先日友人との会話の中でホッとしたというか、さすがというか、うれしい話を聞いた。
ホテルオークラの本館が解体され新装される話を聞いていた。
オークラの本館ロビーは私が大好きな空間である。
壊されたら嫌だなと思っていた。
大事な人と待ち合わせしたり、一人で静かにしたい時はずっとむかしからオークラのロビーを利用していた。そのロビーが高名な建築家の設計によって残されるというのだ。
そうか、あーよかった。
この頃のホテルロビーはまるで駅舎の待合所みたいでウルサイ、オチツカナイ、ダラシナイ。オークラのロビーは「和」があり「調」があり「光」がある。
好んで使ったオーキッドバーのカウンターの木が外国人によって持っていかれるのを聞いて少しガッカリした。
東京はビルの解体ラッシュだ。人間の体でいえばボロボロになった体の作り直しだ。
再生してくれる建築家の人間的センスが強く求められる。
医が仁術なら建築も仁術だと思っている。残す勇気は武士の情のようであり、一木一草を残す「雅の心」でもある。いい話を聞いた日の酒は格別であった。
オークラのロビーに入場料はいらない。無料である。
京都の世界遺産、下鴨神社の敷地内(駐車場)になんとマンションを建てるという話には耳をふさぎたくなった。その理由は下鴨神社は式年遷宮のために莫大なお金がかかる、その費用を生むためにマンションから収入を得るというのだ。
世界遺産とはを考えさせられた。日本は文化後進国なのだ。