ビートたけしの新作「アウトレイジ最終章」をヴエネチヤ国際映画祭のクロージング作品として会場で観た友人のプロデューサーが電話をくれた。
彼は言った恥ずかしい、いたたまれなくて下を見ていたと。
テメー、バカヤロー、ばかりが両耳の中に乱入した。
外国人はコメディ作品として観ているようで、別段違和感なく、ドタバタ、ゴチャゴチャ、ハタメタの映画を笑って観ていた。
興行収入なんて関係ないと作っていた初期作品は、そのシロウトさが、かえって新鮮であった。
が、やがて会社社長として、プロデューサーとして、何十人かの軍団の生活の面倒を見てやるために、作家性を捨てた。
テレビのMCとして出演し、話が来ればどんな会社のCMにも出演した。
今、日本のテレビ局は”たけし””さんま””タモリ””マツコ”にモノが言えない。
四人共かつてのように芸を磨くこともなく、ひたすら劣化し、体制はモノを言えず、テレビを遊び道具でしかなく思っている。
ギャラは高くザックザック入る。
この四人を超える存在は出ない。
さんまは切れ味を失い、タモリは散歩者となったが、たけしは芸術を追い続けている。
特に絵がすばらしい。
昨夜かつて私たちの会社に10年間いた優秀なグラフィックデザイナーが東京を離れて、故郷に帰ることになった。
で、10年間共に過ごしたメンバーが集まって送別会をやった。
あの頃は良かった、楽しかった、仕事はいくらでもあった。
ギャラも良かったので給料も良かった。
クライアントや代理店にもサムライが多くいて、やりたい事ができたという話で盛り上がった。
高級レストラン的カラオケ的であった。
一人ひとり唄って別れをおしんだ。
仕事の関係で来れなかった人間の心あたたまる手紙を読んで涙を流していた。
時間を三十分延長した。
みんなで一本締めをして私は帰った。
その時一枚のメールをプリントアウトしたのを渡された。
私のシネマフレンドからだ。
そこには、「アウトレイジ」を観て来ました。
全然ダメでしたとあった。
テメエ~、コノヤロー、ブッ殺すぞ、本当は心やさしい、ビートたけしにヤクザ映画は向いてないのだ。
私は相方のビートきよしのファンである。
どこで何をしているか分からない。
以前寒川神社の近くの白峰寺というペット専用の御寺さんで、恒例のイベントがあった。
ゲストのきよしさんはミカン箱の上に乗って愛犬との切ない思い出話をしていた。
佐良直美さんもペット大好きとかで来ていた時がある。
一本一万円もする卒塔婆には、オウムの○△ちゃん、亀の△△ちゃん、ハムスターの△○ちゃん、ピラニアの□△ちゃんと様々なペットの名がズラーと何本も書いてあった。
ビートたけしと、一匹の犬のロードムービーが観たいなと思った。
バカヤロー、コノヤロー、ブッ殺すのセリフはなく、”ヨシヨシ”ばかりを。
犬は決して人を裏切らない。