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2018年2月19日月曜日

「男の嫉妬」

この歌を知っている人は、相当に歌謡曲に詳しい。
♪勤王佐幕揺れ動く 空に火を吹く桜島 今に見ていろ イモ侍が……。新川二郎(生死不明)が唄った歌(題名が思い出せない)だ。イモ侍とは薩摩イモを食って育った侍のこと。
歌の主人公は、中村半次郎のちの陸軍少将桐野利秋である。
明治維新(あるいは明治革命)150年を迎えるにあたり、書店もテレビも、明治維新ブームである。書店にはズラリ、ズラズラ西郷隆盛の本が並ぶ。
又、その関係本が並ぶ。私はずっとこんな自論を亡き友と語り合って来た。
明治維新はホモセクショナル的愛情と、憎悪、そして男の嫉妬が生んだと。
佐賀に生まれた「葉隠」の思想と、中国の思想家「王陽明」が生んだ”陽明学”がそのもとである。陽明学とは思想と行動の一体にある。
この思想は男社会にありえる。
葉隠は男子たる者は、朝起きたらその日死ぬことを覚悟せよ、そのために朝カラダを清め、日々洗ったものを身につける。
髪の乱れなども許さないほど美意識を大切にした。
死んだ時のことを思ってのことであった。陽明学は吉田松陰たちを動かした。
高杉晋作、木戸考充たちもその中から生まれた。
薩摩藩には郷中教育という独特の地域教育制度があった。
その中のリーダーが西郷隆盛であり、イモを食った仲が、大久保利通である。
その独特な関係は、親の血を引く兄弟よりも、固い契りの義兄弟というヤクザ者の結束と同じくする。
新選組の近藤勇と土方歳三たちも近い。(思想はなかったが)
三島由紀夫の”楯の会”などは、その典型であろう。男と男の結束は何を生むか、それはある意味男と女の愛情を超えた、ホモセクシャル的なものである。
イモ侍の中に人斬り半次郎と言われた中村半次郎がいた。
後に陸軍少将となり西南戦争を起こす。
又、別府晋介、辺見十太郎とか西郷隆盛大好き人間たちが集結する。郷中教育の中の大好きな兄貴分西郷を、大久保利通は誰よりも愛していたはずだ。
維新を成し遂げたのは西郷と自分だと思っていた。
男の嫉妬は女性のそれよりはるかに恐い。
(近親憎悪)その嫉妬心がやがて西南戦争を生み、(大久保の策略で)西郷大好き結束団を滅ぼした。
桐野自身が西郷を撃ったという説もある。
西郷どんは、誰にも渡さない、オイのもんだと。明治維新ほど男と男の愛情が絡み合った出来事はないだろう。そして公家たちの保身。そのためには、裏切り、寝返りなんでも有り。
岩倉具視は陰謀政治の原型を生んだ。
親分のためなら命を捨てる。兄貴分のためなら命はいらない。
男と男の社会は世界史、日本史の中であらゆる戦争の大因なのである。
その巨大な典型が、ナチスドイツである。陽明学は現在も脈々と生きている。思想とは行動であるとして。
ところで新川二郎の歌の題名は(?)生きていればと願う。
男と女は結合しても、決して結束はしない。
いかなる手段を持ってしても、男が女に勝つことがないのは、男は結束を求めすぎるからだろう。結束は嫉妬によって粉々に碎け散る。週末「流罪の日本史」というのを読んだ。
島流しはどう生まれたか。これから世の会社は人事の季節。思わぬ人が思いもよらぬ所に島流し(左遷)となる。その秘めたる原因が、男の嫉妬にあるのは言うまでもない。
渡邊大門著「流罪の日本史」ちくま新書860円+税。
そう言えば「愛の流行地」なるスケベな男と女の本があった。
渡邊淳一先生の大ベストセラーだった。
ふと思った司馬遼太郎の中にホモセクショナル的なものが色濃くあるのを。
大先生がこよなく愛した小説の主人公たちは、男と男、そして結束と美しき滅びであった。
何もかも自論であり推論である。(文中敬称略)



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