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2013年3月11日月曜日

「ル・アーヴル」




愛を語るにはどの国の言葉が一番かといえばやはりフランス語です。
フランスには何が似合うかといえばフランスパンと赤ワイン、それとチーズ。

花の都パリよりも下町がいい。
港町、小さなスタンドバー、アコーディオンからシャンソン。
人生の何かをたっぷり身に染み込ませたマダム、中年を過ぎた労働者たち。
煙草の煙、今にも落ちそうなくわえ煙草の灰、ガラスの灰皿。
洋服ダンスにはスーツが一着、ワンピースが三着、狭いキッチン、一メートル四方くらいのテーブル、二つだけの木の椅子、セミダブルのベッド。

主人公はかつてパリで雑文を書いていたという年老いた靴磨き。
密入国して来た黒人の少年、賢い犬、ツケを取り立てずに食品を売る人情ある夫婦、密入国者を追う警視。

主人公の名はマルセル、彼が愛する妻は末期がんを宣告されてベッドの上。
夫には内緒にしていてと言って痩せていく妻。
夫に悟られない様にほっぺに赤いチーク、一輪挿しの花瓶にはバラの花。
赤色、黄色。完治を願うマルセル。

妻は医師に聞く「治らないの」医師は応える「奇跡が起これば」妻はいう「私のご近所では奇跡は起きてないわ」と。妻を見舞うご近所の友人女性、フランツ・カフカの短編を読んであげる。

一杯だけ飲むお金を妻からもらって飲みに行くマルセル、一杯おごってあげるわと言うマダム。不景気だから嬉しいというマルセル。
とまあ書いているだけで心が豊かになる映画であった。

見逃していた映画のDVDが出たので早速観たのであった。
妻の名はぜひ観て下さい。
ラストに近いシーンは声が出ないと言って歌をあきらめていた銀髪の老ロックシンガーのコンサート、彼の名は通称リトルボブ、これが最高にいい。
目頭が久々に熱くなった。 

カンヌ国際映画祭国際批評家協会賞受賞2時間を超える映画が多いでこの映画は93分、フランス文学の真髄がある。
妻に奇跡は起きたか否か。300円出せば分かる。
(今TSUTAYAで旧作、新作五本借りると1000円※地域によって異なります)
映画の題名は「ル・アヴールの靴みがき」監督は名匠アキ・カウリスマキなのだ。
文学を失った日本映画よ目覚めよ。

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