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2010年2月3日水曜日

人間市場 ゲテモノ市


カバの肉をたべたらよ、バカに旨かったよ。

そんなバカな話からその夜の酒は始まった。
イモリとヤモリはお酢に漬けたら中々良かった、ピクルスと一緒ならベリーヌルヌルだよマァ四つ足のドジョウみたい。ワニはササミと同じでヘルシーよ、アナコンダはナンノコンダの事なく凄くさっぱりしたいい味だよ。
コウモリはスズメと同じかな、フルーツバットで皿の底に沈めて置いたらお客の女の子が二人腰抜かして泣き出したよ。最初はバカルディのラムのマークみたいにガラスの入れ物に絵が描いてあると言っておいたんだ、それが本物だからそらオドロクわなぁ。他にもセミの佃煮風、バクの串焼き、オウムの唐揚げ、キツツキの焼き鳥、ピラニアの潮汁風。

サルの日干しビーフジャーキー風なんて次々にテーブルに出したら二人の女の子ギャーギャー喚くわ、泣くわ、飛び上がるわ、後ずさりして川に落っこちるわもう大騒ぎ。付けてたまつ毛が取れて涙で化粧が流れて鼻水ズルズル、猛毒のブラックコブラを放り投げたら、もの凄い声でキャ〜といって俺に二人共しがみついたよ。助けてぇ〜って言ってな。これだから奥アマゾンのツアーコンダクターは辞められないんだ。


この男は元々、探検家、兼写真家、兼ゲテモノ料理人、兼旅行案内人、兼女の子驚かし専門屋。こんな話をでかい声で話すと回りが嫌な顔、キリン、シマウマ、リカオン、象、ライオン、ピューマ目にした物は何でも料理して食べてしまうのだ。

人を食った様な男が今度日本料理屋を出すと言う。
ヤメロヤメロ、何食わされるか判んない大友対の大合唱。知らないお客さんまで絶対反対と言ってた気がする?

店の名は「ナンデコンノダ」大好きなアナコンダからとったと言う。コンダの方が縁起がいいじゃないかと言うと混んだら人が入れなくなる、なんてわかんない事を言う。奥さんはワニが洋服着ている感じ、判りますか万事骨ばっているんです。

動きもニューッと這いずる感じなんです。なんでも間接性リウマチが酷くなってアマゾンに居られない、いい治療が出来ないからとか、料理屋はリウマチ持ちにはキツイよと言うと、私は一切タッチしませんと応えた。曰くワニを食べ過ぎたのが原因じゃないか、体中ワニみたいに固い鎧を着ている感じになってしまったのだとか。カバも食べ過ぎたのが原因かもしれないとしょんぼりしていた。関節には白い物が巻かれている、近々車椅子になるとか。
あ〜あ嫌だ、こんな話。気持ち悪い話、ゲテモノ嫌いなの知ってるだろう?お前達は食べ物回りに手を出しては絶対駄目。そんなアマゾン風日本料理なんてお客入る訳がない、そうかな、ワニの刺身、コウモリの南蛮漬け、カバのチャーシュー風、ピラニアの網焼き、メインディッシュはバクの和風ステーキ。もう終わり駄目、警察に捕まるか病院に入れられるよ君たち。

それにしてもよく寿司食うね、久々の寿司だから旨いね、全く。
ダンナさん今度このネタの中にターポン置いてみてよ。きっと誰も判んないよ、元々人間なんて挑戦的に色んな食材を見つけたんだ。目に入る物は口に入るんだから、何でも最初に食べた人は偉い人だよ。牛だって、豚だって、猪だって。

おいテレビ見てみろ、猪が警官から三発も銃弾受けて死んでしまったよ、可哀相に。猪だって山ん中に食べ物が無くなったんだ。いつか熊と会話したという伝説の山の狩人がこの地球上で一番恐いのは人間だって熊が言っていたと、本当か、クマッた話だな、アラッ。トホホでこの場は終わりとなりました。奥アマゾンに行く人紹介します。

ただ食べられる可能性があります。人を食った様な話をする事で有名な奴ですから。


2010年2月2日火曜日

人間市場 少年院市

119日小田原少年院で成人式があった。
少年院で社会復帰の職業訓練を受ける1621歳の院生は50人。内11人の新成人の門出を院生、保護者、教官らが祝った。胸に赤い花を付け、赤いネクタイに紺のブレザー。11人全員が「二十歳の誓い」をした。

十代の時は身勝手だった。何度も涙を流した母の為に真っ当に生きたい。
好き勝手をして多くの人を傷つけてきた、そんな自分を見捨てないでくれた家族を助けていく。

これまで嫌な事、やりたくないことから逃げていた。二度と逃げの人生に戻らない。お金に困っても働く考えはなく、母に甘えてきた。自分の事は自分で出来る力を身につけたい。
11人は胸を張り、自分で考えた一分前後のスピーチをしたという。保護者らは何度もハンカチで涙を拭っていた。

院生の心の相談をし、物心とともに支援する小田原地区の保護女性会はノートを、教誨師会は塗りばしを、篤志面接委員会は印鑑を贈った。責任を自覚してもらう意味を込めた。こんな記事を新聞で読んだ。

関東の主な少年院には特別少年院(久里浜)、準特別少年院(小田原)、中等、初等少年院(印旛沼、八街)等がある。私が少年の頃、よくヤキの印旛か八街かと言われた。新人はマッサラと言われる。事件がチンケな人間は止めどなくリンチを受ける。窃盗、詐欺、婦女暴行等は一番標的となる。逆にでっかい傷害殺人等は一目置かれる。
リンチを受け続けた少年達はほぼ精神を病んでしまう。恐怖から廃人になってしまう。(それは隠され世の中には決して出ない。)又、自殺する。

私は拙書で親の人に少年院で更正が出来ると思うなと書いた。親の中には少年院で本当に真っ当になると思っている親がいる。
私は家庭裁判所の審判の日こんな先輩や後輩のケースを何度も見て来た。親が土下座して私の育て方が間違ってました、責任は私にあります、何とかもう一度だけ機会を与えて下さい、と言って涙を流し泣きじゃくる、そうすれば保護観察で済むケースの時、○□ちゃんしっかり更正して来てね。パパもママもみんなも待っていますからね。お金持ちの両親程少年院で更正できると思っている。少しでも見栄えが良ければ十中八九オカマを掘られる。三ヶ月位はリンチ、リンチ、リンチが常識である。教官は見て見ないフリをする。むしろオイッ早くしろ、オイッそろそろ止めろ死ぬぞなんていうのが多い。当然心から更正を願う献身的な教官もいる。他の教官から一人だけいい格好すんじゃネエぞなんて言われながらも更正を目指す手伝いをする教官だ。

 少年法の改正で十四歳でも事件によっては年少入り(少年院入りの略)となる。

昔日本テレビでプロデューサーをしていた友人、青木英明氏より総理府提供の番組「ニッポンレポート」という日曜日の十時〜十時半の良心的番組のレポーターを頼まれた。六回シリーズの第一回目「金原二郎のニッポンレポート聞け、非行少年の声」であった。

起床から就寝まで二日間に亘りレポーターをした。その頃非行の始まりは十四歳が多かった。今は十歳位から十二歳が一番多いのではないかと思う。特に女の子は初潮の時期が早くなっているからだ。女の子ではなく子をうめる「女」になっているのだ。確信犯的ワルではない限り一人一人みんな優しい良い子たちだ。一人の十四歳の女の子が器用に毛糸の編み物をしていた。お腹の中にいる小さな命のために、少し膨らんだお腹をさすりながら近々女子医療刑務所に移鑑になるんです、そこでお産をするんですと言って白い小さな靴下を見せてくれた。

十七歳の三人の若者はすでに体中に刺青を入れていた。背筋をピンと伸ばし自分たちは立派なヤクザになって必ず親分になりますと胸を張った。十数年前には可愛い赤ちゃんであった若者に一体何が起きたのだろう。

○□ちゃんと言ったご両親と話をした。何でも好きな物を買ってあげたのですよ、湘南白百合にも入れて、バレエやピアノも習って本当に良い子だったんです。家庭教師も付けてたし、パパから英語も教わっていたんです。突然、本当突然にガラっと変わったんです。まさかあんな事をするなんて今でも信じられないんです。お前が細々言いすぎたんだよ、何よパパの方がいつも午前様、休日はゴルフばっかりだったじゃない。ウァ〜と泣き伏した。年頃のお子さん、お孫さんを抱えている方々にこんな一人の若者の言葉を贈ります。審判で少年行きを決められ、手錠をかけられ出て来た少年は友達に向かって、特少だよ、そして両親に向かって、オイテメエラよく憶えておけよ、年少に入れやがって、トコトン悪くなってやるからな!その口の中にある歯はシンナーやボンドやクスリでボロボロでした。

土下座をして、這いつくばって、号泣して自分の子供の少年院入りを阻止して下さい。子供を救えるのは親の愛です。
相談相手がいない人は私の所に遠慮せず来て下さい。

2010年2月1日月曜日

人間市場 立ち食い市

全日本美しくない(清潔でない)立ち食いそば屋チャンピオン大会があればほぼ間違いなくそのチャンピオンベルトを貰えるであろう店が、1月25日をもって閉店した。

正しくは美しくなって西五反田にデビューするという。
35年の長きに亘って銀座二丁目に君臨し続けた。元は白かった汚れきったのれんをくぐると左に給水器、正面に汚れたカウンター、四人掛けボロボロの足の長い椅子、右に目をやると三人程が食べれる薄い板のカウンターがある。
正面のカウンターの奥には、薄くぼんやりとした灯りの中に三人の人影が動く。一人は老人の男、一人はその妻とおぼしき老女、一人はその娘と思われる中年の女性だ。カウンターには生玉子を入れたボール、ゆで玉子を入れたボール、ネギを入れた物、それをつまみ取るギザギザがついた道具、食塩と唐辛子入れがある。
水は当然自分で入れる、何百何千人と使われ続けたグラスが銀色のトレイの上にある。

かつては透明であったグラスは、中の水が見えない程脱色してザラザラとした手触りがある。カウンターの上の段には上げた天ぷらがある。何度も何度も使用された油で揚げられた。海老天、イカ天、チクワ天、春菊天、かき揚げ天、ゴボウ天、ニンジン天、コロッケなどがじっとりと積み上がっている。ライス、半ライス、おにぎりは鮭と梅干しだけ、他にカレーライスがある。

外から見ると誰がこんな店に入るのだろうと恐々通り過ぎる。入ってはいけない世界、入ったら最後二度と生きて帰れないかもしれない。

この店は私の会社の斜め前にある。立ち食いそばは、何しろ待ち時間がいらない。頼んで食べて水を飲んで三分位で終わる。私は立ち食いそば愛好会、同好会、研究会を一人だけで運営している。簡単に言えば一人で食べているだけなのだが。


何故この店が35年やってこれたのか入って食べると判る。昼のお弁当は大人気500円でたっぷりおかず、たっぷり熱々ごはんが食べれる。OLたちが列をなす。みんなハツラツとして並んではいない、どちらかというとやや後暗い感じだ。
おにぎりが格別に旨い、グラマラスな体をしていて手にするとたっぷりその質感を味わえる、コンビニのおにぎりなんて問題にならない。

私には昔から一つだけその日を占う行事がある。ゆで玉子が上手くむけたら今日は良い日、失敗すると駄目な日、要注意となる。この店のゆで玉子は大きくてゆで加減が絶妙にいい。(玉子だけを買う日も多かった)

この薄汚れた空間に職人さんたち、工事関係の人たち、若いOL、カタカナ文字の人たちが混然一体となってそばをすすり、おにぎりを頬張り、チクワ天半カレーやカキ揚げそば大盛りライスとか、海老天そば、コロッケそば、イカ天ざるそばプラスゆで玉子等を整然と秩序正しく食べて払って出る。お客は無言が掟、店の三人もまず私語は交わさない。最後の日に今日で終わりと言って顔を出すと、長い間どうもはじめて娘さんらしき人の笑顔を見た。今日作った物が全部出たらその時点で終わるとか、ゆで玉子が二個、生卵が七個、コロッケがポツンポツンと離ればなれに二個、かき揚げ天一個、チクワ天二本が残っていた。

お客さんは二人中年の工事関係の人、もう一人は私。
ゆで玉子を二個買う200円を払う。一個はマッサージ屋さんの中国人に、そこでゆで玉子を割って見る。最初の割れ目のつけ方がイマイチであったのか前半が上手くいかなかったが、あの三人がこの先良くなる事を念じながらそっとむいてまあまあの形であった。

西五反田の目黒川の側に新装オープンするとか。美しい店にあの三人は似合うだろうか、日影の身の女性が日の当たる身になるとほぼ不幸になるからだ。親父さんとその妻とおぼしき人の声を遂に聞くことは無かった。

2010年1月31日日曜日

人間市場 デニーズ市

「平らな道でも躓く事がある。世の中は不公平なものである」


ある哲人、ある政治家が言った言葉である。60分間速歩で歩き、消費カロリーは300カロリーである。汗まみれになって息を切らせて、コップ一杯のビール分である。


ようこそデニーズへ。かつて入った事もないファミレスに入った。注文はアイスコーヒー一杯である。別に健康オタクではない。自らに達成感を求めて、自らの根性を試している。ゴールドジムに入ったのである。


朝7時半、ようこそデニーズでアイスコーヒーのブラックを頼む。
目の前に四組のお客さんが見える。80人程入る店である。中年の夫婦、若い男二人、一人のOL風の女性。二人のサラリーマン風の男がなんとなく目に入る。
目はメニューのある数字を追っている。中年の夫婦は和定食である。ご飯、味噌汁、焼き魚、卵焼き、グリーンサラダ、納豆。メニューには780キロカロリーと書いてある。食欲盛んな太った夫婦はもりもり食べている。若い男二人は早朝より生ビールを大ジョッキで飲んでいる。フライドポテトにマスタード、トマトケチャップ付きである。ミックスサンドを二人で、メニューの数値は1100キロカロリーである。一人のOL風女性、年の程は25、6歳であろうか、スクランブルエッグ、コーヒー、ハムチーズの小さな盛り合わせとコーンサラダを黙々と食べている。メニューには780キロカロリーと書いてある。太っていないサラリーマン風の二人は何と朝から牛丼を食べている。それにコーヒーである。メニューには860キロカロリーと書いてある。味噌汁、香の物付きである。皆、食欲は旺盛である。


私と言えば、ただアイスコーヒーを飲んでいる。元々、朝食の習慣はない。かつて大河内教授という東大の学長が退任の言葉で、太った豚より痩せたソクラテスになれと言った。私はただ太った豚で終わりたくないのである。ガバガバ食べ、チョコパフェを食べ、飲み放題のコーヒー等をガブガブ飲む人を見ると、強烈な嫌悪感が走る。長生きしよう等と思う気はさらさらない。


中年夫婦の食欲は旺盛である。出た物をすっかりたいらげ、デザートに季節のフルーツを頼んだ。


8時になったので私はその上の階のジムに入った。耳にイヤホンをつけ、速度を時速6kmにセットして速歩で歩く。20分も過ぎると汗が出てくる。目の前のメーターに走行距離、消費カロリー等が表示される。30分を過ぎると汗と共に前の晩の酒が出てくる。少しピッチを上げる。テレビの画像を追いながら、ベルトの上を歩く。40分、45分、50分、60分。全身汗まみれとなる。


私の横で痩せた女性が、もの凄い速さでベルトの上を走っている。凄い速くて痩せている。美人ではない。何か恐い。私がシャワーを浴び、帰り支度をしていても未だ走っている。その時間すでに一時間半は超えている。私はインストラクターに聞いた。あの人は何なの?答えは、神奈川のマラソン大会で二度優勝している人だった。なるほど。


東京に出るべく駅の改札口に行く。そこにかの中年夫婦がいた。共に太っている。糖尿病になるか、通風になるか、高脂血症になるかよろしく食べまくってという気持ちである。


犬も歩けば棒に当たるという。この15年歩いて、歩いて、歩き続けた。中々棒に当たらない。ようこそデニーズのように、ようこそいいアイデアに会いたいものだ。ホームにOL風の女性が立っていた。右手に「美的」という月刊誌を抱えていた。


毎日歩かなければならない人をアル(歩)中というらしい。私は酒のアル中でありながら何となくこの15年アル中になっている。目の前に、牛丼、玉丼、カツ丼、ウナ丼、天丼が浮かんでは消える。何の為にドンドン歩いているのかは判らない。


2010年1月30日土曜日

人間市場 無気力市


無気力的脱力性の人っていますね。何かヤル気あんのか無いのか、朝ごはんや昼ごはんをちゃんと食べているのいないのか。何か下っ腹丹田に力が入っていない人です。

NHKの天気予報士の渡辺博栄さんなんかその筆頭です。もの凄い台風が近づいて来ていても、豪雨があっても、洪水となっても全く話すトーンが変わらない。この人は天気予報をしている間強風で大木がなぎ倒されて命に危険があってもきっと、何事もない様に原稿を棒読みしているだろう。
細い体、猫背気味、度の強い眼鏡、消え入りそうな声、この人が天気予報をすると大事も小言に思える。私はこういう脱力性の人が実は大好きなんです。ヤル気あんのかオリャーとか大声出すと、ありませんなんて軽くいなされるのです。


鶴岡政義と東京ロマンチカというグループがあります。「小樽の人よ」なんて大ヒットを持っています。「君は心の妻だから」なんて毒フグを食べたより痺れます。このグループのリーダーでギタリストの鶴岡政義さん、この人も全くヤル気が見えません。全然当たらない占い師風、すっかりさびれた神社の神主風です。チョビヒゲを生やし、古ぼけたギターをつま弾きます(中々いいんです)か細く、度の強い眼鏡をかけ下をずっと向いています。上を向いて歩かない人なのです、だから時々十円玉や百円玉を拾うことがあるといいます(想像です)。ギターを弾きながら今日は客の入りがイマイチだなとか、ボーカリストの三条正人がもっとギャラを上げろと言っていたなとか、ただア~とか、ウ~とか歌っている連中にリストラを宣告しなければとか考えながらつま弾いているのです(想像です)。


NHKの「のど自慢」の演奏者たち、ピアノ、ギター、アコーディオン、ドラムみんな全然ヤル気が見えません。何しろ歌う相手がリズムを外すのでそれを追いかけてあげるのですから伴奏とは言いません、追秦です。ヤル気なんか出したら大変な惨事が起きてしまいます(想像です)。気合いだ、気合いだ、気合いだなんてハチマキして喚いているアニマル浜口もこの人たちの前では気合いが入りませんし入れられません。


柳生流の極意に無刀取りというのがあるそうです。文字通り相手の刀を素手で取り(或いははさみ)相手を倒す。その極意こそ無力なのです。上ばかり目指す事を考えている目先の勝負ばかりに気を取られている方々、是非ご紹介した人々を見て下さい。きっと勉強になりますよ。


今私が手がけている本の一つは偏差値36位の劣等生がわずか半年死に物狂いで勉強したら見事早慶に入学できたという11人の実録物です。高校の先生から日々お前ヤル気あんのか、今のままじゃ田舎の三流大学にも入れないぞ(すみません、先生がそう言ったそうです)ブログアクセスNO1の塾長林尚弘先生25歳(学習院出身)が出版の相談に来ました。


劣等生という言葉が気に入り引き受けました。三月頃には書店に並ぶはずです。受験は一つのコツだと林先生は言います。


この参考書一冊と決めたらそれと心中する覚悟でその参考書を食べ尽くすのです。偏差値の低い受験生の人、劣等生と言われている人、まだまだ諦めてはいけません。打つ手は沢山あるのです。この国の歴史を動かして来たのはみんな下級武士、劣等生たちですから。


2010年1月29日金曜日

人間市場 待合室市

病院の待合室にいるとひと際目立つ女性が来た。

どんより、まったり、ひんやりしている無言の空間にその女性が入ってくると一瞬室内は緊張感が生まれる。




長身、黒髪、知的、優雅、ハイセンス。こんな人がどんな病気なんだろうと待合室にいる人たちは心の中で思っているに違いない。

風邪かな、胃かなそれとも腸かな、先生はいいな、あんな素敵な女性に、ハイ、服を開けて下さい、聴診器かなんか当てて、ドッキンドッキンの音を聴いたり、お腹なんか触って少し固いですねなんて言ったり、エコーなんか必要でもないのにゼリーみたいのを塗って何やかんやすんだろうなと思っている事がありありだ。




オイ、君たちよからぬ事を思ってんだろうと言おうと思ったが私の口から出た言葉は、お母さん元気?この間風邪引いたって言ってたけど、おそば屋さんで会った時グズグズしてたよ。おばあちゃんは相変わらずお元気だったね。こういった瞬間、室内にプア~ンとした空気が漂いました。会社大変だねと続けると更にみんな自分の病気も忘れたのです。




その女性はJALのスチュワーデスさん、今はキャビンアテンドさん。小さな頃から知っている娘さん、お人形みたいに可愛く、幼稚園、小学校は白百合、その後は清泉インターナショナルへ、英国、仏語、露語が得意。苦手は日本語なのです。少し気取り気味で少しタカビー的、かなりエラソー風日本語なのです。




この日はお母さんの薬をもらいに来たとの事。隣同士に座り二人で話しているとみんな興味津々の感じ。耳をそばたてていて名前を呼ばれ慌てる人もいたりして。会社近々や辞めるんですよ、なんで?と聞くと、何かすっかりプライド傷ついちゃってと答える。アレもダメ、コレもダメ、ダメダメ尽くし。今は成田まで電車で通っているんですよ、だって。

実はタクシー券を使っていたのです。他にも至れり尽くせりで来たのです。




御年28歳独身、かなりワガママです。お金がかかりますがどなたかいりませんか?

ご紹介します?別に本人から頼まれてはいませんが。




私が手にしていた週刊誌の表紙にでっかい文字でJAL法的整理へなんて書いてあります。記事の中には甘ったれた体質、法外な給与年金体制、パイロット、キャビンアテンドへの特権なんて書いてありました。プライドの高い雲の上の人(職場です)ですが是非どなたか立候補して下さい。人生に墜落する危険がかなりありますが。

2010年1月27日水曜日

人間市場 山下公園市



日本でも有数なクラシックホテル、横浜のホテルニューグランドで友人と会った。
この日は一月なのに小春日和。山下公園には沢山の人が出ていた。


ロビーにあるコーヒーラウンジにいると一人の小柄な女性と二人の男が入って来た。女性は法務大臣の千葉景子さんであった。
年を越した102人の死刑囚の命はこの女性に委ねられていると思うと何かを考えさせられた。この女性の判子一つで一つの命は終わる。
千葉さんは熱心な死刑廃止論者、ならば何故大臣を受けたのだろうかとも思った。買い物籠を持てばどこにでも居るオバサンである。法務大臣になったからは鬼の面でも被らなければ判子は押せないだろう。




私はこのホテルが大好きである。特に二階のロビーがいい、又地下のバーはすこぶるいい雰囲気だ。あのマッカーサーも、チャップリンも、ベーブルースも、ルーゲリックもこのホテルがお気に入りであった。「鞍馬天狗」を書いた大作家大佛次郎は318号室に十年に亘って滞在した。318号室は「鞍馬天狗の部屋」といわれ、このホテルで先生といえば大佛次郎の事であったと言う。







ホテルの前の山下公園には色とりどりのバラの花が咲いている。氷川丸が白い船体を輝かしている。港には男と女のロマンがある。NHKの大河ドラマは「龍馬伝」坂本龍馬も海の男であった。「いろは丸」という船を作り海援隊を生んだ。その龍馬に海の向こうにはデモクラシーがあるぜよ、と教えたのはジョン万次郎こと中浜万次郎であった。
土佐の5人の漁師が漂流しアメリカの船に救われる。5人はアメリカの地を踏み欧米文化を知る。中でも議会制民主主義に驚いた。四民平等、誰でも大統領になる権利があり、選挙によって議員が選ばれる。ジョン万次郎は帰国後明治政府の要職となる。


絶対死ぬかと思った不幸の主人公が日本の歴史の扉を開く主人公になる。だから人生は面白い。決して諦めなければ必ず何かいい事がある。何かしなければ何も起きない、犬も歩けば棒に当たるのだ。運はよく学びよく働いた者のみに開けて行くと信じることだ。
年末の派遣村でお金を二万円支給された人間の多くがトンズラしたという。元々働く気の無い者が多いのだからその金でパチンコや競輪や競馬に、又は一杯飲みに行ってしまったのだろう。善意はその原因が判っている者のみにすべきものなのだ。
安易な善意は何の解決にもならない。


中華街でよく買う肉まん屋のオバサンのところに寄った。
私たち一生懸命なのに一度肉まんにケチがついてから買い上げがすっかり減ってしまったと。


コマッタコトアルヨ、ニッポンジンゼンゼンゲンキナイヨ、オキャクサンガンバッテヨ、キットイイコロアルノコトヨと励まされました。
山下公園の長椅子に座り遠くを見ていると色々な事が頭に浮かんだ。プカプカ浮かぶブイの様に。人生はブルース、男はマドロス女は港だなんて思っていると、いろんな思いがゆらゆら揺れた。その時ピカッと光ったな、何だ俺に向ってシャッターを切っている人がいっぱいいるではないかと思えば、私の隣にいる女性に向ってであった。


どこかサントリーの金麦のコマーシャルに出ている女性に似ていたのであった。



2010年1月26日火曜日

人間市場 ピンポ〜ン市

ピンポン、ピンポーン、ハイどなたですかと玄関を開ける。
六十代の女性と三十代中頃の女性そして十歳位の女の子が立っていた。何か、あの私たちキリスト教の布教です。イエス様にご興味は?ノーです。イエスでないのですみませんと言った。
今日は扉を開けてくれてありがとうございましたと言う。丁度玄関の装置が壊れていて家の中の画面に写らなかったのだ。他の家は空けてくれないんですかと聞くと、ええ、ほとんど開けてくれませんと言いながら頭を下げて他に向かって行った。

ピンポーンというから又、玄関を開けると手に大きな紙袋を持った二十六,七のアンチャンが立っていた。チワー、読売新聞なんですがとってくれませんかとりあえず夕刊だけでもいいんすよ。三ヶ月だけでも、何なら本紙無料で入れますよ、三ヶ月でいいんですたのんますよ、これどうぞと紙袋を出す。朝日インテリ、読売ヤクザ、毎日ノンポリって知ってるか、もっとも朝日も毎日もまるきり駄目新聞になっちまったが、読売ヤクザはそのままだな、人の家に勧誘に来るのにスリッパはないぞと言うとすんませんと頭をぺこりと下げた、じゃいいすよこれどうぞと言うからいらないよと言って帰しました。

ピンポン、ピンポーンというから玄関を開けると若い男女。何ですかと聞くとケーブルテレビなんですけど入ってもらえませんかと言う。色々入っているからいいよと断る。カタログ読んどいて下さいと渡される、読んどくわとサヨウナラ。ピンポン、ピンポーン、何ですかと聞くと植木職人です、前を通ったら門の椿の木がお手入れ不足。誰かにお手入れを頼んでいますかと言うから、長い間見てくれていた人がこの間亡くなったんだ、だから植木屋さん探してたんだよ。じゃ是非やらせて下さい。オイ挨拶しろや、この若いの慶応大学の湘南キャンパスを卒業してから私のところに弟子入りして来たんです、中々見所があるんですよ。来週に来ますけどご都合は、ちょっと家の奴がいないから連絡先教えといてよと言ってその日はお別れ。

ピンポン、ピンポーン、自治会の集金です。

ピンポン、ピンポーン、花屋ですが。ピンポン、ピンポーン、クリーニング屋ですが着物が上がりました。ピンポン、ピンポーン、JAですがお米を持って来ました。

ピンポン、ピンポーン・・・、もしもし俺だ。ピンポンピンポンうるさくてしょうがない直ぐ帰って来い、しょうがないでしょ月末なんだから何て呑気な事を言う。とにかく直ぐ帰って来るんだぞガチャン。

ピンポン、ピンポーン、いませ〜ん、誰もいませ〜ん。留守ですよ。

そして電話帳を手に、もしもし金丸電気さんですか、玄関がピンポンピンポンうるさいんで音を消して欲しいんですけど、えっ、直ぐ来れないの?直ぐに。頼みますよ。マイッテんだよ親父さん。

2010年1月25日月曜日

人間市場 サンドウィッチ市

韓国語でサンドウィッチの事なんて言うか知っていますか?


普段あまり冗談を言わない男がサンドウィッチ大好きな私に言った。
サンドウィッチじゃないの?違います。じゃなんていうの?
パンニハムハサムニダって言うんです。(ちなみにカムサハムニダはありがとう。)
本当か?本当です。よく出来てるな、最高だな、いい事教えてくれてありがとうとなりました。


次の日のランチタイムは女性二人と男一人と共に銀座三原橋の地下韓国料理屋へ。席に着くと若い女性が黒い制服でオーダーを取りに来ました。


ねえ君、韓国でサンドウィッチの事なんていうのと尋ねました。
はぁーと頬を赤らめ、ちょっと待って下さいとレジの先輩風の女性のところに。そして二人で私たちの席へ。お客さん、私たち判りませんと言う。
パンニハムハサムニダって言うらしいよ、よく出来ているよねと教えてあげた。
えー本当ですか、ウソーとか言って厨房の中に消えていきました。


と、今度はエライゴツイ、イカツイ男が私はここの店長ですが、と言って目の前に立つではないか。お客さん変な事言わないで下さい。韓国ではサンドウィッチはサンドウィッチです。本当?本当です。


オイオイ何だよ、パンニハサムニダじゃないの?直ぐツヨシ(教えてくれた張本人)に電話してと電話を鳴らしてもらう。
もしもし、ツヨシか。はい、もしもし。俺赤っ恥かいたぞ。何ですか?パンニハムハサムニダなんて言わないってよ。え、どこかで使ったんですか?使ってるよ、今ここで。どこですか?韓国料理屋だよ。サンドウィッチはサンドウィッチだってよ。えらい叱られたよ。


冗談ですよ、冗談。この間飲みに行った時に教わったジョークですよ。俺はある時は疑い深く、又ある時は100%疑わないの知ってるでしょ。どうも話が上手く出来てると思ったんだよ。


それからお店の人にすみませんでした、ゴメンネ、悪いジョーダン教えるのがいてね、とスゴスゴ退散しました。そんな話を友人にしていて大笑いされた後、フランス語で赤ちゃんが出来た時何て言うか知ってますか?知らないよ、引っ掛けるなよ、で、何て言うの?
シャセジュセって言うんです。本当かい?嘘です。そうだろ。でも良く出来たジョークだよ、漢字で書くとつまんないけどフランス語的に言うと全然いいよな。この冗談は慎重を期して使っていません。


ちなみにツヨシとは森泉強。アドビジョン赤坂の社長で三十年近く同じ釜の飯を食べて来た仲です。いい奴なんです。


世の中冗談言ってる場合ではないのです。が、こんな本を出したツワモノがいるんです。国内外十三年かけて珍しい名前を持つ土地を探し記録し出版したのです。その名も『世界でもっとも阿呆な旅』(幻冬舎)です。
例えばオランダにあるスケベニンゲン、アルゼンチンのマルデアホ、バヌアツ共和国のエロマンガや、鼻毛、南蛇井(なんじゃい)等々。
埼玉県入間市大手半導体メーカーに勤める会社員(慶応大学出身)安居良基(あんきょよしもと)さん(36)の作品です。ストレス解消の一冊としてお勧めです。こういう人がいる事に心から乾杯です。もっと笑いましょうよニッポン人。もっと阿呆になろうよニッポン人。