昨夜は言葉に興奮し、言葉に酔った。
午後四時四十分、世界をぶっ壊すというキャッチフレーズの映画、「STRAIGHT OUTTA COMPTON(ストレイト・アウタ・コンプトン)」を見始める。
1986年アメリカ屈指の危険な街カルフォルニア州コンプトン、その街から生まれた五人のヒップホップグループの成功と挫折の物語だ。実話を基に作られた。
出演者は全員オーディションで選ばれたと宣伝物に書いてあった。
実は次があったので成功の部分しか観られなかった。
次とは「志の輔らくご」のチケットが奇跡的に一枚手に入ったのだ。
ラップと落語のはしごを可能にしたのは、ラップが渋谷PARCOパート3の8F、落語がその隣のPARCO劇場だったからだ。立川志の輔さんの落語はまず手に入らない。
親しくさせてもらっているPARCOの文化部長と先日会った時に、志の輔さん聞きたいなぁ〜と言ったら、一枚キャンセルが入ったと連絡してきてくれた。
ヤッホー、であった。
PARCO劇場で志の輔らくごは今年で20年目、一日三つの噺を一ヶ月続ける。
PARCOが建て直しのため今年がラストであるから、キャンセルが出るなんて奇跡なのだった。創作、古典、なんでもござれの名人だ。
ラップの最後が観れなかったが、落語の最後も聞けなかった。
仕事場に戻らねばならないことになり、残念ながらきっと日本落語史に残る感動的なラストシーンを目撃できなかった。
ラップ中退、落語中退、まるで自分の学歴のようであった(高校中退)。
黒人社会でのし上がって行くための最大の武器は才能と音楽だった。
全米興行収入驚異の3週連続No.1を記録、社会現象を起こした映画だ。
私はラップのリズムは大好きだがラップに詳しくはない。
続々と出てくる言葉は銃撃の弾だ。放送禁止用語の連発なので書けない。超重低音、スーパーウーハー、ウーハー、ウーハー、ウーハー、☓☓、☓☓、☓☓、☓☓、人種差別、反権力、ドラッグ、SEX、怒りの暴発、☓☓、☓☓、☓☓のジュータン爆撃であった。
ところ変わると、舞台に一枚の座布団、小さなマイク、空間は薄茶色のシンプルな座敷をデザイン。ラップとは違うお囃子で志の輔師匠のご登場だ。
上手い、声がいい、調子がいい、仕草がいい。本当に上手い、貫禄十分、すでに大名人だ。超満員のPARCO劇場は笑いの鳴門海峡(渦です)、私の頭の中はというと麻雀の3色状態。
ラップのビートが3分の1残っており、落語の笑いが3分の1を占め、残りの3分の1は仕事場に帰らなくちゃで、くちゃくちゃであった。
何しろ明日生きている保証がないので、見るべきもの、聞くべきものは見逃せない。
だがしかし、やっぱり中退はダメだなと思った。
何か超時空体験をしたような、四時四十分〜八時二十分であった。
ラップは今月で終わり、志の輔さんのPARCOは二十六日で終わり。
言葉というのは凄まじく、そして機知に富み、人情深い。
立川一門、円楽一門が定席寄席から追い出されて二十数年、まったく寄せやい、コチコチ頭の落語協会。