佐賀県鹿島は、私が大変お世話になった電鉄系大手代理店の役員だった二人の生まれた故郷だ。一人は残念ながら六十代そこそこでこの世を去ってしまった。もう一人は今も健在でずっと家族付き合いをしている。すでに七十代40年以上の仲だ。佐賀県は現在人口70万余である。龍造寺家 vs 鍋島家の内紛は歴史に名高い。騒動は鍋島が勝ち戦国時代の歴史の中で最強といわれた肥前鍋島藩となる。幕末は「薩長土肥」が手を組んで江戸幕府を倒したが、肥前佐賀は鹿児島の薩摩藩より強いといわれた。歴史家の共通見解だ。何故かといえば、鍋島藩は海外からのあらゆる知識を他より先んじて学んだ。戦争での戦略、戦術、用兵術、中でも砲術が抜きんでていた。鍋島藩は学問に投資して、専門的な人材をいち早く育てた。薩摩の西郷隆盛や大久保利通は、軍事にすぐれていたが、もっとすぐれていたのは、政治力だった。佐賀県は正義感が強いが、少々気が短い、いわゆるプッツンしやすいのだ。私はそこが好きなのだ。明治の元勲の中でいちばん頭が切れるといわれたのは、“大久保利通”だが、実は佐賀の江藤新平(初代司法卿)の方が凄い。大久保はその存在を恐れ、プッツンさせるべき手を打った。佐賀の乱である。この乱がやがて西南戦争への引き金となる。乱に敗れた江藤新平は逃げて鹿児島の西郷を頼ったが、政治家西郷は江藤新平を受け入れなかった。やがて江藤新平は捕えられ首を落とされた。私の友人はフツーに大人しいのだが、乗ったタクシーの運転手さんが道を間違えると、“何やってんだよ、道が違うよ、と突然怒る”ゴルフを一緒にやっていて、崖の下に落ちた球を打ち上げるべえと強い素振りをすると、崖の上から見ていて、空振り、空振りと声を発する。素振りだよというが許されない。実のところは空振りであった。短気な人ほど魚釣りが好きだというが、その通りで釣りの名人でもあり、海でも川でも釣果を上げた。私は短気だが釣り下手であった。マメマメしく仕掛を替えたり、餌をとりかえなかった。さて、佐賀県鹿島出身にもう一人大切な人がいる。私の体のメンテナンスを毎週土曜日に来てくれる、鍼灸の達人だ。この先生の実家が焼肉の“食道園”であった。紫色のヘアースタイルを教えてくれていた。この先生も人一倍正義感が強く、曲がったことが大嫌い、そしてプッツンする。そして先生も釣りの名人でもある。海、川いずれも凄い。私の誕生日に海岸からの投げ釣りの道具一式をプレゼントしてくれた。しかし未だに一匹も釣れてない。私のペンネームは“島以佐機”である。茅ヶ崎に引越して初めて投げ釣りした時、奇跡的に釣れたのが、“シマイサキ”であった。家に持ち帰り塩焼きで食べ一杯飲んだ味は最高、気分は抜群だった。以来シマイサキなどは釣れない。九州出張の初日の宿泊先は大牟田の友人宅であった。二日目は鹿島のビジネスホテル。夜七時から観光協会の会長さんと食道園で会食打ち合わせとなっていた。平塚の達人には決して私が行くことを告げてはダメだよと言った。予約は相棒の名でとった。達人には映画に出演してもらったことがあり、私の名前は知れている。もし私と分かったら、勘定はいいですとか、支払いに手ごころをさせてしまうかもと思った。さて、七時頃入店となり名刺を交換して話を始めた。佐賀は和牛の旨い地である。ご主人の女性が肉をコンロにのせてくれる。話は弾む。観光協会会長は、“ガタリンピック”(有明海の干潟でのスポーツ)の生みの親であった。いよいよ友人の熱弁は盛んになり、しきりに私の名が出るようになった。と、ご主人の女性が隣りに来て私の腕をつかみ、もしかしてと私の名を言った。達人から三人のお孫さんの写真を預って来ていた。相棒に勘定をキチンとしたらと打ち合わせしておいた。肉は格別に旨い。値段は東京よりぐんと安い。でも遅い昼食だったせいか三人共多くが食べれなかった。鹿島出身に衆議院議員の方がいて少しお付き合いがある。(政界のボスの側近)その先生の秘書が、偶然私の会社にいた男の妹さんであった。議員会館に行った時、あいさつされてビックリした。先生は東大法学部卒、大臣の時にしつこい地方紙記者の質問に、佐賀県人らしくプッツンして辞任した。さて、勘定はちゃんと済みましたとなり、実はと言ってお孫さんたちの写真を渡すとそれを見てウルウルした。五・六年達人は帰っていない。観光協会の会長はなんだそうだったんだと笑った。みんなで記念写真を撮った。ホテルに向って歩いて行くと遠くでずっと手を振ってくれていた。又、来るからね、元気でねと私は大きな声を出した。昨日金曜日、佐賀の議員先生から電話があった。会長から聞いたよ、そうだったんだ、食道園むかしからよく知ってるよと言った。遊郭をしていた友人のお父さんには、選挙でずい分世話になったんだと言っていた。選挙もなくなったので近々ぜひお会いしましょうと言って電話は終った。そして今日土曜日一時に平塚の達人に針を打ってもらった。世の中は広いようで狭い。私が大ファンである芸人、“江頭2:50”も佐賀県人である。全裸になってトルコでパフォーマンス、逮捕されたはずだ。サイコーです。ぜひお会いしたい方なのです。
(文中敬称略)
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