私は公園にある「すべり台」である。長い長い間いろんな幼児や少年少女を乗せて来た。とってもかわいい女の子、とっても乱暴な男の子、とっても臆病で泣き虫の子、みんな、みんな私すべり台の上では、正直で素直で、必死で勇気があった。ご両親やご近所の人々、保育園の先生などの言うことをちゃんと守っていた。だがしかし、運命とか宿命は幼い子たちに襲いかかる。年を経て、いちばん静かな子は、殺人者になり、いちばんかわいかった子は風俗に身を落とし、いちばん運動神経のよかった子はホストになり、いちばん臆病だった子は冒険家になり、昆虫大好きだった子は市役所の駆除係となり、いちばん勉強できた子は引きこもり、いちばん地味だった子が政治家になっている。みんながあこがれた女の子は見る影もなく、月に一度韓国に行って整形をする。美人じゃないと言われた女の子は、有名な役者になっている。人一倍元気だった子は、事故で片足となりパラリンピックの選手となった。カラスの攻撃を受けてギャーギャー泣いた子が、暴力団の組長になっている。私すべり台は、そんな物語を見て来た。一流大学の教授になったり、弁護士や検事もいる。嘘つきで有名だった子は、大会社のトップになっている。私はすべり台だから、すべり落ちる人間をよく知っている。いちばん成功したのは、いちばんバカだった人、何でもバカみたいに一途になった人。長い人生は私すべり台と同じで、すべらない人はいない。落ちた先の砂場で泣きわめくか、よし、もう一度すべり台をはい上って行くかだ。
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