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2022年10月1日土曜日

つれづれ雑草「故人のプライバシー」

人の死は等しく悼まれなければならない。それが仮に極悪の死刑囚のものであっても。あるいはこの国をどうしようもないほど、酷い国にした人物であってもだ。先日の故安倍晋三元総理の国葬儀を見ていて、結局故人が生前得意だった嘘ばかりであった。招待客のアゴアシその他を足すと、葬儀予算は100億は超えているはずだ。純粋にその死を悼んで自腹を切って全国から来て、ズラリズラズラ並んでいたのは数少ないはずだ。半分以上は旧統一教会系や他の宗教系の動員であったようだ。招待客も2000人近く少なかった。詳細は確かではないが。私がホントカヨーと思ったのは、菅義偉前総理の弔辞だ。その私情あふれるものは感動を呼んだという。まるで恋人へのラブレターみたいだったという人もいた。それは涙を誘い拍手を呼んだ。私はそれを聞いていてちょっと待って、プレイバック、プレイバックであった。特に感動したという故安倍晋三元総理の議員会館室のテーブルの上にあった読みさしの文章の引用だ。故人と同じ長州人、これ以上金に汚い総理大臣はいないといわれた、山縣有朋(若い頃は山縣狂介)と、これ以上女性にだらしない総理大臣はいないといわれた伊藤博文(若い頃は伊藤俊輔)。伊藤が暗殺され山縣が詠んだ言葉(マーカーで線が引かれていたとか)だ。山縣有朋は数多くの汚職にまみれた手にした金を別荘庭園づくりに投じた。伊藤博文は明治天皇から、女遊びは控えよといわれたという逸話もあり、紙幣の顔に選ぶのを天皇に先送りされていたともいう。明治維新の号砲をあげたといわれた長州人、高杉晋作や木戸孝允(桂小五郎)から、シュンスケオンナアソビハイイカゲンニセイと叱られていたらしい。さて、菅義偉前総理は人の部屋に入って行って、机の上に置いてあった他人の読みさしの本を、勝手に開いて読んだことになる。故人であってもプライバシーの侵害である。もしその本の中に、読まれてはならない故人の私的な文などがあったら許されるのか。これは許されないだろう。親子兄弟姉妹の間であっても、人が読んでいた本を勝手に部屋に入って、勝手に読んではならない。現代でいえば勝手に人のメールやスマホを見ることは許されない。あの弔辞はスピーチライターが書いたものであったはずだ。最後まで芝居がかったものであった。故安倍晋三元総理シンパは支柱を失いこれから寄るすべがないので涙を流した。日本人はやさしい国民なので、いい話だったと涙し一部のマスコミは絶賛した。長州人にもう一人明治の悪玉がいる。井上馨という国の金を扱う重要大臣だった人間だ。山縣、伊藤、井上たちのどうしようもない姿を見て、西郷隆盛は失意したと司馬遼太郎は書いていた。金と女まみれの元勲たち、日本でもっとも総理大臣を輩出した長州は、実に興味深く、松下村塾の吉田松陰は、短い間に何をどう教育して長州人を育てのだろう。私は、おもしろきこともなき世をおもしろくと書き残した、高杉晋作の大ファンである。自民党はこれから岸田文雄後への内乱となる。故安倍晋三、前菅義偉、現岸田文雄、この人間たちが残したもの、向って行く先は、メッタメタの日本である。河野太郎とか小泉進次郎などになったらと思うと、メッタメタメタメタである。野党もメッタメタだ。ジャン・リュック・ゴダールが安楽死を選んで旅立った、91歳であった。ゴダールは生前こんな言葉を残している。「私が死ぬ時、映画は終わるでしょう」と。真意のほどはいろいろ説がある。その一つに「新たな才能により生き続ける」というのもある。ゴダールはテレビの台頭、SNSの台頭を見越していたのかも知れない。若者たちは映画を早送りで見るという。映画界は製作委員会方式といって、みんなの会社の資金を集めて作る。本屋大賞受賞とか、マンガのヒット本に資金が集まる。資金を出した分、イロイロ口注文も出す。あの女優はもっとエロッぽくとか、あの殺しのシーンはもっと暴力的にとか、気の長くない監督はブチギレてしまう。神田の岩波ホールがなくなり、飯田橋のギンレイホールも近々閉じるという。名物ホールが消えて行くのは芸術文化への補助がないからだ。オリンピックが商業主義になってから、スポーツは一大利権となった。そのボス森喜朗元総理が、検察からホテルに呼び出されて聴取されているらしい。いちばんの目的は、新国立競技場を作るときの都市開発にからむ巨大な利権だ。このオッサンは、ノミの心臓といわれるほど心配性らしいが、利権がらみになると、特上カルビーとか特上ロースの心臓になるらしい。生きているだけで迷惑な人間なのだが、肺ガン治療の新薬のおかげで命を長らえている。ある映画を見た。初老を越えすでに性の交わりはない夫婦だが、同じベッドで寝ている。しかし夫には自分の勤め先に若い恋人がいる。ある日の明け方、夫のスマホにその若い恋人からメールが入る。うろたえる夫、見せろという妻、さて、その結末は。長い間セックスレスの妻は疑いが深く、とてつもなく恐ろしいのだ。そしてベッドの中で妻は夫の耳元であることをささやくのだ。故人でなく、個人の安倍晋三さんはすこぶる気さくであったそうだ。政治の世界は人間を変形させてしまうのだろう。菅義偉前総理のヤキトリ屋の話は映画的であった。本当はロマンチストなのかもと思った。(文中敬称略)



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