なんとなく人を殺したかった。人を殺して人間の中を見たかった。
大人をボコボコにしたかった。もっと大きなものを盗んでみたかった。
放火をしたかった。
自分で自分が制御できない、突然キレると手に負えない。
この頃少年少女のおぞましい事件が起きている。
まさかウチの子が、まさかあんな裕福な家の子が、社会全体の想像を超える猟奇的事件や残虐な事件が起きている。
十歳から十五歳位の犯罪の原因は何か、世界中の精神科医たちは人の心に潜む闇を探し続けていた。
少年少女の犯罪の裏に親自身のトラウマがあることを見つけだした。
かつて“父原病”とか“母原病”と呼ばれた。
子どもへの過重な期待、自らが手に出来なかったことを子に求める過度の愛情、強い叱責、しつけという名のネグレスト。また貧困が生むこの物欲しさ。
その夜見たドキュメント番組は初めて医療少年院にカメラを入れて本人に取材した。
またその子の親自身の抱えて来たトラウマを導き出すことを試みた。
私の自論である非行は突然始まらない、非行の裏にきっと顔や教師や大人たちの無神経な行為や無関心がある。小さな憎悪は少しずつ沈殿しやがて一気に暴発する。
そして大人たちは子どもを頭がオカシイ子にしてしまう。
協調性がないとか、不器用とか、認知力に欠けるとか、勉強ができないとかを全て子どものせいにしてしまう。
世界の精神医学界は「自閉症スペクトラム」という病名に統一して、子どもたちに手を差し伸べ始めた。まだ初めの一歩である。親のカウンセリングを始めた。
異常に潔癖な親、異常に叱責する親、異常に暴力を振るう親、異常に愛情を持つ親。
子どもの異常の隠に親のトラウマがあることにやっと気付いたのだ。
親が治らなければ子は治せない。勿論教師をはじめ他の大人たちのトラウマもある。
その上ネット上では異常な映像が何でも見ることができる。
子は悩んでいるのではなく、「自閉症スペクトラム」という病気に苦しんでいるのだ。
マザコン、ファザコン、ロリコン、異常な動物愛。これらは大人も子どもも病気なのだ。
現在35人学級で約3人位はこの「自閉症スペクトラム」の子どもがいると推察されている。ということは親も同数いることとなる。
そのドキュメント番組は、あの「羊たちの沈黙」という映画より恐いものであった。
子は親を選べない。子を叱責する前に親がまず自分を知ることが大切なのだ。
私にも年頃の孫がいる。深く深く考えさせられた。