人殺しをした男がその国の紙幣になったのはこの画家しかいないはずだ。
私は最も愛するのだ。
その名はミケランジェロ・メリージ・ダ・カラヴァッジョ(1571〜1610年)何しろ人生そのものが凄い。天才と狂人は紙一重というが、その一重がなく天才と狂人は完全に合体している。ルネサンスを超えた男と言われローマ人を熱狂させた。
カラヴァッジョ以前の絵画といえば光が全面に回り美しさを強調していた。
まばゆい光ばかりで影がないのだ。美術という位だから美の術であった。
電気がなく灯りがとぼしい時代に四方八方に光りがあるのだ。
カラヴァッジョは違った。リアリズムの極みを描いた。
特に一灯のライティングのような光と闇の聖書の世界は圧倒的である。
イエスと使徒たち。
今回国立西洋美術館に初めて出品された「法悦のマグダラのマリア」は、近づく死の中で性的歓喜を表現したあらゆる芸術の中で、唯一無二の作品だと思う。
カラヴァッジョは無法者、無類の乱暴者であった。
日頃から剣を持ち歩いていた。決闘といえば聞こえがいいが、喧嘩をしては人を傷つけそして遂に人を殺す。
死刑の判決を受け逃げて逃げて逃げまくり、38才でいわば野垂れ死にする。
パトロンの枢機卿も手を焼き守りきれなかった。
超絶的リアリズムで血に塗られた聖書の世界を再現した、写真よりも忠実に。
天才と狂人の合体人を紙幣にしたイタリア人というのもスバラシイ、きっと天才のところだけを見たのだろう。流石にローマ帝国を生んだ国であり、芸術を認めたローマ人である。六月十二日まで国立西洋美術館で日伊国交樹立150周年記念として開催中。
上野精養軒で名物ハヤシライスかデミグラスハンバーグを食べた後に美人か美男と一緒にぜひ。デミグラスソースは上野精養軒が発祥とか。