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2013年8月5日月曜日

「ある都市伝説(?)」






毎週日曜日夜十一時〜十一時半はTBSの「情熱大陸」という番組を観ている。
だが八月四日は観るのを止めた。

何故なら番組欄にこう書いてあったからだ。
「林真理子!女の野心と行動観察記」であった。
ひと目みただけでもゾッとする程嫌な女なのに三十分近く観ていたらきっと様々な悔いを残して死んでしまうだろうと思ったのだ。

八月九日、お世話になっている会社の創立六十周年の式典を無事終えるために依頼されている事をプロとして完璧にやり遂げねばならない。
林真理子如きの野心のために命を落とす訳にはいかないのだ。
スーパーブランドで身を固め、超高級エステに通い、如何なる化粧品でケワイ(化粧)しても林真理子の精神を美しくする事は出来ないだろう。
「人は見た目が9割」なんていう本がベストセラーになったが、その「不届き心」も林真理子には当たっている気がする。

もとより私自身も見た目の悪さは100%であり、精神の醜い度も100%である。
ただ私は少しばかりは恥というものを知っているつもりだし、如何なる方法を持ってしても整える事が不可能である事を知っているつもりだ。
林真理子はこの頃すっかり売る物が無くなってきたのか、自身の姿、形、その精神を売る事にしている。

自分に近しい女性の共感を狙っているのだろうがそれが「情熱大陸」に出てきてはたまったもんではない。人は決して見た目が100%ではないと「人は見た目が9割」を書いた作家が反省したかどうかは不明であるが「やっぱり見た目が9割」を出版するらしい、というか出版されているやも知れない。
これはあくまで私の推測だが、もしかして私と同様に林真理子の行動というか行状を許し難きと思ったのかもしれない。

過日、私の敬愛する「江頭2:50」が警察で事情聴取されて出てきてインタビューを受けている時、素敵なTシャツを着ていた。
調べてもらうとイギリスの「ザ・ダファー・オブ・セントジョージ」というブランドであった。やはり「江頭2:50」は只者ではない。

ある調査でスタッフと共に東京駅の新丸ビル内を歩き回った。
その四階にそのブランドショップはあった。
店内には女性一人、男性二人のスタッフがいた。
この間テレビで江頭2:50大先生がこのTシャツ着ていたけど、きっと売れなくなったんじゃないの(?)と聞けば三人とも苦笑した。
店内にお客さんはいなかった。

林真理子がテレビや新聞、雑誌などでこの服は◯☓、この靴は☓☓、このバッグは△□という度にそのブランドからお客さんが離れて行ってしまうという都市伝説があるらしい(?)

人は見た目ではない。そうでないと私は外を歩けない。
ちなみに私はスーパーブランドは何も身につけず、所持もしていない。
自重せよ!林真理子よ!

2013年8月2日金曜日

「午前三時のソーメン」


※イメージです


「畜生」という言葉が私は大好きである。
国語簡易辞典を引くと、鳥や獣など、家畜、人を罵るときに言う語とある。

私にとって畜生という言葉は自らへの励ましと明日へのチカラコブ(力瘤)である。
畜生負けてたまるか。
畜生アノ野郎許さねぇ。
畜生俺は何て馬鹿野郎なんだ。
畜生なんであんないい奴が死んじまうんだ。
畜生なんで人に出来た事が自分に出来ないんだ。
畜生なんで何もかも上手いかないんだ。
畜生なんでプレゼンに負けたんだ。

畜生!畜生!とずっと「畜生日記」をつけていた。
チキショウという人もいるが、チクショウの方が正しい。
私は痛い時は痛い、暑い時は暑い、寒い時は寒い、痒い時は痒いと何度も何度も正直に言う事にしている。その変わり畜生と後に続ける。
痛い、死ぬ程痛いでも畜生負けねえぞみたいにするのだ。
そうすると不思議に体に力が漲ってくる。

何故か「犬畜生」という言葉があるが猫畜生とか、鳥畜生とか、熊畜生とか、蛇畜生とかの言葉はない。犬は忠実な生き物、誠実な生き物、決して主人を裏切らないのに差別されているのが気に入らない。

かつて「泣いてたまるか」というドラマがあった。
渥美清が主演であった。「♪上を向いたらキリが無い、下を向いたら後が無い」丁度今がいいみたいな主題歌が好きであった。
それは市井で生きている人間たちが明日に向かって畜生負けてたまるか、泣いてたまるか、と心を期す日々の小さなヒューマンドラマであった。

人間畜生という言葉を持っていればきっと戦って行ける。
物の真理は細部に宿るというから、私はその細部を「畜生心」と思っている。

畜生それにしても蒸し暑い。
それにしても午前三時にすするソーメンのなんと美味しい事か。
それにしても人間は凄い、世界水泳のライブを見ていると、なんと地上27メートルから人間が4回転もしながら水中に落ちる。
時速100kmとか、ハイダイビングという新種目だ。
女性は20メートル。ドッバーンと足から落ちるとそこに黒い潜水士が待っている。
そして大丈夫、気を失って無い(?)OK(?)とか確認する。

畜生なんて根性ある奴等だ。全然負けてるではないか。
畜生なんて凄い奴等だ。 260万光年のアンドロメダ星雲をばっちり撮影する機械を開発するなんて。小さな事でセコセコ畜生というのは止めにするか。

一体地球って何で出来て、何で人間なんかが出来ちまったんだ。
畜生理科は1だったし、物理化学も1だった。畜生分かんねえ。

2013年8月1日木曜日

「でんすけと岩塩」


イカゲソ焼き ※イメージ、転載です


なんでだろう、なんでだろう、なんでだなんでだろうというフレーズのみでブレイクしたお笑いコンビは確か「テツandトモ」であった。

地下鉄はいつどここから入れるのかそれを考えると夜眠れないと言ったのは誰か思い出せない。人間は何故か根拠のない物に感動する。


近所のお寺で時々「宝珠市」というガラクタ市がある。
とんでもない暑い日に少しだけ立ち寄った。あるオッサンの出店にはとげ抜きとか、鼻毛抜きとか、栓抜きとか、牛乳のフタ抜きとか、抜き物だけが並んでいた。

海底にずっと沈んでいた様な思い切り錆びた栓抜きが1600円、赤茶色に変色した牛乳フタ抜き2100円。そのむかしはどんな色だったか分からないトゲ抜き2500円とか値札が付いている。

なんでだろう、誰が買うのだろう、ちゃんと売れるのだろうかと思って立っていたのだが、あんまり暑いので帰る事にした。
オッサンこれ売れるのと聞けば、売れなきゃ商売になんないよ、ちゃんとマニアがいるんだよと叱られてしまった。汗びっしょりのオッサンに何故か感動した。

 家に帰ると知人から北海道の「でんすけすいか」が届いていた。
これ以上美味しいすいかは食べた事がない。外側は黒く、中は真っ赤だ。身がびっしりと引き締まって極上だ。このすいかに岩塩を削ってパラパラとかける。
岩塩は以前寿司屋さんから頂いていた代物だ。
畑で育った物を海で育った物で食すのだ。
なんで同じすいかなのにこれ程味が違うのか毎年分からないまま感動する。

NHKスペシャルで深海の謎、ダイオウイカの発見を再上映していた。
凄い、物凄い。二度目でも大感動だ。黄金色に発光するその体長18メートル、クジラにも敗けない。このダイオウイカで刺身なら何人前(?)、握り寿司なら何貫(?)、イカのゲソ焼きなら何本(?)、イカ飯なら何人前(?)などと考えていたら夜眠れなくなってしまった。頭が暑さで「イカ」れてしまっているのだ。

2013年7月31日水曜日

「割り勘」



猛暑強烈、蒸し暑さ異常となると人間一人ひとりの動きも異常となる。

男も女も等しくまったりとだらしなくなってしまう。
歩く速さは猛烈に遅くなり概ねガニ股になる。

サッサと歩いている人は少なく、ぺったん、ぺったんと歩く。
扇子などで気取って風を送る女性は少なく、団扇を使ってヤキトリ屋さんかうなぎ屋さんみたいにパタパタ風を送る。

当然男はもっと気取ってはいられない。
ワイシャツのボタンを上から三つ以上外し、どこかの喫茶店から持って来てしまったのか、おしぼりで汗びっしょりの頭、首、胸などを拭きまくる。
中には体にハンカチを貼り付けている人もいる。
老人はお風呂と間違えたのか頭にタオルを載せて銀座和光のウィンドウの前に座っている。

猛暑は人々を無口にする。
街中無言の人々が、たまらん、たまんないわ、たまんねえとブツブツ呟きながら歩く。
ソフトクリームをベタベタ食べながら歩くOLたち、アイスキャンディーをペロペロ舐めながら歩く歌舞伎座周辺の着物の女性。
赤城乳業のガリガリ君をガリガリ食べながら歩く若い男女。

最早真っ直ぐ歩く事さえままならない位熱い日本列島だ。

一人ひとりよく見ると殆ど人はヨレて歩いているのに気がつく筈だ。

 そんな中楽しい夜があった。
元サントリー宣伝部制作室長(現練馬美術館館長)若林覚さんを囲む会であった。

サントリーの名作を大量に生み出したのが若林覚さんだ。
博覧強記の人、一年365日の内365回以上美術館や展覧会を見て回る超人だ。
サントリー宣伝部でやはり数々のヒット作を作った吉村喜彦さんと奥様の有美子さん(電通でサントリー担当であった)奥様のプロデュースでPHP文庫から出版された「ビア・ボーイ」は第九刷となった。

吉村さんはサントリーを退職後、作家の道へ。
そして今NHKラジオ番組のパーソナリティもつとめて大人気だ。

グラフィックデザイン界の巨匠、井上嗣也さんは絶対遅刻をしない人。
 やっぱりピタッと少し前に来た。長袖の白シャツと黒のスラックスはコムデギャルソンと決まっている。サントリーの名作は広告界の金字塔だ。
初めて会った人間は、初めてバンジージャンプをした時の様にオッカネーと恐怖感を持つ。

元電通のキャスティング部長江原立太氏はサントリーひと筋、ミッキー・ローク、ショーン・コネリーから矢沢永吉まで20数年サントリーのキャスティングを手がけた人だ。
一夜にして世界中のスターの動向がわかる優れ者だ。

男五人と女性一人。プロ中のプロと語り合う、その楽しさは格別だ。
映画、酒、本、美術、音楽、現代アートの話、それと楽しかった昔話だ。
仕事の話は一切なしで語り合う。

そして割り勘が決まりだ。女性の分は男が持つ。
吉村夫妻おすすめの店は格別の上を行っていた(店の名前は教えません)で、一人六千円ちょっとであった。外は異常に蒸し暑かったが歩く速さはまったりしていなかった。
楽しかったなあ、いい夜だったなーと言いながら別れ別れとなったのであった。

2013年7月30日火曜日

「人徳とは」


※写真は転載です


「ベースボール」を生んだ国アメリカは流石に洒落た事をしてくれる。
「野球」の国日本では考えられない事だ。

その日ヤンキースタジアムは超満員であった。
七年間しか在籍しなかった松井秀喜と一日だけマイナー契約をし、名実共にヤンキースの一員として引退式を演出したのだ。
松井秀喜はニューヨークヤンキースの一員として盛大に祝福された。

このイベントでヤンキースのスーパースターたちは松井秀喜を改めてリスペクトした。
ジーターがいる、リベラがいる、黒田博樹もいる、だがイチローの姿は見えない。
居る場所がない。遠くの方に居た様だ。俺が目立ってはいけないから(?)。
だが本当のところはイチローはヤンキースの一員としてのポジションはない。
今でもただのトレード要員だ。仮にイチローが五千本ヒットを打っても、ただヒットを数多く打っただけの選手であり、どんなファインプレーをしても守備がうまかった選手として記録に残るだけなのだ。

イチローがマリナーズを去る時、チームメイトはシャンパンを開けて大喜びしたとか。
その原因は「人徳」という事だろう。自己愛しかない。
自分の数字だけを追い、チームメイトとはコミュニケーションできない。超ナルシスト、つまりは変な奴、嫌な奴としか思われていない(川崎宗則以外は)ヤンキースの世界一に貢献していない、所詮最下位チームに居たヒットメーカーだったのだ。

松井秀喜の口からチームメイトへの悪口や、監督コーチへの批判や打てない時の愚痴などは一切ない。当然イチローはその真逆だ。イチローの悪口をいう選手は山ほどいるが、松井秀喜の悪口をいう選手は一人もいない。「人徳」があるか、ないかだ。

イチローはヤンキースを放出されるだろう。
とにかく嫌な奴と全員に思われているのだから。

日本人が選ぶ理想の経営者NO.1はイチローだ。
人間は近づいてみないと本物か偽物かは分からない。

ところで私はサブローだ。トコトン嫌な奴で生きて行く。
どれ位嫌な奴か一度会いに来るといい。無料で見せてあげる。
日本人の誇り松井秀喜を育てたご両親に心より敬意を表したい。
ゴジラは人間の理想NO.1だ。

2013年7月29日月曜日

「みたらしダンゴ」


安井金比羅宮 ※転載です


勝新太郎が演じた「座頭市」の中で必ずいう名セリフがあった。
「嫌な渡世ですねえ」と。義理も人情もない世の中を目の見えない按摩さんは嘆く。

鶴田浩二が歌ったヒット曲「傷だらけの人生」にはこんなフレーズがあり流行語になった。♪〜何から何まで真っ暗闇よ、右を向いても左を見ても筋の通らぬ事ばかり…。

「世の中真っ暗闇でござんすよ」とヤクザな男は世を嘆く。
人の世は縁と縁で繋がり合い、くんずほぐれつの悪縁が生まれて行く。
その結果あーあ嫌だ嫌だ、こんな悪縁を切ってしまいたいと人は願う。

京都東山に「安井金比羅宮」という高名な神社がある事をある年知った。
この神社は金毘羅信仰に加えて崇徳天皇の御神徳で良縁結びとも、悪縁切りでもご利益で名高い。

悪縁は婚姻、恋愛だけでなく人間関係全般的に加えて病気や不慮の事故、悪運、悪習癖(過度の飲酒、喫煙、ギャンブル)、借金、犯罪など広く悪から縁切りに霊感があるとして信仰を集めている。全国から悪縁、悪連と縁切りしたいという人々が集まって来る。大きな石を繰り抜いた穴をくぐり抜ける。

「縁切り縁結びの碑」という石碑には御札が何層にも貼られ、それはまるで御札の山。北国にある雪の住まい「かまくら」の様でもある。
一人ひとりその穴をくぐりながら願いを込める。地べたを這って出てくるのだ。
平安時代以前から藤の名所、見事な藤棚がある。

人間社会は一人では生きてはいけない。即ち嫌な事ばかり世の中にある、ほんのちょっとの良い事を見つけて世の中捨てたもんじゃないと心に言い聞かせるのだ。
悪縁と良縁の比率はきっと1001位かもしれない。
手柄は自分の物、失敗は部下のせい、借りた金は貰った物だから返す訳はない。

あなたは新郎◯☓が病気で苦しむ時、辛い時も愛を捧げる事を誓いますか、ハイ誓います。あなたは新婦□△が病気で苦しむ時、辛い時も愛を捧げる事を誓いますか、ハイ誓います。アーメン。なんて誓い合った後輩が離婚の相談というか報告に来た。
盛大な結婚式ほど離婚率は高く、早い。どうしたんだよと聞けば、縁が無かった。
悪縁とは早いとこ縁切りしたかったと二人は口を揃えていうのであった。

一度京都の「安井金比羅宮」に行って来いよとFAXで送られて来た資料を渡してやった。
愚妻が突然、女性はねえ一度別れたいと思ったら絶対元には戻らないからといった。
男は未練がましいけどねと重ねていった。四人でみたらし団子を無言で食べた。

2013年7月26日金曜日

「正露丸下さい」


※イメージ


これはあくまで私の経験と持論である。
今まで何度か記してきたのだが、余り反省がないので再度記す。

 人間は学校の勉強ばかりしていると何になるか「それは本当の馬鹿になる」という事だ。一番勉強した人は東京大学に入ったりする。次に京都大学とか大阪大学とか名古屋大学と続く。

最も東大生にとって、東大以外は大学でないと思っている。
特に東大法学部となるとその思いは更に強くなる。
勉強ばかりしていると自分が専攻している分野に於いては、世のため人のためになってくれるのだが、他の分野や社会的問題に関してはまるで知らない、見えない、分からない事となる、昆虫の様な複眼の思想が無くなってしまう。

勉強は知恵を生むが、それに比例して悪知恵も産み育てる。
東大の論文改ざんや東大教授のセコイ詐欺事件や、破廉恥な問題が次から次に噴出する。東大はお得意の隠蔽作戦を展開する。

勿論優秀な教授も多いのは当然と思うが、遊んでないで大人になった人間は社会的には「無知」な人間である。勉強ばかりしていた東大名誉教授、准教授、客員教授等々の人々は殆ど権力馬鹿、学閥馬鹿、名誉馬鹿となりせっかく出てきた若い才能の杭を嫉妬と怨嗟の力を込めて叩き続けるのだ。

警察にパクられれば東大教授も名前では呼んでもらえない。
点呼のたびに正座させられ、135番とか230番とか答案用紙の番号の様に呼ばれるのだ。

初めての留置場では教授たちはプライドをズタズタにされ、下痢を起こし、頭痛を起こす。担当さんスミマセン、正露丸下さい、太田胃散下さい、ノーシン下さいとおねだりする。手錠をかけられ、ビニール袋に入ったコッペパン二個と小さなバターと小さなジャムを持って地方検察庁の地下室に集められる。

あるヤメ検の弁護士の話によると、裏切り、寝返り、口を割る速さNO.1、人に罪をなすりつけるNO.1、政治家泣きつきNO.1は教授たち高学歴者だという。批判論評はすれど責任を決して取らない有識者という御用学者たちがこの国をいつの世も悪い方向に持っていく。

2013年7月25日木曜日

「丼のドン」


わさび丼 ※転載です


「深夜食堂」という小林薫主演のテレビドラマが好きであった。
原作はマンガであった。

一番シンプルなメニューは、あったかいご飯の上にバターを少しのせそれにお醤油をかけてひたすらかき混ぜる。
ただそれだけだが、一度実験したら抜群に旨かった。

「孤独のグルメ」という深夜ドラマがある。
やはりマンガが原作だ。松重豊という中年の役者が渋い料理を食べ歩く。

すこぶる美味しそうなのでそれを紹介する。
真似して食べたが実に鼻にツンとして、舌にツンときて、胃袋にツンツンくる絶品の味だった。世にツンツン気取りの女性がいるが、それに醤油をかけて食べたら意外にもシンプルで、純情で、健気であった。
それ故情が深まり別れられないという様な味である。

料理名を「わさび丼」という。
漆のどんぶりにあったかいご飯を七分目位に入れる。
その上に上質の木から生まれたカンナ屑みたいなクルクルの鰹節をゴッソリ置く。
 本わさびを一本買って来て、鮫肌の板の上でぐるぐる回しながら彩やかな緑色のわさびを生み出す。そのわさびを鰹節の真ん中にのせる。
そしてそこにお醤油を円を描く様にかける(少し多目がいい)。
 後はただ無心にかき混ぜる。
邪心があると味が落ちる(?)つまりわさび丼はこれだけなのだ。

一度知ったら忘れられない。
混然が整然となる。

二十四日のテレビドラマでは、松重豊が西伊豆河津町の「かどや」という食堂で「わさび丼」を食べていた。400円である。
他にわさびを使った漬物など小皿四品がそっと付いてくる。
一度試してみて欲しい極上の丼だ。

その日の午後、辻堂駅からワンマンバスに乗った。
連れていた子どもが車酔いするのでタクシーはNG
そこに二人の女子小学生が乗って来た。制服を見ると湘南白百合の生徒であった。
その二人がバスの運転手さんに向かってこう言った。「運転手さん、いつもお暑い中ご苦労様です」

頭にツーンと来た。
この子はこれからどんな女性になって行くのだろうか。
ブーッとオナラの様な音を発してバスは動き出した。


2013年7月24日水曜日

「猛書」


金澤翔子さん ※写真は転載です


七月二十三日(火)午後四時過ぎ、銀座は目の前が雨柱(こんな言葉はないかな)で見えない程の猛烈豪雨。降り落ちる雨がまるで一本一本の凶器の柱の様に一直線に突き刺さって来た。

四時半から赤坂溜池で打ち合わせがあるため外に出た。
一瞬で全身ずぶ濡れとなった。傘などは全く役に立たない。
雷鳴絶叫、天が怒り狂っている様であった。

天よ、何に怒ると問えば、先ずは猛暑にへたり込んだダラシネー私であり、嘘ばかりつきまくる東電であり、大惨敗なのに党の代表が責任をとらない民主党であり、全く訳の分からない選挙制度であり(何で緑の党の三宅洋平はワタミの渡邉美樹より多い18万票近くとって落選なのか)、どこまで人間を阿呆にするのかのバライティ番組であったり、辞めない全柔連の者共や、バックれまくるプロ野球のコミッショナーであったりと思われる。

五時半から銀座で打ち合わせがあり赤坂からトンボ返りをした。
三年前に亡くなった画家、宮トオルさんの奥さんが遺作リストを持って来るのだ。
奥さんはかつて私の処でコピーライターをしていた人だ。
宮トオルさんの未発表の絵を何とか世の中に出してあげたいと思っていたのだ。久々に見る宮トオルさんの絵はやはり素晴らしい。
独特の女性、独特のエロス、独特の風景、独特の色彩に心を奪われた。

そうだ直ぐ側にMEGUMI OGITA GALLERYという独特の絵や書や現代アートを発表させるギャラリーがある。そこのオーナーに見せに行こうとなり即行動をした。
生憎オーナーは出張中であった。来週また来るからと伝えておいてとギャラリーのスタッフに言った。

さあここでガァーンというものすごい書に目が奪われる。
ダウン症でありながらその書は天才の上を行く大天才と世界的名声を得ている書家、金澤翔子(雅号小蘭)さんの書を展示していたからだ。
NHKの大河ドラマ「平清盛」の題字の流麗にして豪快な筆走り。
「重厳雲雷」の四文字。二曲✕二曲の屏風の強烈な墨魂の塊。
一文字が一メートル以上、太さ三十センチ以上だ。書の雷に打たれ気絶しそうになった。へばっていた心と体に電流が走った。

人間はやっぱり凄い。五人で行って五人で驚嘆した。
病気だからと決してマイナス思考になってはならない。
人間は何かに挑戦しなければならい。私もたかが不眠症二十年位でへたってはならない、そう決意したのであった。とことんやってやる、猛暑も「猛書」で元気づけられた。

2013年7月23日火曜日

「仲良い恋人」


原美術館

坂田栄一郎氏「江ノ島」


JR品川駅から車で五分ほどの住宅街の中に「原美術館」はある。
東京ガス会長、日本航空会長、帝都高速度交通営団(現営団地下鉄)総裁などを歴任した実業家、原邦造氏の邸宅であった。

瀟洒な建築は上野の東京国立博物館本館や銀座和光本館の設計で知られる渡辺仁氏の設計による。昭和十三年に竣工された。
当時の実業家は芸術をこよなく愛しコレクションした。

私の敬愛する写真家、坂田栄一郎さんが十数年にわたって夏の江ノ島を探求し続け、「人のいないポートレート」を中心としたシリーズ「江ノ島」を初公開した。
作品の数四十点、ポートレート約十点が原美術館とベストマッチしていた。

レセプションには日本を代表するアーティストやクリエイターがギッシリ集まった。
坂田栄一郎さんといえば愛妻光豆さんが必ず側にいる。
仲良い夫婦であり、仲良い恋人同士の様でもある。
オシャレで可愛い光豆さんは作品を作る上で大切なパートナーでもある。
重いカメラや機材を担いで砂浜の上をずっと歩いたそうだ。
私たちが十代だった頃、江ノ島は憧れの地であった。

世界中の重要人物の内面を一瞬にして切り取る雑誌、AERAのポートレートはあまりに有名だ。旬な人間の旬な内部を一瞬で写しだす。
その鋭い感性とは全く別のもう一人の坂田栄一郎さんのカメラセンスの世界がある。
坂田栄一郎さんの中に生き続ける二十代の感性だ。

今時砂を被った言葉に「青春」という二文字があるが、作品の中に少年の目、少年の心、青春の脈拍がドックンドックンと聞こえてくる。「人のいないポートレート」はそこにいたであろう人々を連想させる。
ブライアン・ハイランドの「ビキニのお嬢さん」という曲が聞こえて来る。
パット・ブーンの「砂に書いたラブレター」とかビーチボーイズが。

江ノ島は江の島とか江島とも書くが、この写真展にはやはり「江ノ島」がいい。
二十代そこそこの若者たちの写真も実にいい。目が汚れなく澄んでいる。
この被写体になった若者たちは、今四十代になっていると聞いた。
優れた写真家の感性は、赤いスイカに刺さった二本の煙草も、会社員が脱いだであろう一対の革靴も冗舌に言葉を発して来る。

九月二十九日(日)迄、ぜひ観に行ってほしい。
きっと少年時代の淡い恋を思い出すはずだ。今江ノ島は夏真っ盛り。
私は休日の度自転車でクルージングをしている。
マックバーガーを食べながらサイクリングロードにいたら、いきなりトンビの野郎に持って行かれちまった。この間は崎陽軒のシュウマイ弁当だった。
トンビの狙いは油揚げだけではない。