とある刑務所で二十歳の成人式があった。一人の男が仮名で語った。少年の頃から非行ばかりしていた。両親はいない。幼い頃から施設で育った。十六歳の時好きな女の子ができ一緒に暮らし始めた。日雇いのような仕事で食いつないできた。十八歳の時、籍を入れ正式に結婚した。妻のお腹の中には子が宿っていた。稼がねばならないと飲食店に店員として入った。しかしコロナ、コロナで店は開けたり閉めたりだった。そしてその店は閉めたままになった。突然言われて失業した。どこかに入らねばと焦った。いっそ半グレかヤクザ者にと思ったが、生まれて来る子の事を思うと、正業につきたかった。そんな時ある工事関係の仕事の広告が目に入り面接に行った。社長はいい人でとりあえず採用してくれた。十人位の会社だがみんないい人だった。しっかりがんばれば、正社員になり健康保険もつく、妻はよろこんだ。ある日の夜、会社でみんなと酒を飲んだ。トイレに行こうと思って事務机の横を通ると、経理の人の机の上に一万円札が見えた。酒に酔っていたが、やはり小さな頃からの悪いクセが出てしまった。一万円札は七枚あった。気がつくとポケットに入れてしまっていた。何喰わぬ顔で酒を飲んでいたら、大きな声がした。ここに置いていた金がない。先輩の男は真っ赤な顔して、お前さっきトイレに行った時、盗んだだろうと言った。盗んではないと言ったが、先輩は殴って来た。非行ばかりしていた悪いクセがここでも出て、先輩の顔や腹を何度も殴ってしまった。怪我が大きく救急車が呼ばれた。そしてパトカーも来た。手錠をかけられ連行された。結局暴行傷害罪で一年半の刑となった。妻は身重の体で近所の洋品店にパートに行っていたが、コロナでお客さんが全然来なくなって閉店して失業した。刑務所内で二十歳になった。所内の背広とネクタイ、それにYシャツ、靴下と靴を用意してくれた。講堂内には三十人近くいた。突然名を呼ばれ二十歳の夢をと言われた。緊張で何も言えなかった。早く出たいですと言ったら、みんなが笑った。こんな話の中にもコロナがある。誰れの言っている事を信じていいのかが分からない。かつての日本軍のように、命令系統がバラバラだから、尾身茂なる人間は、大好きな麻雀を徹夜でやり過ぎたのか、今頃になってステイホームなんか意味がない、“人流より人数だ”なんて言い始めた。腹を切れ、腹をと思った。テレビに出て来るのは、毎度お馴じみの医師会か医師たち、余程ヒマなのかまい日出演できる。本当に始末が悪い。政府や報道機関のいいなりだ。もうおマエ達の顔は見たくないと、声を大にして言いたい。恥を知れ恥をと言いたい。私たちのような芸を売る仕事は、いいダンナ(クライアント)からお座敷の声がかからないと、踊るに踊れない。裏社会では勝負することを“踊る”などと言う。芸人は芸で戦うしかない。小さな庭の空池に、一個100円で買って来たリンゴを4分割にして放り投げる。すぐに小さな鳥が来てリンゴをつつく。次にもう少し大きい鳥が来ると、小さな鳥は逃げる。その次にもっと大きい鳥が来ると、その鳥は逃げる。最後にもっと、もっと大きな鳥が来る。結局いちばん大きな鳥が、いちばんたくさんリンゴを食べてしまう。一般社会と同じだ。私はそっと身を隠してそんな風景を見ている。愚妻が鳥がたくさん来て、フンをいっぱいするから、リンゴをやらないでと言うが、私はフンと言って無視をしている。あと二ヶ月もすれば鳥たちはピタッと来なくなる。土に落ちたフンは土を育てる。どこぞに落ちたフンもやがて乾き、風に乗って運ばれ土を育てる。大都会にはツバメもスズメも姿がない。カラスさえも姿が少なくなった。銀座を歩いていると、あったはずの名店がいくつも店を閉めている。又、やけに貼り紙が多い。読めば殆どが、閉店をしますの予告だ。遠く離れたトンガでドカアーンと大爆発があった。夜中に映画を見ていたら、私のガラケーが、大きな音を出し津波警報を何度も出した。日本国がドーンと救援金を出すと思っていたら、出したのはわずか一億円程度だった。安倍晋三、菅義偉、二人の総理大臣がコロナ対策で、てんやわんやした。元凶は尾身茂たちのでたらめだ。このままだと岸田文雄総理も、てんやわんやになってしまう。そういえば、むかし“獅子てんや・瀬戸わんや”という漫才コンビがいたが、とても面白かった。今の政府のてんやわんやは、すこぶる面白くない。何故もっと科学的な人たちでチームをつくらないのかと思う。生物学者、人類学者、人間行動学者、考古学者、歴史学者、物理学者、民俗学者など、政府のいいなりにならない、お金を欲しがらない在野の人々を集結して、10年先、50年先、100年先までを見据えなければならない。とり急ぎ、尾身茂一派を退場させよ。マイナスオーラを発散しすぎだ。刑務所で成人式を迎え、やがて世に出る若者は、親子三人で幸せにやって行けるだろうか。私たちも今サバイバルゲームの中にいる。体が許す限り、踊るだけ、踊ってやる。(文中敬称略)
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