日本の映画界に凄い監督が登場した。
その名を白石和彌(39)という。現在上映中の映画「凶悪」の監督だ。
九月二十六日有楽町でその映画を観た。
間違いなく今年度No.1だと思う。
史上最悪の凶悪事件はある死刑囚(暴力団組長)の告発から始まった。
「月刊新潮45」の記者に一通の手紙が来たのだ。
そこには警察も知らなかった事件の全容があった。
映画はその実話を基に白石和彌監督の見事なシナリオによって人間の闇に切り込む極限のドラマ、白熱の犯罪ドキュメント映画が生まれた。
過去に園子温監督によって埼玉県熊谷の愛犬家連続殺人事件を基にした「冷たい熱帯魚」という凄い作品が作られNo.1の評価を得た。
若松孝二、行定勲監督の下で鍛えられた白石和彌監督は「凶悪」という作品をわずか20日間で撮影し終えた。低予算だからだ。
映画は(一)にシナリオといわれる。
どんなに予算を掛けてもシナリオが良くなければ絶対にいい映画は
生まれない。
生まれない。
いかなる名監督、名優を配しても映画は本(ホン→シナリオ)なのだ。
いいシナリオはいいキャスティングを生む。「凶悪」のそれは素晴らしい。
暴力団の人間からも殺し屋と恐れられたシャブ中の暴力団組長にピエール瀧、自分が何人殺したのかさえ忘れてしまう程の殺人魔を抜群の演技で再現した。
その殺人魔を操る通称先生と呼ばれていた不動産ブローカーをリリー・フランキーが演じる。この人は日本最高の役者だと思う。
ピエール瀧と共に今年度の主演男優賞を争うだろうと思う。
「凶悪」における演技は特筆ものだ。金という魔物にとりつかれた人間は最早人間ではない。否人間とは一体何なのかをこの映画は突きつけてくる。
群馬県前橋で実際に起きた実話がベースだ。現在も死刑囚は生きており、先生といわれた男は無期懲役で服役中だ。新潮45の記者は今も先生といわれた男を死刑にするために死体を埋めたという場所を示した地図を手に探し求めている。
気の弱い人、老人介護をしている人、金儲けばかり考えている人、土地の転売をしようとしている人、焼肉が好きな人、ローストチキンやスペアリブの好きな人は決して観ない事をすすめる。
先日東京八王子のホストクラブ経営者がピーピースルーという排水管やパイプ詰まりを解消する医薬用外劇物によって溶かされてしまっていた事件があった。
また今日は建築関係の若い社長が土の中に埋められていた事が分かった。
人間はどこまで凶悪になれるかが毎日当たり前の様に起きている。
茶の間ではそんなニュースをご飯を食べながら平気でみんな見ているのだ。
凶悪な殺人魔は死刑囚となりキリスト教に入信する、そしてこう云う。
キリスト教では悔い改めれば全ては赦されるのだよ、と。
安倍晋三総理がウォール街でこう演説をした「日本は買いだ」と。
金を追う人間たちがこれから何人も凶悪の犯罪人になり、あるいは凶悪の手で無惨な姿となるだろう。わずか一本のインプラントしか残らない様に。
溶けてしまったホストクラブの経営者は金の亡者で自らを平成の貯蓄王といっていたという。
文芸評論の天皇であった小林秀雄がこんな言葉を遺している。
「便利は新たな努力を麻痺させる」便利をインターネット社会に置き換えるとゾッとする時代が見えて来るではないか。
私たちは今やいかなる凶悪事件にも麻痺しているのだから。
現在九月二十七日午前四時ジャスト。
NHK雲上のアルプスの映像を見ながら、マヒ、マヒ、マヒ。
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