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2023年1月22日日曜日

つれづれ雑草「岡山弁では」

「木曾路はすべて山の中である」こんな書き出しの本があった。今、この世はみんな値上げの中にある。又、値上げしないが内容量を減らす中にもある。昨年末12月30日東京の多摩墓地にお墓参りに行った。くしゃみと鼻水の酷い中であった。クルマを運転してくれた息子も私と同様に酷いアレルギーであった。いつも花とお線香を買う仏花店に入った。プードル犬が三匹狂ったように吠えかかる。でも短い尾っぽをブルブルふっているのはお客が来たぞとよろこんでいたのかも知れない。私は一年に三度は必ずお墓に参る。お彼岸に一度、十一月の命日(父と母二人共十一月没)、そして一年の終り(長兄が入って三人となった)だ。お花とお線香を買う。プードルが吠える。店の女主人(五十歳位)は、西部劇の二丁拳銃のように、革のベルトにごっついハサミ入れを装着している。とにかくこの女主人の声は高くて大きい。いつもそんなにでかい声でなくても聞こえるよと言うのだが、犬の吠える声に負けないために声が大きくなってしまったのかと思う。お線香を四つ頼むと、アレッずい分と細く短くなっている。なんだか小さくなってないと言うと、判りました、実は長さを3センチ短くして、本数も少しだけ減らしたんですよと言った。アッそうなの実質値上げだね、花もワンセット1980円になっているから半年で180円値上げだねと言った。犬は吠えつづけ、女主人は声高にすいません、すいませんを連発する。バケツに水を入れ、ホウキを一本借りる。これは無料のままでいいのと、くしゃみしながら言う。もちろんタダです、タダですよと笑って言う。時々行く東京のとんかつ屋さんで、ノンアルコールビールを頼む。以前は小皿にいっぱいのグリンピースがおつまみで出たのだが、今は小さなしょうゆ皿に10粒ほどであった。黄色く着色されたたくあんが好きで以前はとんかつに五枚ついてきたが、三枚になっている。ポテトチップスは中身がかなり減り、(私はあまり食べない)亀田製菓の柿の種からピーナツの数が減ったと息子や孫たちが言う。なんだか悲しいほどセコイ世の中になっている。あれもこれも、あそこもここも、値上げ値上げに対抗策を練っている。新聞の定期購読者が急速に減っていると公表された。(日本新聞協会)5年連続200万部超減。1000万部を豪語していた読売は657万部、朝日が390万部、毎日184万部、日経164万部、産経98万部であった。全盛期のおよそ半分になっている。実際は押し紙(販売店への押し売り)があるのでこの8掛けか7掛けだとか。インターネットの台頭で新聞を読むのは老人で、若者は読まない。一月元旦新聞を広げどんな広告が出ているかを楽しみにめくる。かつて正月の広告は、私たち広告屋にとって腕の見せ所であった。五月六月頃に各メーカーの宣伝部から代理店が招集され、あのライバル会社よりいい広告を作ってほしい、で数社のコンペで決めたい。なんてオリエンがある。代理店さんから必ず勝ってくれと仕事を受ける。できることなら、広告賞を獲りたいといわれる。これに勝ち、約束通り広告賞を獲ると、その後、業界で生き残って行くためのチカラとなった。しかしここ数年、すっかり正月の新聞広告は見るべき作品がなくなった。不作つづきというか、各メーカーが新聞広告への制作予算を減らし、とりあえず出しておけばの付き合い広告ばかりとなった。SNSの時代となり、広告屋は、活躍の場をどんどんと無くした。そんな中で一社だけ気合いの入っている会社がある。一月五日今年もやっぱりやってくれた。それは「宝島社」という出版社の見開き30段というメッセージ広告だ。唯一無二の存在感だ。毎年、目を覚ましてくれる。ハイヒールを履いた“中尾ミエ”さんが怪し気なポーズをしているメインビジュアルがドーンと全面にあった。3500万人いると言われる団塊の世代に、ずっとヒール(悪役)であってくれと訴求する。ハイヒールとヒールが見事に共鳴している。どでかいキャッチフレーズの下のボディコピーは、セコイ、チンマイ、コロナでシボンでしまった世の中で、もう一度バブリーになれよと訴えているようだった。3500万人がもっと金を使えば世の中のためになるぜよと。中尾ミエさんのファッションは、バブル全盛期の姿であった。世の中減っているものばかりの中で、増えている事がある。それは通り魔的殺人、ネットで仲間を集めた強盗殺人。ネットで知り合った男と女の殺人事件。老人や女性を狙った情容赦のない殺人事件、ストーカー殺人などだ。私たちは殺意と殺意の中でからくも生きている。あした殺されるかも知れないし、あした殺人犯になっているかも知れない。13歳の少女が親を殺す時代だ。故松本清張原作で5歳の子に殺意はあるかをテーマにした映画があった。夫を亡くした女性に5歳の男の子がいた。ある日バスの中で同窓生だった男と偶然一緒になる。そして二人は接近し、男はオモチャを持ったりして、未亡人の友人宅に通いはじめる。5歳の男の子はある物を手に持って、男と女の動物的行為を感じている。(ストーリーの記憶は定かではない)映画では男役が加藤剛、女役は岩下志麻であった。題名は確か「影の車」だったと思う。ある賢者は教える。“犬には肉を与えるな、狼になるから、人には力を与えるな、獣になるから”と。今、5歳の子でもスマホを使いこなしている。きっと見てはイケナイ映像も見ている。私の生地、岡山弁ではこうゆうことを、“ボッコーキョーテイ”という。どえらく恐ろしいということである。(文中敬称略)


 


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