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2023年2月18日土曜日

つれづれ雑草「パタゴニア」

こんな歌があった。♪~ もずが枯木で ないている おいらはワラを たたいてる わたびき車は おばあさん コットン水車も まわってる みんな去年と 同じだよ けれども たんねえ もんがある 兄(あん)さの薪わる 音がねえ バッサリ薪わる 音がねえ……。百舌(もず)という鳥は獲ってきた生き物を木の枝に刺しておくという。この習性を“モズのはやにえ”というらしい。「もずが枯れ木で」は、サトウハチローの詩「百舌よ泣くな」を原詩にした歌。兄さは戦争に連れて行かれて死んだのか、それとも病気とか事故だろうか。少年の頃よく口ずさんだ気がする。淋しい歌だが、田舎の風景が見えてくる。画家「向井潤吉」が生涯描きつづけた、田舎の絵。昨年未心を鬼にして“本などを処分”したが、向井潤吉の画集は処分できなかった。“百舌”という鳥はモズ科の留鳥と辞典にある。何故獲ってきた蛙などの小動物をすぐ食べずに、枝に刺して飛び立って行くのだろうか。残忍な鳥なのか、それとも慈悲深い鳥なのか。私は“百舌”という字を見ると、自分が喰うためにやってきた仕事の所業を感じる。人は広告のことをこう言う。“どうせ広告のことだから、誇大広告ばかり”だと。私は百はおろか、千も万もどうせ広告だからを、舌先三寸で語ってきた。そんな気がしている。時々、夢とかロマンを語れる仕事があると、心の中に“少年の風”を呼び起こした。馬とび、竹馬、ベーゴマ、メンコ、型抜き、柿ドロボー、たき火でやきいも、やきぐり、ゴロベースの野球、水門のある川での水泳、戦争の時米軍の爆弾で生まれた池での魚釣り、運動会、初恋。貧しいながらも明るく、兄姉六人同じ蚊帳の中で寝た。だがしかし月日とは残酷なもので、“みんな去年と 同じだよ”とはいかない。同じ母親の子宮の中で育って、同じ母親の乳を吸って育った兄姉も、他人よりも他人となってしまう。“兄弟は他人の始まり”というが、古(いにしえ)の頃よりそうであったのだろう。「血は血でしかあらがえない」とシェークスピアの悲劇は語る。“人類は皆兄弟”と言ったのは右翼の巨頭笹川良一であったが、これは孔子の言葉の引用だろうか。また、キリストの教義にも同様の思想があるらしい。私と思想は違うのだが、たった一つの太陽と、たった一つのお月さんのおかげで、人類80億人近くが地球上の兄弟として生きている。地球は母の子宮と同じである。だがトルコ、シリアの大地震。ロシアとウクライナの戦争、それにより大儲けする、アメリカ、中国、イギリス、フランス、ドイツ、北朝鮮、そして日本のウス汚れた政治家と、軍需産業。地球レベルで、兄弟は他人の始まりとなっている。地球全体がギリシャ悲劇の中にいる。アフリカから出発した人類の旅(グレート・ジャーニー)は、やがて四方八方に広がり、交配に交配を重ねて、異なる人種と言語を生み、現在二百数十ヵ国となっている。その歴史は血で血を洗う、戦争という殺人の歴史である。つまり地球人という死刑囚なのだ。日本には現在確定死刑囚は106名(二ヶ月前)、令和になって死刑を執行されたのは全七名である。何故か政治家はいない。地球が天罰によって裁かれる日は近い気がする。犯罪人地球人よ、地球を殺した罪に情状酌量の余地なし。よって死刑に処す。しかしこんな地球人がいることを知ると、実に爽快な気分になる。「死んだ星(地球のこと)では何もできない」アメリカのアウトドア用品の大手、パタゴニア創業者の、「イボン・シュイナード」さん(八四)は、気候変動への危機感をずっと語りつづけてきた。そして会社の利益を環境保護に充てる仕組みを考えてきた。そして資産三十億ドル(約三千九百億円)の持ち株を手放して寄付をした。アメリカの環境保護運動家「デビッド・ブラウアー」が「死んだ惑星でビジネスは生まれない」と言ったように。イボンさんは中古の日本車に乗って出社する。感謝祭翌日の大規模セール「ブラックフライデー」で、“このジャケットを買わないで”という広告を出した。衣料品の会社にできる最も責任ある行動は、服を長持ちさせること。買う前に考えてみてください。そういうことなのだ。ユニクロの創業者にこの精神はあるのだろうか。大量に作って、大量に放棄する。やがて天罰が下るだろう。先日銀座シネスィッチで、「土を喰らう十二ヵ月」を観た。観客は私を入れて八人のみであった。携帯とか、パソコンとか、テレビのない生活風景の映画は、向井潤吉の絵画のようであった。文明人は結局お百姓さんに勝つことはできない。動物が植物に勝てないように。百舌は出てこなかったが、いろんな生き物たちが生きていることを楽しんでいた。私が通った小学校は東京都杉並区沓掛町にあった。学校の周辺には坂があり、林があり、畑があり、水門があり、爆弾池があり、高射砲の陣地の跡があった。初恋の思い出もある。昨夜グラフィックデザイン界の大巨匠「井上嗣也」さんと、その高弟子「稲垣純」さん、兄弟分と4人で、井上さんの最新作の本の出版祝いをした。3万点の中から選び抜かれた、中国人写真家の作品集は、圧倒的にすばらしいものである。昭和の日本のような写真に、沓掛小学校に通っていた自分の姿を見た。リトルモア社から刊行されている。今年もNo.1になると思う。本の題名は「Chaos Wing Shyo  Tsuguya Inoue」(文中敬称略)



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