空は青々として雲白く、太陽はノー天気にギンギラしている。
夏雲は岩の如くという。銀座の街を歩く頭上に猛暑がある。
まっすぐ歩いているようだが実はユレユレしているのに気がつく。
今年も猛暑の中、和光の前に一人の雲水がいた。
ピクリともせず、静止している。その横をゆかたを着た若い女性が二人通り過ぎた。
そうか今日は七夕なのだと気がついた。
ゆかた姿が少ないことにも気がついた。街にも風情がない。
去年の夏、ゆかたに下駄履きの女性とやきとりを食べた日を思い出した。
♪〜浴衣のきみは 尾花(すすき)の簪(かんざし) 熱燗徳利の首つまんで もういっぱいいかがなんて…吉田拓郎の曲を思い出した。
目の前は山野楽器であった。
イジメっ子みたいな人にイジメられていないだろうかと思った。
少年の頃夏祭りでゆかたを着ていた同じ学校の男と女の子が、イジメっ子たちにイジメられているのを見て、イジメっ子たちをイジメてやった。二日間留置された。
女の子は白い綿菓子を持っていた。
例年なら平塚の七夕さんに行くゆかた姿が、今年はめっきり少ないと思った。
辻堂駅にはチラホラであった。日本の三大七夕といえば、仙台、阿佐ヶ谷、平塚。
ある年平塚の暴力団がドンパチをやったのが平塚の七夕さんにも影響したらしい。
私の体のメンテナンスをしてくれている鍼灸の達人が平塚に住んでいるのだが、やはりあの事件以来平塚の繁華街は勢いを失っていったという。
また長引く不況の影響もあるのだろう。
昨夜お世話になっている社長さんが銀座の仕事場に来てくれた。
あ〜嫌だ嫌だと言って入って来た。
世の中にイジメられているような人をたくさん助けている今どき珍しい位善い人だ。
あ〜嫌だ嫌だは、映画「男はつらいよ」に出て来る寅さんのオジちゃんのセリフだ。
また妹さくらの夫が働いている零細企業の社長(通称タコ社長)のセリフでもある。
毎月資金繰りに苦しむタコ社長は、あ〜嫌だ嫌だなのだ。
山形出張からそのまま直行して来たもう一人の社長も合流した。
冷たいビールで乾杯!話はサッカーボールのように弾んだ。
頭の中にずっしりとあった岩のような雲から少し解放された。
夏なのにセミの鳴き声が一度も聞けない。選挙カーからセミのような声が聞こえた。
◯×です頑張ってます、あと一歩、あと一歩です。ウグイス嬢の声だ。