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2019年4月19日金曜日

「薫風」

人の名前には、その人でなければならないという名前がある。「葛西薫」氏もその一人だ。名は体を表すと言うが、この人ほどピッタリの人はいない。日本の広告界、世界のグラフィックデザイン界、タイポグラフィーデザイン界、パッケージデザイン界、そのすべてで横綱の位置にいる人はいない、浅葉克己氏、副田高行氏、井上嗣也氏が、四大横綱と言える。その名の「薫」の通り、どの作品にも葛西薫氏独特の〝薫風〟がある。常に新しいものに挑んでいる。大胆かつ繊細、冗舌にして寡黙、斬新にしてふるさとの薫がする。人格も逸品、穏やかで柳の木の如く、サワサワとユラユラとしている。現在日本にいるデザイナーたちで、葛西薫氏を学んでいない人はいないだろう。若者たちのいわば静かなるカリスマだ。過日芝白金の画廊にて、葛西薫さんの知人である詩人とのコラボレーション展があった。私は2点を買い求めた。故熊谷守一先生に匹敵するこれ以上ないシンプルな作品である。葛西薫さん独特の中間色が素晴らしい。その作品が届き、仕事仲間が額装してくれた。その作品を見ているだけで鎮静剤の役をしてくれている。もうかれこれ40数年のお付き合いをさせてもらっている。日本の広告界、デザイン界、コピーライティング界に、スターが生まれなくなった。我々は広告代理店のコンビニエンス(便利屋)になってしまっている。しかしみんな生きて行かねばならない。あと5年経ったら新しい個性や創造力のない広告代理店は、人口知能AIの発達により、ほとんど消えて行くだろう。その人でないとできないものを持った。クリエイターでないと、人工知能にはかなわない。葛西薫氏はいつも変化をし続けている。ご丁寧な手紙をいただいた。それ自体が作品であった。日々学ぶ者だけしかクリエイターとして生き残れない。自分にもっと投資せよ。


 

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