一輪挿し |
花瓶 |
深夜の楽しみといえば映画を観ながら本を読み、合間に落語を聞きながらチビチビ一杯飲む。
凄味はチーズとかハムとかソーセージ。時々鯖の水煮缶とかツナ缶もいい。
時々コンビーフとかクラッカーもいいし、時々さきイカとかスルメの細切りをジックリ味わうのもいい。
時々何にもなくただ飲むだけなのもいい。
お気に入りのバカラのグラスにあの娘訪ねてなんて思い出にひたるのもいい。
酒と思い出ほど似合うものはない。
秋田で病院を経営している義兄が褒章を受けたのでその御祝いを買いに丸の内にあるバカラの本店に行った。
時計を見ると午前10時43分18秒であった。
広い売り場にお客は私一人であった。
いつ見ても、何を触ってもバカラグラスはいい。
指でパチンと弾くとバカラしか出せない、いい音がカキーンと響く。
ギザギザの花瓶とギザギザの一輪挿しを買い求める。
精算している間バカラグラスを手にしているとグラスの底に思い出がキラキラ光っていた。
目の前に大きな鏡があった。誰だそこに座っている人相の悪い男は。
グレーのスーツにハーレーダビットソンが描いてある。
アロハシャツと黒のベストを着ている男は、随分と歳をとったではないか。
思い出は振り返っても、もう思い出はつくれないか。いや、これからだぜといって鏡の男にいった。
そこには昔若かった私が居た。
細長い品をいいグラスだねといって口にする真似をしたらお客さんそれはローソク入れですといわれた。
知ったかぶりで何度恥をかいて来た事か。
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