ページ

2011年3月31日木曜日

湘南から喜怒哀楽 「浮雲」


何だか無性に戦後の焼け跡を舞台にした映画を観たくてビデオを借りてきた。
林芙美子原作、成瀬巳喜男監督の名作「浮雲」である。



小津安二郎が俺には絶対作れない映画が二本ある、一本は溝口健二の「祇園の三姉妹」、そしてもう一本が「浮雲」である。

高峰秀子と森雅之が主演。絶品極上の映画で痺れる。
昭和二十一年外地より引き上げて来た港の高峰秀子のシーンから始まる。
る日外地で知り合った男を渋谷区代々木上原に尋ねる。女は中野区鷺宮に住んでいた。
戦争中男は役人としてサイゴンに勤務し女はそこにタイピストとして現れる。

復興マーケットでラーメンを食べるシーン。雨が打つバラックの中でコッペパンを食べるシーン、東京ブギウギ、リンゴの唄が流れる焼け跡のマーケットのリアリティ。

初めて体を許した男との会話。再会した男のうらぶれた姿、外人兵のオンリーになった女をバラックに訪ねる男。小さなコタツ、ローソクの火、カストリ焼酎、コンビーフ、厚化粧になった女に泊まってもいいかと迫る男、何かこれからの日本と重なって来る。

何があっても必死に生き抜こうとする民衆の姿、したたかになって体を売ってでも自分を守る女。昔の女に未練がましく別れ切ない男。


今度の東北の災害も様々な人間ドラマを生み出すだろう。
例えて映画的にいえば避難場所で出会った過去を消したい男と女、自堕落な夫には無かった復興にかける力強い青年との出会い。
失った漁船への愛情を語り続ける初老の漁師とかろうじて残った小さなスナックの女との出会いと再生。

海が有る限り上には空があり雲がある。
雲には二度と同じ形はない水に常形がない様に人の一生も同じ物はない。


「無は有なり」という。「有は無」になってしまうが無は無限の力を持っている。
一本のローソク、一台のランプ、一個のドラム缶風呂、無一文という。
人間は生きる気になればどんな貧しさの中でも生きていける。

ただ人間は一つの愛がないと生きていけない。無の中に愛を見つける事を思い出そう。
心の中に復興のマーケットを作ろう。

2 件のコメント:

こし さんのコメント...

人間には一つの愛が必要ですか・・・

五つも六つもあってはダメですか?
思い返して、数えてみたら意外な数に
なりました。

こし さんのコメント...

人間には一つの愛が必要ですか・・・

五つも六つもあってはダメですか?
思い返して、数えてみたら意外な数に
なりました。