吉村喜彦、有美子さんという素敵な夫婦がいる。
ハートビートのロックンローラのパッションと、ファンキーなサウンドを身にまとった実に仲良い夫婦である。
吉村喜彦さんは京都大学を出てサントリーの宣伝部に入った。
3200倍の超狭き門であったとか。
人気の宣伝部には吉村喜彦さん一人しか配属されなかった。
現在は奥さんがプロデューサーで、吉村喜彦さんが小説家だ。
既に何冊も出版している。
また現在NHK FMで「音楽遊覧飛行〜食と音楽でめぐる地球の旅〜」の構成・選曲・ナビゲーターをつとめている。
17年間サントリーにいて退社後、17年間小説家を営んでいる。
サントリー時代には幾多の名作CMや名作広告を世に出し、あらゆる広告賞を得た。
そんな吉村喜彦さんがサントリーウイスキー作りの「ウソ」を許しがたき、愛する会社のためならずと、世に放出し、広島支社のビール販売に放出される。
だが、持ち前のガッツと正義感と酒を飲み乱れまくる事を味方にし、営業成績をあげる。
そして再び不可能といわれた宣伝部復帰を果たす。
お前帰って来いという良き先輩上司がいたのだ。
そのエピソードなどを、フィクション仕立てにして2014年5月8日「ウィスキー・ボーイ」をPHP文芸文庫から出した。初版が16000部というから人気なのだ。
前作に「ビア・ボーイ」がある。サントリーオールドは単一ブランドで世界一であった。
最盛期には1300万ケース位を売っていた。だが今はその10分の1位ではないだろうか。
なぜそうなったかの話が「ウィスキー・ボーイ」の中に書いてある。
勿論フィクションなので名前は違う。登場人物も違う。
サントリー関係者ならあの人だ、あいつだ、あのヤローだと想像はつくはずだ。
5月9日サントリーに縁の深い巨匠や、友人と京橋の焼鳥店で出版祝いをした。
オレついにサントリー全社員、全OBたちを敵に回しましたよと吉村喜彦さんは言った。
どうやら奥さんも筋金入りの戦友だ。
通称“ヨシヤン”は現在60歳。
いただいた本には「衆妙の門は玄なり」とサインしてあった。
その意味は、宇宙の中心は暗黒なのです。そうしてウィスキーは闇の子どもたち。
その闇は鮮やかな生命をもつ、光輝く闇なのです。と、まあそういうことであった。
この「ウィスキー・ボーイ」の一冊の中には会社という入れ物、その中で生きる麦芽の一粒一粒、トウモロコシの一粒一粒のような人間たちの生き様がある。
ウィスキーは元々ビールから生まれた。
アイルランドのケルト人たちは税金逃れのためにそれを木の樽に入れて隠した。
それが月日を経て開けてびっくり、琥珀色のウィスキーとなっていた。
夫婦で正義のためにケツをまくる方策を練るところは実に爽快であった。
サントリーはそのおかげか、現在「山崎」とか「響」とか「白州」というウィスキーの名品を世に送り出している。
歴史の影には必ず「闇」があるものなのだ。