ボカシとは何か。ボカスとは違う、ボカスには主体的意思を感じるがボカシは何となく曖昧模糊だ。話をボカシ、売上げをボカシ、交際をボカシ、仲違いをボカシ、陰部をボカシ続ける。
ちょっと何でこんな話になったの?全然最初の話と違うじゃない。え、どうなの?え~、あの~、まぁ~と表情をボカシ出す。ボカスのだったらボカボカにするがボカシは中々手強い。すいません、あの~、本当すいません。
え~っと、なんだいハッキリしろっていうんだよ!何でこうなるの?何でそういう不真面目、不誠実、不見識、訳判んねえな君みたいな人。何かボカシの入ったヌード写真みたいじゃないかい、えっ、私はヌードなんかなりませんよ。当たり前だよ、君のヌード見てどうすんだよ。変な例えは止めて下さい、プライド傷つきますから。よく言うよ何がプライドだよ、嘘ばかり嘘八百八橋じゃないか、俺は嘘は大嫌いなんだよ。プライドなんていうのはちゃんと約束を守る人間が持つものなのだよ。君は何で人の目を見て話をしないの、どうして目がキョロキョロ動くの?駄目だよ人と話す時は目を泳がしちゃ。君のやっている事は刑務所の塀を上を歩いてんだよ、判る?俺が訴えたら御用だよ、そうするか?止めて下さいお願いします。じゃどうすんのみんなに迷惑かけてんだよ。えっどうするの。あの~、え~と、別にボカシてる訳じゃないんですが、あの~、顔中汗だらけ汗中顔だらけ、ちょっとおしぼり持って来てやってくれる、こいつ駄目だわ全然。信用できないボカシ話はここでお終いにする。
ある日、元小学館の少女コミックの編集長、業界では名の知れた男との会話です。こういう男は一歩外に出ると、何言ってやがんでバカヤローと空缶なんか蹴っ飛ばすんです。オイッそこの表現はボカスんだぞ、何ていうとジャーナリストの上に立っている感じですが、オイッそこのとこボカシ入れろなんていうと途端にポルノ雑誌ぽくなるんです。
ある日、キミ本当は彼氏いるんだろ、いや~だいな~い、全然。話ボカシてばかりじゃないか。だって、私、いや~だ何言ってんの。
銀座東映の側にガラス張りの喫茶店の中、私は映画が始まるまで少し時間があるのでコーヒーを飲んでました。目の前の映画の内容より、耳側の話の方が面白いのです。明らかに入れ込んで買い込んでいる片思い男と、明らかに誘い込んで買わせている女。相方三十前後、男は自営業風、女は半堅気風。雪ん子みたいな茶色のブーツがやけに目立つ。12月24日男はプレゼントを渡そうとしています。小さなグッチの箱にリボン付き、中は何でしょうかなり興味あるな、ちょっと中は何って聞いてみようか。連れがプライバシーはボカシた方がいいのよだって、つまんないな。あの雪ん子、君に気がないよ全然。スレッカラシだよ話ボカシまくりじゃないって言ってやらないとプレゼントでカード地獄かもよ、と言っていたらとんでもない事が起きました。
シツコイ人嫌い、もうこんな事しないでと言って男に水をぶっかけて立ち上がったのです。雪ん子恐し、哀れ小太りの男の眼鏡はかなりのボカシがはいってしまいました。