7月1日電力使用制限令開始の日、何処へ行っても節電だらけ、だがその節電の本当の意味はちゃんと説明されてないから分からない。こう節電すればこうなるのといってくれないからだ。
午後10時40分赤坂のクラブに久々に顔を出した。
わたしたち二人、店内は薄暗くマッタリ。十人座れるカウンターに60代前半のお客二人、半円のボックスに私達二人、二つの小さなボックスにお客さん一人、60代後半。ママ一人、背の高い女の子一人。モンペ+ブルマー風ファッションの若い子一人。
ボーイッシュな女の子だ。ビールを一杯飲み干すと突然聞き慣れた音楽だ。カウンター右の60代が歌う。
「美しき十代」三田明のヒット曲だ。節電と美しき十代、妙な気分だ。
で、次に「学園広場」舟木一夫だ。おじさんすっかり青春ど真ん中へ、以下西郷輝彦、橋幸夫、ホステスさんとデュエットで「いつでも夢を」と続く。その間を縫って私の斜め前のおじさんが心を込めて「釜山港へ帰ろう」ときたもんだ。パチパチと消えそうな線香花火の様な力ない拍手。で、次に「珍島物語」。アッチの人じゃないのとコッチの人に聞くとアッチの人じゃないけどアッチでの遊びが好きな人なんだと。ジャンジャジャジャーンとカウンター左の人、始まりました。名曲「奥飛騨慕情」次に背の高い女の子が五輪真弓の「恋人よ」あーあ頭が痛くなってきた。
この日一緒の男と難しい話を長くしていたので野口五郎のなんとかという歌を聞く頃には頭が完全に消灯してしまった。
何しろ節電の日の割りにはおじさんたちは週末十分充電していたのだ。
充電といえばあの事件から7ヶ月、暴力振りまくりの海老蔵が無罪放免で舞台に立って見得を切る。いよ!日本一とかさすが千両役者だとか。一方不良少年上がりのリオン君は恥をかかされた先輩のために懲役へ。名門の出と不良の出の違いとはいえ不条理ではないか。法は平等でないといけない、ケンカは両成敗と古来より決まっているのだから。
どんだけ大金が動いたかは分からないが私はやっぱり海老蔵君とリオン君が一年くらい同じ房の中で生活して肩を組みながら「高校三年生」とか、「修学旅行」なんかを歌ってほしいと思うのだ。そして二人揃ってもう灰皿でテキーラなんか飲んでケンカするのは卒業しようと誓い合ってほしいと思うのだ。
海老蔵が堂々と見得を切る。その目の前に海老蔵が送ったチケットで来たリオン君がいる、目と目があう。緞帳が下がってくる。コレで一件落着だ。