私のところのような米粒みたいな小さな会社でも、税理事務所のお世話になっている。公認会計士&税理士の先生は、アタマの毛は薄いがSEXは強いらしい。小社の創業メンバーの二人の同級生だ。月に一回時節を評じた一枚の葉書きが来る。今回届いていたのが秀逸だったので、この場を借りてぜひご一読をと思う。「罰金だらけですが、楽しんで生きましょう」と見出しがあった。働いたら罰金 → 所得税。買ったら罰金 → 消費税。持ったら罰金 → 固定資産税。住んだら罰金 → 住民税。飲んだら罰金 → 酒税。吸ったら罰金 → タバコ税。乗ったら罰金 → 自動車税。入ったら罰金 → 入浴税。楽しんだら罰金 → 娯楽利用税。死んだら罰金 → 相続税。貰っても罰金 → 贈与税。老けても罰金 → 介護保険料。と書いてあった。税金は他にもたくさん発生する。有史以来、我々は税金を払うために日々働いている。その税金が我々のために役立つような仕組みになっていない。市井の民とは借金と税金に追われ続ける一般市民のことを指す。ところが税金ドロボーたちに罪はない。アッチコッチで中抜きする。特権階級たちである。金は金を生み、金持ちは大金持ちになって行く。ゴージャスなロココ調のリビングダイニングで、目刺しなぞを焼いて食べている。スキ焼きに玉子などもったいないと言い、その上牛肉はもったいないと豚肉だった。スキ焼きはシラタキと揚げ豆腐と、玉ネギに春菊のスキヤキのタレで食す。私はこんな事実を見聞したことがあった。ビンボー人はお金を使い過ぎるからビンボーなんです、なんて言われた。使うお金がないからビンボーなんですよと言ったら、それは違うビンボーな人は、ビンボーに馴じむように生まれて来ているんです。なまじお金を持つと馴じまないで使ってしまうんです。そのほうが気が落ち着くんですよ。落語の“芝浜”みたいなもんです。いつか金持ちになってやると夢を見ているほうが日々幸せなのです。取材先の人間は日本を代表するプロ野球の名監督であった。何日か経った時、その人から一枚の葉書きが届いた。美しいペン字であった。そこには「貧乏ほどの大敵はないですな」と書いてあった。私の取材目的は「成功とは何か」を聞くことだった。監督は成功とは金持ちなり、借金に追われていたら、いい作戦は生まれないからであった。こんなギンギラの部屋は女房の趣味、私はここでアジの開きや、目刺しを焼いて食べる。臭いが部屋の中を回るので文句ばかり言われていると言った。アメリカのある成功者に“成功とは”と聞いた時、たくさんの税金を払うことだと言ったのを思い出した。この人はピューリッツァー賞を受賞していた。私が納めた税金で国が富み、人が育てばいい時代になるからだと。どちらの人の話も「ホンマカイナ、ソーカイナ、エ~」であった。話が用意されたようによくできていたからだ。本音はどこにあるか、それはきっとサイフの中か、金庫の中であったろう。私は大きな家に住んでいる人は、大きな悪さをしている、と言っていたという亡父の言葉を支持する。本当に汗水たらして働いている人は、江戸時代の町人のようになる。私はその町人に憧れる。人情があるからだ。昨日久々に「男はつらいよ フーテンの寅」さんを見た。山田洋次郎監督も江戸時代の町人たちが大好きなのだろう。この映画には悪人がでてこないのがいい。徹底的に性善説なのだ。人情が映画になっている。山田洋次郎監督に、成功とは、と聞いたら、きっと寅さんに会えたこと、そう言うのではないだろうか。“労働者諸君、今日も元気で働いているか”と小さな印刷会社のタコ社長たちに声をあける。山田洋次郎監督は市井の民の味方、弱者の味方であり続けている。悪知恵を集める人間たちを嫌悪する。浅丘ルリ子のリリー役がよかった。キャバレーを歌って回る役だ。♪ 好きだった 好きだった 嘘じゃなかった……。寅さんは毎作純粋な恋心を持つのだが、正面切って言えないのだ。“愛するって耐えることなのね”と誰かが言った。この頃ではそうは行かない。別れる切れるの話になると、血の決裁が控えている。ゾッとするような事件が起き続ける。私は人情が消えゆく社会にこの国の明日の姿を見る。65歳以上の老人が約4000万人近くになった。2100年にはこの国は総人口約6000万人弱になる。私の孫が敬老の日を迎える頃は、人口が半分になっているのだ。変形したこの国はやがて国破れて人影なしとなるだろう。今夜は落語の名作「芝浜」を聞く。故立川談志のラストステージ物だ。夢を拾って、夢から覚めた話です。(文中敬称略)
※通信機能不良のため、四日おくれの便りです。
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