕事で受けた恩は仕事で返す。
受話器、今なら携帯だろうか、それに向って最敬礼はしない、自分が駄目になってしまうからだ。
ジョージア出身の栃ノ心が平幕優勝をした。
かつて大怪我をして十両へ、そして幕下まで番付を落としたが、消してあきらめずがんばって、幕下、十両で優勝を重ねて幕内に復帰した。
この力士は引き技を使うことがない。
前へ、前へ、なのだ。十両は毎月100万円近く給料などが出るが、幕下は無給、二ヶ月ごとに15万円位の力士養成費が部屋に支払われる。
十両以上は関取といわれるが、幕下に下がるとちゃんこ番(メシがかり)となる。相撲部屋では関取を”米びつ”と言う。つまり部屋が生き残っていくためのメシの糧なのである。メシのことを留置所、拘置所、刑務所では、”バクシャリ”とか”モッソウメシ”と言う。
では学校ではなんと言うかそれは”給食”と言う。
一月二十八日(日)朝日朝刊31面湘南版にかなしい記事があった。見出しに、「給食寂しく 食材高騰に泣く」読めば小学校の給食のメニューの番付(品数)がどんどん減っている。
政府や日銀は景気回復順調と言っているが、国の宝である子どもに食べさせる給食への援助は情けない。2011年、みそ汁と「アジの開き」が出ていたが、アジの値上がりで、14年度は「ししゃもの素揚げ」に。17年度には、みそ汁を豚汁もどきにして、主菜は「ちくわの磯辺揚げ」に。
11年度6分の1カットだったデザートのメロンは17年度は12分の1カットに。
そしてデザートの回数も減る。人気のカレーライスの豚肉は、1人あたり50グラムから40グラムへ。
福神漬けは13年度8回だったが、16年度は1回のみ。神奈川県内の16年度の小学校給食費用は月額平均4,062円、一食あたり243円だった。消費者物価が上がってよろこんでいるのは、政府と日銀だけ。小学校の給食での鉄分や食物繊維は基準を下回っている。
たんぱく質はギリギリとか。各市によって違いがあるが、大差はないようだ。
食い物のウラミは恐い。ママたちを怒らせると恐い。案外こんなことが原因で内閣の支持率は引いて、引いて、どん引きとなる。
留置所とか拘置所、刑務所の方が余程いい食事をしている。だからわざと法を犯して中に入る人間が続出している。
茅ヶ崎出身の序の口力士、「服部桜」は7連敗で入内以来1勝だ。
引くな、引くな、楽をするなだ。
木曜日までは出たり、入ったり、都合により休筆となる。
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