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2011年3月2日水曜日

湘南の嵐便り 「福住楼」

週末より旅友と打合せがあり箱根塔の沢の老舗旅館「福住楼」の投宿していた。

かねてより「福住楼」には一度行ってみたかった。
かつては福沢諭吉の常宿でありその後夏目漱石、島崎藤村などの文士や坂東妻三郎も常宿にしていた箱根屈指の名門である。


が、とにかく古いのである。建物は大工の技の限りを尽くし、障子、襖、壁紙に至るまで職人の技が息づいている。文化財として登録されているので簡単には直せない。
杉の太い木を輪切りににした大丸風呂は絶品である。


仲居さんにここが一番早川の流れがよく見えるという「桜一」という部屋に通された。
十畳と四畳半の化粧部屋、細工を凝らした障子を開けると見事な太い猿滑りの木、その向こうに早川の急流が逞しい川の音を生んでいる。

小窓の前に小さな文机、そこに原稿用紙と筆記具、座椅子を置くと何やら文士の姿が浮かんでくる。部屋中に隙間風が入ってくる。暖房は力強い音と振動を生むでっかいガスファンヒーターだ。浅草出身52歳という仲居さんが丁寧の上にも丁寧に対応してくれる。部屋にトイレと内風呂はない。
文士の姿が浮かんできます
何処までも明治時代なのだ。旅友と久々に文学、政治、経済、芸術、人物、未来談議をする。何しろ博覧強記の人なのですこぶる勉強になる。


次の日は雨風強く真冬模様と天気予報、来たときは小春日和であった。


品位がない今時の温泉の様に食い倒れみたいな暴力的品数がこれでもかとは出ない。
一品一品に想いが込められている、丁度いい品数であり絶品のおつけものとご飯を食べる。お銚子は二本ずつ。温泉に浸かった体にいい温度が染み込んでいる。
真心のこもった料理※HPより

このところゆっくり風呂に入る事もなく気ばかりが急いでいたのと心身がまったりぐったりし続けていたので名物杉の輪切りの大丸風呂は正に天国であった。
大丸風呂※HPより
その日は三組のお客さんが入っているとか、最近は外人さん夫婦が一日一組は来るとか。外人にとって日本家屋の体験には何よりの処である。

入口には「福住楼を守る会」の札がある。嵐山光三郎さんたちの名が連なる。
深夜岩風呂に入りに行くと、一人の白い肌の外人が女性がしなを作るポーズでお湯に浸かっている。その一物を見て巨大な白いチキータバナナの様で恐れをなした。
翌朝仲居さんからドイツ人だと聞いた。
旅友の作家、上季一郎氏
外は豪雨でありすき間風は寒いが、何かいい朝を久し振りに迎えた。
旅友は読書をしていた。投宿以来すでに三冊目だ。

1 件のコメント:

こし さんのコメント...

こんな風流な宿!!素晴らしいです。
いつか一度でも、泊まってみたいです。
できたら親を連れて・・・