とある男と、とある事で、とあるホテルのカフェラウンジで会った。五月十七日の水曜日、午後一時頃となると、広いラウンジは、オバさんたちでいっぱいである。とある話をするには、前後左右とにかくウルサイ。オバさんたちは、大声で話し、大声で笑う。マスクはしていない。開放感100%である。“ウルセイゾババァ”と心の中で思っているのは決して私だけではない。とある男は久々に会ったのだが、相変わらずオシャレであった。全体を黒でコーディネイトしていた。とある男と私はレトルトカレー10個分の値段のカレーライスを頼む。ドリンクのサービスがついているとのメニューを見て、アイスコーヒーをオーダーする。(食後に)とあるホテルはかなり有名だが、カレーライスは中村屋のレトルトカレー(中辛)のほうがずっとおいしかった。とある男との話に夢中になって、サラダを食べるのを忘れていた。オバさんたちの中にいる二人怪しい男は、とある芸能関係者とか、とある組関係者と思われていたかもしれない。とある男は先進のコミュニケーションの会社を経営している。ケチでチンケな男と違って、ずっとむかしから、仁と義を重んじている。かつて私の会社にて活躍してくれていた。私は、黒にグレーの文字が入ったパーカーを着ていた。外からは見えないが、腰にはぶ厚い腰痛バンドをしていた。舞台裏はすっかりジジイなのだ。とあるホテルのカレーライスは、CoCo壱番屋程度である。二十三、四歳の小柄な若いウエイトレスが、アイスコーヒーを持って来てくれた。顔にマスクはしていないが、両手には白い手袋をしていた。白い手袋で出されるアイスコーヒーは、劇薬のように感じた。私はマスクは外しているのに手袋はしているの、と言うとホントにかわいい顔をしていて、ハイと言った。彼氏と手を握るときは手袋を取るのと聞いたら、ハイ取りますと言った。とある男と私は、いいネ若い人はと言った。私の右斜め前に、六十代位の二人の男性がパスタを箸で食べていた。かなりつまんない顔をしていた。パスタと箸はイタリアへの侮辱だと思っている。寿司をナイフとフォークでみたいだ。やけにマッポ(警官)が多いなと思ったら、そうかサミット前であった。私たちのような業界の人間は職質を受けやすい。みんなトッポイかっこうをして、大きな鞄や袋を持っている。仕事で使うカッターなども持っている。G7サミットといっても、ルーズベルトやチャーチル、ドゴール、ヒトラーやムッソリーニに比べると、スケールが小さい。敵対する中国習近平に比べると、一軍と二軍位の差を感じる。我が国の岸田文雄プライムミニスターは、会社の接待部長みたいのように笑顔をふるまって、コマゴマ動いている。我々ビンボー人には関係なく、株価が高騰している。世界が日本を買い占めるのだ。ガラクタの兵器を増税によって買わされるのだ。とある男は、むかし懐かし、“鍋屋横丁”の和菓子の名品を持って来てくれた。中野坂上に住んでいる頃、自転車でナベヨコ(鍋屋横丁)にあった、小さな映画館によく行ったのだ。“横丁”なんていう言葉はすっかり消えてしまった。とある男との、とある話は、いずれ正体を現わす。正体といえば人はそれぞれ人には言えない、見せられない、とあるものを持っている。それは宿命であったり、運命であったり、宿痾や業(カルマ)である。とある歌舞伎役者は、天才的な才能と共に数多くの“とあること”を背負いつづけて生きて来た。それは死ぬほど辛いことであったのだろう。人間の心の闇は出口のないトンネルのようである。才能は凶器と同じで、磨けば磨くほど切れ味は鋭くなる。「子曰く逃げるが勝ち」と言う。とある趣味とか、とある愛人とか、とある過去は、誰れにでも少なからずある。はじめは処女の如く、あとは脱兎の如く逃げるのだ。誰れもいない荒野を裸足で走りつづけるのだ。“死んでやりなおせるものはない”生きて地獄の苦しみに耐える者にのみ、救いの手がさしのばされる。とある話をしている裏でG7サミットは、世界を軍拡への道へとひた走っている。ドサクサの中で日本では増税による軍拡予算が衆議院を通過した。軍需産業関係の株価はうなぎのぼりだ。核大国中国、インド、パキスタン、この三国を相手にG7は勝つことはできない。世界史の中で最も性悪の海賊国家、大英帝国の形を見ると、バリウム検査の時、胃の中に広がる黒い影とそっくりであった。とある話は純粋な青春の話だ。とある男とは、又なと手を振って別れた。鍋屋横丁の和菓子は格別にウマイ! それにしてもオバサンたちはウルサイ。人の命さえ奪ってしまう。(文中敬称略)
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