○山□子さん、ファ~イ。こっち来てお洋服を脱いでこの服に着替えて下さい。
ファイ、ファイ、まず身長を測りましょうね、ここに乗って顎を引いて背中を真っ直ぐにして下さい。
アラッこの間より1.5cm縮まりましたね。アラ、そうですか何ででしょうかね。後、胸のレントゲンと血液検査をしますからね。
もうお判りですね、この日は老人検診の日。病院の待合室は65歳以上から90歳位の老人で一杯です。調子が悪い友人の為に、院長先生に大学病院への紹介を頼みに来たのです。院長室の入り口のレザー張りの長椅子に座って居ました。
おばあちゃん幾つと聞くと、アタシわ84歳ですと○山□子さんはお応えになりました。ヘェ~それでも検診するんだ、おばあちゃん幾つまで長生きしたいのと尋ねると嫌な顔もせずに死ぬまで生きていたいの、美味しいもの食べたいのよワッハハハ。おじいちゃんは七年前に死にました、コロッとね。ワッハハハ。毎年やってるの?そうですよ、あそこにいる人たちはお友達、ここで会えるのが楽しみでね。あの人は高血圧と痛風と酷い耳鳴り、あの人はリウマチとアトピー、あの人は坐骨神経痛と高血圧と高血糖、あの人はこの間大腸癌を切ったのよ、あの人は胃と腸を何しろ一人暮らし、あの人は可哀相な人でね、ハイ、レントゲン室入って下さい。ファイ、ファイと。
ここで○山□子さんはレントゲン室へ。先生の声、ハイ大きく息を吸って、ハイ吐いてぇ~、そう上手いですよ直ぐ終わりますからね。
一月一日元気であれば○山□子さんはめでたく一歳年を重ねたはずです。
病院の待合室は家庭の医学書一冊分の患者さんが来る所です。この人たちはほぼ皆お正月寒川神社に行って、無病息災、八方除、火災難除、家内安全、旅行安全、病気平癒、交通安全、孫やひ孫の受験の合格祈願等をお賽銭100円でお願いするのです。
おばあちゃん、おじいちゃんがのんびり猫を膝の上に乗せてミカンなんか食べている写真は一家の財産です。お正月はお餅を喉に詰まらせるのが多いのです。気をつけて下さい。
○山□子さんは身長が1.5センチ伸びます様になんてお願いするかもしれませんね。
昔はいいおばあちゃんやおじいちゃん役者がいました。浪花千栄子さん、北林谷栄さん、笠智衆さん、浦辺粂子さん、三益愛子さん、伊藤雄之助さん、森川信さんはフーテンの寅の初代おいちゃん、バカダネーの一言が何とも味がありました。
この頃いい老人役者がいませんね。どうしてでしょうか。あっ、ひとつ思い出しました。病院の待合室で隣のおじいちゃんに余計な事を言ってしまいました。おじいちゃん、人間金持ちも貧乏も死んだらみんな白い骨と灰。どんなにお金を持っていても金色の骨と灰にはならないからね、死は平等だからと。
おじいちゃんはゴルゴ13を読んでいました。ゴルゴみたいな怖い顔で睨み付けられました。そのおじいちゃんは近所でも有名なお金持ちです。
1 件のコメント:
今回は病院のお話しですね。病院嫌いの東本さんには珍しいですね。失礼しました。。笑
コメントを投稿