2022年5月28日土曜日
つれづれ雑草「戦争反対」
2022年5月25日水曜日
つれづれ雑草「すすり泣く」
深夜わたしは泣いている。名画を見ているからではない。“ところてん”にねりからしを入れ過ぎて目と鼻にツーンときたのだ。ところてんは実に奥深い食べ物で、時に大敵となる。酢が多過ぎたりねりからしを入れすぎると、なんとなく頼りなく弱々しいところてんが、が然強気になるのだ。その日その日でところてんの味が違うのは、ねりからしの量による。どれ位がもっともいい味かはいまだに分からない。これはおでんのコンニャクにねりからしの量がどれ位がいいのか分からないのと似ている。コンニャクは全身ツルツルなのでねりからしはしみこまない。表面にねりからしがぜんぶ“のる”からだ。これをさらに比べると、冷やし中華におけるねりからしの量にもいえる。せっかくの冷やし中華もねりからしを入れこみすぎると、メンを食べている途中に、突然パニックが起きる。メンの中にねりからしがよく溶けこんでないで、ねりからしがたくさん登場するのだ。泣きながら冷やし中華を食べて、ガホンガホンしている人がいるのはこのためなのだ。ねりからしとは黄色い泣かせ屋である。洋ガラシ(マスタード)とは似ているがまったく別物で、マスタードは荒くれの味でホットドッグ用だ。日本料理とバーベキューほどの違いがある。週末愚妻が秋田での法事で出張(?)でもってオンボロファックス機が私では使えない。原稿を書いてもライターの方とのファックスのやりとりができないのだ。実に情けない。電子レンジも使えない。(一度マカロニグラタンで大出火させてしまった)おそらく私の知能指数は三歳児位だと思う。かろうじて映画は見れる。かつて見たブラッド・ピット主演の映画「セブン・イヤーズ・イン・チベット」の中で、こんな教えを受ける。「答えのある問題なら悩む必要はありません。答えのない悩みなら悩んでもむだです」チベット仏教はそう教える。私はこんなバカ者でありながら生きてこれたのは、ひとえに“ひと頼み”だったのだ。ところてんへねりからしを入れていたのは愚妻だったので、じぶんでねりからしのチューブを持ってからしを押し出すとその量が分からず入れすぎたのだ。バカは死ななきゃ治らないというが、私はきっと死んでも治らないだろう。答えはそういうことなのだと悟った。カトマンズの山の中に行かずに答えを知った。先週6月封切りの映画の試写会に招待されて観た映画「はい、泳げません」は、きっとベストワンになるだろう。尊敬するリトルモア孫家邦さんが企画・製作した。孫さんが手がける作品は、ベストワンになったり、主演女優賞や助演男優賞など多くの賞を得る。「舟を編む」「夜空はいつでも最高密度の青色だ」「花束みたいな恋をした」新作は水泳が苦手の大学教授が、一大決心をしてスイミングスクールに入る。“長谷川博己”が演じる。インストラクターはクルマが苦手の女性“綾瀬はるか”が演じる。昭和のある頃ヒトビトは貧しき中でもほっこりしていた。たき火でやいた焼き芋の味のようにほっこりとしていた。悪い事、嫌な事、忌まわしい事、許されざる事ばかりがテーマの映画が多い中で悪人が一人も出てこない映画は実にいい。さすが孫さんの企画力は冴えわたっている。カメラワークが新鮮だ。達人笠松則通さんスナップ写真のような映像がいい。シロウトみたいに見せる超絶クロウト芸だった。“ほのぼの”という言葉が消えてしまったいまの世に、ほのぼのとはを見せてくれる。ぜひ観に行ってほしい映画だ。脚本・監督は渡辺謙作さん。荒戸源次郎事務所出身で鈴木清順監督に鍛えられた人である。「舟を編む」の脚本でアカデミー最優秀脚本賞を受賞している。親愛なる友と、巨匠井上嗣也さん、その高弟と四人で観た。その後“永坂更科のそば”をすすり合った。世界的な文明学者が先進国で日本が唯一“止まっている”と警告している。『パリ=共同』「国境なき調査団」による、2022年の世界各国の報道自由度ランキングの発表では、対象180ヵ国の地域のうち、日本は昨年から四つ順位を下げで71位だった。安倍晋三長期政権の負の遺産だ。国民から知る権利を奪ってしまった。メディアはスポンサー離れを恐れてしんじつを報道しなくなっている。ちなみに第一位はノルウェー、最下位は179位の北朝鮮であった。憲法改正、第九条改正への足音がヒタヒタと迫ってきている。こればかりは口にマスクをして黙して語らずとはいかない。無気力に慣れてしまった国民を改正論者は見逃さない。戦争の世紀へ幕が切って落とされているのだ。すさまじいドキュメンタリー映画「ウィンター・オン・ファイヤー ウクライナ、自由への闘い」を見てほしい。ウクライナ国民が自由を求めて国家権力と闘った壮絶の90日間余だ。独裁者は逃亡した。オレンジ革命の実況中継だ。若者が動く時、国家は敗北する。我が国の若者もSNSを国家管理され、スマホを取り上げられ自由を奪われたら、きっと行動を起こすだろう。私がいまハマッているところてんは、伊豆・三浦半島産・天草使用、ねりからしはハウス食品製だ。(文中敬称略)
2022年5月21日土曜日
2022年5月14日土曜日
つれづれ雑草「笑えない、お笑い芸人」
我が世の春は長くない。苦節を重ねた芸人が売れはじめ、やがて寝る間もないほどの売れっ子になる。ある夜、いまはきっと夢を見ているんだと思う。そして売れないころインスタントラーメンをポリポリかじって空腹を満たしているじぶんを思い出す。電気・ガス代がもったいない、水道代ももったいない。やかんに水を入れて熱湯がつくれないのでポリポリかじる。今はどうだ仕事はいくらでもくる。そんな仕事は断れよとマネージャーに言ったりしているじぶんがいる。やっと寝ようと思ってもアタマが興奮していて眠れない。その日許された睡眠時間は3時間だ。きのうは2時間、その前は移動する車の中の仮眠だけだ。仕方ないウイスキーで睡眠導入剤だ。えっな、なんだいまのじぶんはすぐにあきられて、また三畳一間でインスタントラーメンをポリポリだ。ガバッと起きると冷汗がたっぷり、ふ~と大きく息をすると夢を見ていたのだ。ああよかった。高級なマンションに住んでいる。高級車にも乗っている。預金通帳には考えられない数字が増えている。自分で死んだ先輩が言っていた。我が世の春は長くはないぞと。嫌だあんな生活に絶対戻りたくない。しかし死ぬほど忙しい日々なので芸を磨く時間がない。まるで売れないころ刑務所の慰問に行った時、刑務官も囚人も大笑いしてくれた日がなつかしい。老人ホームに行った時おじいちゃん、おばあちゃんが手を叩いて笑ってくれた日がなつかしい。もし売れなくなったらと思うと夜が恐いんですよ。笑ってもらえなくなったらと思うと、笑っていられない。かなしいもんです芸人はね。こんな話を撮影の合い間に話してくれたのは、お笑い界の大御所の一人だった。お笑い芸人の人たちは、舞台から楽屋にもどるとみんな暗くて無口だ。大、大、大ファンだった「ダチョウ倶楽部」の上島竜兵さんが自死したのをニュースで知った時、ガク然、ボー然として言葉を失った。熱湯風呂に突入する。アツアツのおでんのコンニャクを丸飲みする。大やけどするようなその姿にみんな大笑いをした。上島竜兵さんに我が世の春があったかは分からないが、大人気の3人組だった。人には言えぬ苦悩があったのだろう。眠れぬ夜を繰り返していたのだろう。まだ61歳であった。私は、とてつもなくかなしい。私も広告屋という芸人だ。“おだてりゃ豚も木に登る”でつたない芸を売ってきたが、四十九歳になった時からその先のじぶんの姿が見えた。先輩から50歳までが勝負だよと言われていた。そして今日まで眠れぬ体となっている。なら誰も思いつかないビックアイディアで勝負だと、ふるい立たせる。NHKで「映像の世紀」を見た。1918年スペイン風邪が世界的流行となり、第一次世界大戦によって爆発的に拡散する。戦争は軍人も民族も移動するからだ。マスクをした兵士たちが行進する。握手もしない、それを徹底したアメリカの州は感染者が激減した。しかしスペイン風邪を軽視してマスクをしなかった州はあっという間に感染者が激増した。ハグをし、キスをし、握手をしまくった。世界的大ベストセラー「銃・病原菌・鉄」を連休中に再読した。上・下800ページ近いこの本は、帝国や王国が戦争とウイルスによるパンデミックで滅びてきたことを教える。スペイン風邪を封じたのは、人類の英知だ。電子顕微鏡の発明でウイルス菌を発見して、ワクチンの開発を生んだことによる。ゼロ・コロナか、ウィズ・コロナか。人類とウイルスの戦争は永遠につづくのだ。ロシアとウクライナの戦争の先に何があるかは誰でも想像がつくはずだ。世界人口はスペイン風邪の時より倍増している。つまり死者も倍増する。宿命は生まれ持ったもの、運命はどう転ぶか分からないもの、寿命は絶対にくるもの。天命は誰が決めるか教えてもらえないもの。上島竜兵さんのご冥福を心より祈る。あの世では熱湯風呂に入らなくてもいいはずですよ、アツアツのコンニャクを飲み込まなくてもいいですよ。ゆっくり、ほっこりしてください。残した二人の仲間を見守ってあげてください。売れっ子だった指パッチン!のポール牧さん、ウクレレ漫談の牧伸二さん、上方落語の桂枝雀さん、みんな自分で死んでしまった人たちですが、あの世では、悩みはなく永眠だからぐっすり眠れますからね。悪い夢を見ることはありません。大谷翔平選手が劇画も及ばない大活躍をしている。ふと売れっ子の見世物芸人に見えてしまう。私は運命論者なので、この先きっと起きるであろうことを心配する。私には見えている、クッキリと。好事魔多しという。(文中敬称略)