映画界の栄誉ブルーリボン賞が先日発表となった。
どの作品にも、どの役者さんにも敬意を表したいが、アカデミー賞の作品群と比べるとやはり現在の日本映画界の低迷を感じずにはいられない。
100歳目前の新藤兼人監督は私の最も尊敬している人だ。
「裸の島」「鬼婆」等は圧倒的作品だ。ブルーリボン監督賞の「一枚のハガキ」本人自身がきっと、この100歳の俺がなんでだと思っているのではと思う。
新藤兼人への敬意の形としたらそれは誤りだと思う。
新藤兼人は日本の映画界にしっかりせよと怒っているのだ。
竹野内豊の主演男優賞は「太平洋の奇跡」という作品。
一枚の赤紙で戦争に行かされた人の運命と過酷な戦場で部下の命を守ろうとした一人の指揮官の話だ。
何かこの頃戦争へのきな臭さがぷんぷんとする。
何で中学生に武道を必須とするのだろうか。
伊勢谷友介の助演男優賞は本物のボクサー以上の減量苦へのご褒美といえる。
彼は芸大出身であり様々な廃材を使い家具などを造りその売上をボランティアに使っているという。
かなり見上げた役者といえる。
その昔役者馬鹿という愛してやまない人たちがいた。
飲み、打ち、買うを徹底的に行わない、やがてスッテンテンのスッカラカンになってしまうのだ。
すっかり役者馬鹿がいなくなった。
敬愛していた原田芳雄さんが最後に遺した「大鹿村騒動記」はとても良かった。
そして原田芳雄さんは皆に愛されながらあの世へ逝った。松田優作と再会して一杯飲んでいるだろう。
作品賞は園子温監督の「冷たい熱帯魚」であった。“でんでん”の凄い、恐い演技は特筆ものであった。
園子温は人の目を見てしゃべらない、酒が入らないとしゃべれないという。人間の裏側を全身に染み込ませた様な園子温監督がこの頃一人勝ちだ。余程母親へのトラウマがあるのだろうか、女性への疑いがあるのだろうか。
私は今短編前3作の手直しと、新作一本を作りたいと思いバカバカしい止めとけという声と戦っている。
バカは死んでも治らない。