人間は頭に来るとどうなるか、当然怒る。
怒るとどうなるか顔に出る。
顔に出たあとどうなるか口に出る。
これが決まりなのだが、この人は違う。
昨日深夜長い間の謎が分かった。
コンピューターのプログラマー&ホームページやウェブのデザイナーをしているその人は、もう何年間も私の無理難題や、奇跡に近い注文を私の狙い通り、それ以上に平然とカタチというか映像デザイン化してくれる。
メカオンチの私は次々とあ〜して、こ〜してと頼む。
時には相当に頭に来る言葉で頼む。
が決して怒った顔をしない。
怒気を含んだ声も出さない。
○○さんは怒ったことあるのと質問をしたことがある位だ。
九月八日にひと勝負かけている仕事があり昨日深夜まで二人で一コマ一コマ、半秒一秒、句読点の微妙な位置まで編集作業をした。
決まればその業界初といえる自信作が生める。
それ故注文も多い。
かなり形が見えて来たので、その人の会社の入っているビルの地下にある焼き肉店で腹ごしらえしようとなった。
私は日本酒を一合飲んでいいと聞いたら、どうぞと笑った。
○○さんはウーロン茶。
かなりいい線に来たねと言えば、マアウフフこれから朝までと言った。
牛タン、ハラミ、野菜サラダ、カルビーを焼き、二人共ビビンバ半分サイズを頼んだ。頭が疲れ切っていて食欲がなかった。
そうか昼にお世話になっている社長さんに、これは旨い!という特製シュウマイ二個とネギ&細切りチャーシューメンをごちそうになっていたからだ。
15分位外でお待たせしてかなり叱かられた。
店の中で待っててと言ってくれればいいのに、ハイスイマセン店の位置がわからなかった、と謝った。
で焼肉店、ところで○○さんはずっと前から今のコンピューターの仕事を考えていたの、当然理工学部系だよね。(ずーとそう思っていた)息子さんもやっぱりそっち系に進むのと聞いたら、僕は○△大学の哲学科卒ですと言うではないか、へぇ〜哲学と今の仕事全然関係ないじゃんと言った。そうですね哲学でメシは食えませんからと言った。
友だちなんかはどうしたのと聞いたら、マアせいぜい学校の先生とか、本屋さんとか、えへへへと笑った。無学の私にとって哲学なんて(?)(?)(?)哲学ってどこから入るのと聞けば、まずはやっぱりソクラテス、プラトン、アリストテレスをギリシャ語の原書でなんて平然と牛タンとカルビーを食べながら言った。ニーチェやカント、サルトルなんて言って、マアあれこれコンピュータ(パソコン)で調べている内に今の仕事をしているんですと言った。
聞いてみないと分からない。
聞いてみて分かった。
だから○○さんは絶対自慢話をしない。
人の悪口を言わない。
自分の会社の社長の悪口を言わない。
絶対にお金の話を自分からはしない。
そうか哲学を極めていたんだと、ため息をつきながらワカメスープを飲んだ。
哲学のない自分がはずかしくなってしまった。
感情ムキ出しで悪口雑言をはき出す自分が。焼きすぎてコゲてしまったハラミを箸でつまんでいた。
本日の肉は鹿児島の△□牧場の△□さんが生産したものですと、生産者のニカッと笑った写真を店員さんが見せに来た。来年のNHKの大河ドラマは西郷さんが主人公だから鹿児島ブームになるかもなと言った。
写真では大きく元気に育っていた牛ちゃんが、切り刻まれて目の前の皿の上にのっていた。
○○さんはポツンと言った。人間は雑食ですからねと。