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2019年12月19日木曜日

「一握の砂」

昨日午後、新装になった日比谷東京會舘で行われる、パーティへのポスターパネルを届けた後、数寄屋橋から銀座四丁目へ向かって、テクテク、トボトボ、キョロキョロしながら歩いた。キョロキョロしたのは数寄屋橋公園であった。年末恒例の10億円が当たる、宝くじの行列の長さにであった。TVCMで鶴瓶師匠が、買わないという選択肢はないやろ! と言う。その影響が大きかったのか、それとも宝くじマニアか、一度当たるまで買い続けるイズムの人々か、そこに行列があるから並んでみっか的な人か、年末恒例の行事を大切にしている人々派であったのだろう。長い長い行列であった。人々は静かに列を作る。日本人はルールを守る。会話などを交わす人はいない。この列は何かに近いと思った。キリストを題材にした映画の中で見るシーンだ。信じるものは救われる、そう教える主キリストの後に生み出された人々の行列である。あるいは聖パウロの後に続く行列。誰か知っている人がいるかもと、キョロキョロとしたが、いたからといって、なんと声をかけるのか、と思いキョロキョロをやめて、歩く速度を速めた。主よ行列の中から10億円を与え給えと念じた。昨日寒風なく、冷気もなく、冬でもない、オーバーコートは着ていない。変てこな12月の陽気だ。の世は、変てこだらけでこの先を知ろうとすれば、キョロキョロと鋭くなければならないのだが、どうもそうはいかない。52歳で現旭化成の社長となり、会長となり、82歳でこの世を去るまで30年間経営をして、中興の祖となった宮崎輝が、夢を持たない会社はイケマセン、進歩も成長もない。庭の盆栽みたいになって枯れてしまう。こんな言葉を何かで読んだ記憶がある(確かでない)。ダボハゼ経営という、変てこな方法論であった。韓国の現代自動車が遂に世界ラリー選手権でトヨタを負かした。日本人学生の読解力は中国にまったく及ばない。女性の進出率は世界で121位という、まるで封建時代以下。国の借金は第二次世界大戦時を凌ぐ数字だ。みんな懸命に働いているのに、「わが暮らし楽にならざり、じっと手を見る」。日々貧しく借金魔といわれた石川啄木と同じ状態が、国全体となっている。それなのに大企業は税金を払わず、4百50兆円以上貯め込んでいる。日本をアメリカ的にするんだと、竹中平蔵という学者の教えに従い、完全に変てこになってしまった。日本人にビジネスライクは合わない。アメリカンドリームは移民の国であったからだ。単一民族国家でずっと来た島国日本には、ささやかな夢を一つひとつ、みんなで叶えるのが向いている。みんなで、私はこの単純な四文字がこれからのキーワードになると思う。石川啄木は亡き父の座右の書であった。アホな私も詩集「一握の砂」は大切にしている。
                               (文中敬称略) 


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