※写真はイメージです |
この世は10%の富裕層が更に富裕層になり、90%の人々がより生活苦になる。
私が通う東海道線が多摩川の長い鉄橋を渡る、上りなら渡ったら東京、下りなら渡ったら川崎だ。その鉄橋の側下に大きく広いゴルフの打ちっ放しがある。
その側にホームレスのブルーシートの家(?)が最近増え続けている。
一週間の内四日は人身事故による列車の遅れが放送される。
その度心の中で手を合わせる。
ある飲み屋でこんな会話を耳にした。
「オレヨォー、土日はゴルフの打ちっ放しに行くのヨォ、時々ヨォホームレスの家(?)に向けて打ち込んでやるんだ」
「そりゃマズイじゃないんですか、万が一の事があったら殺人ですよ」
「大丈夫、おれ下手だから滅多に当たらないよ」
「でも先輩そんな事いけませんよ、絶対」
「ウソでしょ」
「本当だよ、ドライバーなんかで思い切り打ち込んだのを見たぜ」
私は知人と二人でその声がよく聞こえる席に居た。
二人の男、一人は四十二、三歳位、一人は三十四、五歳であった。
場所は赤坂ヤッカン通り(ヤクザ者と韓国バーが多い)の入り口、三十年以上通っている店だ。
二人は今まで見た事はない。
IT成金なのか私には全くわからないカタカナ用語が交わされている。
また一億、二億の金額がポンポン出る。売り抜けたとか、損切りしたとか、株式用語がブイブイ出る。ゴルフ好きなのか話の途中でゴルフの自慢話がグイグイ出る。
私といえば頭の中でコノヤローシメテやるか、いや放っとけやが入り交じる。
飲んでいた酒が旨くないので店を変える事に決めた。
いい年して怒っちゃダメと自分に言い聞かせる。
で、伝票を持ってレジに向かう。
二人の男の横を通りながら、オイ二度とこの店に来るなよ、今度あったらお前らに向かってドライバーを打ってやるからなといった。
二人はポッカーンとしていた。知人が随分大人しくなりましたね、むかしだったら大変だったのにといった。
店のオヤジはペコッペコッと頭を下げた(すいません、一見の客なんですといっている様だった)。弱い者をイジメる奴は決して許して来なかった人生だ。
外に出ると霧雨が降り続いていた。雨には短刀、短刀には赤い血が似合う。
霧雨には一人で殴り込むのが似合う。映画のワンシーンを思い出した。