私が眠るところの斜め上には、約2メートル位のプラスチックの屋根もどきがある。そこには雨どいがないのでスキ間から雨が落ちる。透明なその部分にドタバタ、バタバタ、バチバチと雨が叩きつけた。午前一時~四時半頃まで映画を見ていた。いつもは雨音も風流なもんだと言っているのだが、今朝のように大騒音となると、やっぱりちゃんとした屋根にしとけばよかったと思う。映画の音量はフツーは10か11なのだが、イジョーな日は18から20にしなければよく聞こえない。私の眠る所は、「方丈記」を書いた「鴨長明」の住まいより狭い。不眠症なので何かを見たり、聞いたり、読んだりと、たりだりを必要とするので、一階のキッチンのテーブルの横で横になる。壁にテレビ画面がくっついているので、それを見ながらが常なのだ。又、冷暖房機が現在2機しか稼働しておらず(一機は愚妻の部屋)四角いテーブル(お客用兼仕事用)と、長方形のテーブル(食事用)のスキ間が、眠る所となる。電気スタンドは自分の部屋にあるが、そこは今は資料室兼仮眠室など、マルチに使用している。(四畳半位だけど)狭い所では足手まといなので、懐中電灯を置く。家の中をアチコチふとんと枕を持って移動したが、今のスキマがすこぶる気に入っている。今日土曜日は平塚から鍼灸の達人の先生が来てくれるのだが、朝早くに電話が入り、平塚が大雨で大変な状態となり、本日は休診にとのことだった。スキ間が治療スペースになるのだが、今日はハリのない日となった。テレビをつけるとすさまじい雨の恐怖が拡大している。午後一時頃熱海の猛烈な山崩れ、土石流は家屋を根こそぎ飲み込んでいる。南極や北極が30度を超えたり、アメリカでは50度近い温度となったりと、地球温暖化の影響は、異常度をウサイン・ボルトより速く進めている。オリンピックはいつの間にか、中止か延期かではなく、無観客か有観客かにすり替わっている。いつもの日本流論点代えだ。雁首揃えていた専門家たちは、無視無視コロコロキンチョール。日当もらってルーチョンキだ。提言に決死の覚悟がない。雁首の中には一度も声を発することなく、まい日バイトの如く、日当もらって帰っている者も多いはずだ。「存在の耐えられない軽さ」こんな題名の映画があった。何度も書くがこの国は、地震帯の上にある国。四方八方が海、国土の半分以上が山の国。山を大切にしない、樹木の手入れを大切にしないから、同じ災害を繰り返す。海に敬意を表しないから同じ被害をくり返す。(被害にあった方々に心よりご冥福をお祈り申し上げる)コロナだオリンピックだと言っている内に、40年以上経った原子力発電所の運転がいつの間にか再開されている。東京電力の社員の給与が上がっている。「オオカミの皮をまとう男」というスペイン映画を見た。“あなたが何を食べているか、それを知ったら、あなたが分かる”美味礼讃にそんな言葉がある。主人公の男は四十歳位だろうか。雪深き山の中一人で暮らしている。家の周りには、粗末な十字架がいくつもある。誰かが住んでいたのか、誰かが来て死んでしまったのか。筋肉隆々、ヒゲもじゃの男は、自分で撃ち殺した獣の肉をむしゃぼっている。オオカミを殺し、その皮を山の下の村に行って売る。ずっと孤独だ。村に貧しい父娘がいる。父は姉を男に売る。生きていくために。娘は雪山の中で獣のような男の相手をする。多くを語らない男、娘は子を宿しており死産となる。娘は実は未亡人であって、子は村の誰かとの子であった。父は村人の噂を怖れて男に売ったのだ。その娘はやがて死ぬ。その遺体を雪ぞりに乗せ、男は山を下り父親にその事を正す。父親は謝罪の代わりに、美しい妹を嫁にと差し出す。村人たちとささやかな婚礼の式をする。父親は山に向う娘に、もしもの時はこれをと毒の入った袋を渡す。男を知らなかった美しい娘は、日々獣のような男の相手をする。そしてある日、雪山の中を逃げる。が山の中で男が仕掛けてあった、獣を奪るための仕掛けに、足をとられてしまう。やがて男に見つかり小屋に連れ戻される。半死半生の体を男は必死に温める。男は何も語らずにひたすら娘のために尽くす。美しい娘の澄んだ目はそんな男を見つづける。娘は何かを感じていたのだろう。しかし男の体には少しずつ異変が起きていた。この男の周辺に何があったのか、それを知っているのは山でしかない。空には不気味にハゲタカが群れを成して飛んでいる。中上健次の小説を映画化した「火まつり」を思い出した。何度見ても何故無理心中したのかが分からない。その答えは血であったのか。人間の本当の正体とは、何故私は私で、あなたが、あなたなのか。科学的に誰も証明できない。ニュースでは都議選のことを少し流していた。何かコントを見ているようであった。“私は当選したらすぐやめます”「議席を減らします党」の立候補者のポスターのキャッチフレーズに笑った。もう一人、“私はバカでしょうか?”京大卒。「愛の力党」都民の皆さん必ず清き一票を。
(文中敬称略)