あ〜夢も希望もねえ、世の中どうなっちまってるんだよマッタク。
も〜やってらんねえ、こんな気分が充満すると、流行るのは昔も今も川柳だ。
今それが静かな流行となっている。
昨日九時七分伊東行きに新橋から乗った。
キオスクで夕刊紙三紙と週刊誌一冊を買った。ヨイショと座り、まずは夕刊三紙を読む。今朝は朝刊が来ない日だった。
ここでは新聞の話ではなく、横浜を通過したあたりからパラパラと読み出した週刊誌の中で、思わず笑ってしまった川柳を紹介する。
「シルバー川柳傑作選」とタイトルにあるから私たちのことである。
「先ねるぞ 安らかにね と返す妻」なるほど、
「老いるとは ふえる薬と 減る記憶」そうなんだよな、
「マイナンバー ナンマイダーと 聴き違え」ウマイ!
「年賀状 出さずにいたら 死亡説」聞いたことあるある。
「耳遠く あの世のお呼びが 聴こえない」いいではないか、ずっと生きていれば、
「改札を 通れずよく見りゃ 診察券」これはけっこう切ない。
「シルバーだ 銅(どう)にも動かぬ 我が体」これもウマイ!
他にもいいのがたくさんあった。
48才から91才の人までが投稿していた。
まてよ、笑っている場合じゃないとページをめくった。
チクショー若い頃なら、チクショーあの頃なら、チクショーせめて10才若ければと一日中チクショーと思っている。
45才まで手帳も持たず、電話番号は殆ど覚えていたから電話帳も持たず、一日何本打合せやオリエンがあってもメモも取らず、どこへ行くも身一つだったのに、チクショー、チクショーなのだ。つまりはシルバー川柳の対象として生きている。
いいか、プロはな、あっ忘れましたは一つも許されないんだ、なんていっていたのが、いけねえまた忘れちまった。
なんだまた同じこと聞いてとなり、カバンはどんどん重くなる。
不眠症だから熟睡感は一年365日ない。
元旦から大晦日まで半熟卵みたいなのだ。
最後に「目覚ましの ベルはまだかと 起きて待つ」この経験かなりあるもんねえ、なのだ。朝早い打合せの時、目覚ましをかけてそれが気になり起きてしまうのだ。
チクショーといいながら時計の針を見るのだが針は一秒ずつしか動かない。
十秒は意外と長い。ウサイン・ボルトの100メートルのタイム9.79秒(この間の世界陸上)なんてそんなに速くねえかもなどと思うのだ。
シルバーを笑う若者よ、十秒は長いが歳を重ねるスピードは速いぞ、あっという間に三十代、ぞっと思うと四十代、ガチョーンとシルバーまで一気だから一日一日を大切にだ。
どんな大金持ちでもどんな貧乏人も時間は平等だ。
こんな言葉がある。
「酒もやらず、女もやらず、100まで生きたバカがいる」二十代ならまずは遊びたまえ、三十代ならいいものを食べたまえ。
大金持ちのソフトバンクの孫正義、ユニクロの柳井正、楽天の三木谷浩史たちに共通しているものがある。顔相が貧しい。金ばかり追っている人間共通の貧相だ。
彼等が何兆円持っていても命を手に入れることはできない、やがて死ぬ。
そしてあっという間に忘れられる。いい遊びをして来なかったからだ。
良い文化を作ることに貢献していないからだ。
「シンドラーのリスト」という映画の主人公がこんな言葉を遺している。
「金は汚く稼いでもいい、美しく使えば」シンドラーは稼いだ金で、アウシュビッツに収容されていた人間を何千人も救けた。
ユダヤ人の中でシンドラーの名を忘れる者はいない。
わずかな銀貨(シルバー)を手にするためにイエスを売った。
ユダの悪名も忘れることはない。(文中敬称略)