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2022年11月12日土曜日

つれづれ雑草「エビフライのアタマとオッポ」

暗闇の空から一人のロックンローラーが降りて来た時、ベルリンの壁は若者たちの打ち下ろすハンマーによって崩壊して行った。ロックンローラーの名は、「デヴィッド・ボウイ」であった。ソ連邦がゴルバチョフによって崩壊して行く時、一人のロックンローラーが国民の心を掴み熱狂を呼んだ。「ヴィクトル・ツォイ」という若者だった。アメリカが泥沼のベトナム戦争をしている時、戦場で戦士たちに向って、こんな戦争をいつまでするんだろうと歌った若者がいた。フォークロックの「ボブ・ディラン」だ。若者たちが求めたのは、解放であり、自由であり、戦争のむなしさであった。時代を動かして来たのはいつの世も若者であった。この国の若者も、封建体制を崩壊させ明治維新を生んだ。火炎瓶と石の塊とゲバ棒を持った数十万の若者が全国で反戦運動をし、大学教育の旧体質打破に向って行動した。それは純粋であり、不純でもあり、幼稚でもあった。がその行動が国を変え、大学を変え、国民に問題提起の一石を投じたことは確かだ。国家に利用され暴力に走ったセクトの若者たちは、総括という悲惨な結末に終った。彼等にはロックンロールがなかった。つまりメッセージがなかった。ソ連邦崩壊の時、「ツォイ」は僕たちは自由がほしいんだと歌った。自由なんてと日本人は思うだろうが、今の日本は自由ではない。不自由国家である。報道の自由度は先進国の中で下位に位置する。つまり体は自由だが、頭の中が不自由なのだ。思考回路が止まっている、救い難き政治家たちに言葉を失う。先日PARCOの文化部長だった方と昼食を共にした。中国で活躍しているすばらしい監督&写真家の人と一緒であった。元文化部長は私に紹介したかったと言ってくれたが、私ごとき者には身に余る天才だった。中国で興行収入300億位の大ヒット映画を作ったが、本人は厳しい検閲の中での作品で満足はしていなかった。中国には自由がないと言った。日本の映画界で作品を作りたいと言った。日本で映画制作の会社をやっている中国人の三十五・六歳の人が、すばらしい日本語で通訳をしてくれた。天才は小柄で寡黙だが全身から殺気を感じた。命がけなのだ。中国人から見ると、この国は自由に見えるのだと思った。値上げ、値上げでどうしようもない。税金、税金で頭に血が上る。大企業は最高益でしこたま金を貯め込む。アメリカのガラクタ兵器をゴッソリ買わされる。台湾防衛は俺たちに変ってしっかりやれよと、国防予算はガッポリだ。ある番組でこんなホホエマシイのを見た。八十五・六の老人夫婦が語る。値上げ、値上げでやってられないよ。だから風呂は二人で入るっちゃ。この間カアチャンとお風呂の中でキスしただガヨオ、オラの入れ歯が外れちまって風呂の中に沈んだわさ。ギャハッハッハッ。いいですねこんな話は。昨夜「善き生徒たち」というイタリア映画を見た。実話だ。カソリック系の学校の四人の学生が、二人の女子学生を監禁し、レイプをつづけ、スマホで写真を撮る。四人の学生の二人は今も刑に服し、一人は死亡し、一人は今も逃亡犯として国際手配されている。年頃の少子学生を持つ親の人にはぜひ見てほしい映画だ。SNSの時代は思いもよらぬ人間同士が出会い、信じられないような事件が次々と起きるのだ。私が住む家から自転車で10分位のところに、日本一のとんかつ屋さんといわれている店がある。ご主人の名が大関さんで店の名を「大関」という。間違いなく日本一だ。先日昼に行くと老婆が三人で食事をしていた。私は隣りに座った。おばあちゃんたちは八十代だろうか。体はちぢんでいるが、胃袋はふくらんでいる。食欲はすごい。一人はロースカツ定食、一人はミックスフライ定食、一人はエビフライ定食であった。キャベツ千切りが山のようについている。プラスとん汁も。私はガッツリと食べる老婆を見ていてやはり女性にはかなわないと思った。三人共きれいに食べ終えた。エビフライの人がアタマとオッポを食べ残すと、一人があなたもったいない、エビはそこがおいしいのよ、私が食べるわとバリボリと音高く食べた。とその時456歳の男が現われた。終ったの、まぁ~きれいに食べるねと苦笑しながら言った。クルマで迎えに来たのだ。私は食べている動きを止めた。私も同じことを言われたのを思い出した。そうです、私も老人なので気をつけないとマズイのです。とんかつ屋さんに行ったら、ひたすら昆虫のようにキャベツだけ食べるのです。「大関」は湘南工科大学の前にあります。いつも白い服を着たご主人は、タウン紙にエッセイなどを書くと私にそっと渡してくれます。長い付き合いなので仲良しなんです。




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