“ベルサイユの豚”何だこりゃと大きなネオン輝く看板を見た。
ベルサイユ宮殿で育てた豚かと思ったが、caféであった。その側に有名な牛たんの店“ねぎし”があった。先週木曜の夜、私は渋谷PARCO前を腹を減らして歩いていた。
創作料理“鍋の蔵”なんて店もあり、“薄利多賣屋半兵ヱ”などという気合の入った店もある。渋谷の夜は店の看板を見て回るだけでも楽しい。
一人で食事をする時はイロイロ迷ってしまう。
渋谷は若者の街、特にセンター街は無国籍状態だ。
インド人がカレーどうですとチラシを配っていた。
むむ、カレーかと思ったが一人で食べるカレーはどことなく華麗ではないと思った。
カレーは二人で差し向かい、辛い、辛いを言いながら汗をタラタラ流し合うのがいい。
カレーうどんは突発的事故が起きるので、どんなことが起きても大丈夫な服でいなければならない。
ウロウロと40分ほど歩いて、ハタとある看板が目に入った。
そこには「バーグといえばゴールドラッシュ★一度食べたら止められない!!」
脳内にアツアツジュージューのハンバーグワールドが広がった。
入り口にケバブの屋台、エレベーターには西部劇風のポスターやチラシがベタベタ貼ってある。ドル紙幣のレプリカや、ライフルやグランドキャニオン、インディアンなどのイラストや写真、大・中・小・極小のビラがこれでもかと貼られている。
石塚英彦さんやパパイヤ鈴木さんが「まいうー、まいうー」と貼られていた。
小さなエレベーターから降りると、五、六人が木製の長椅子に座って待っている。
店内はかなり広く、とても暗い。若い男女やグループがワイワイやっている。
お一人ですかと言われたので、一人と応えた。
それじゃこちらへと中へ、中へと案内された。ジュージュー音がしていた。
私が案内された席は二人掛け、左右共に同じであった。
左には40歳位の会社員風の男、首から白いナプキンをたらしている。
メガネがハンバーグから発散される熱い飛沫で曇っている。
その前にでっかいチーズハンバーグが二つ、太いソーセージが二本、大盛りライスが一つ、何度も来ているのか堂々としている。
当然太っている。
右には大学生二人、会話の中で大学の学食の話をしていた。
こちらの前には、トロトロチーズハンバーグがズラリと横に3つ、じゃがいもとグリーンピースやコーン、大盛りライス。
メニューを見ると、150g、200g、300gなどのボリュームメニュー。
私は150g、グリーンサラダ、グラスビール、ライス無しをオーダーした。
テーブルの上に白い大きな四つ折りの紙ナプキンが2枚、何故2枚かはすぐに分かった。
左の男が教えてくれた。
一枚はこうして下さい、アツアツハンバーグが運ばれて来たらそれを半分のせて残りの半分を手前でこうしてハンバーグをかくして下さい、店員さんがソースをかけると、ジュバァーと飛び散り服に引っかかるから、ハンバーグがおとなしくなるまでかくすのです。
なるほどありがとうと言った。もう一枚はこうして服をガードして下さい。
あっ、それはいいんです、キライなんです赤ちゃんのヨダレ掛けみたいなので、あ、そうですか。
ゴールドラッシュか、シアトルの街はよかったなとずっとむかしを思い出した。
右の若者たちはスマホを見たりいじったりしながら、黙々と食べ進みペロッと食べた。
どんより暗い中でやっとこさ新聞の活字を追いながら、アツアツジュージューのハンバーグを食べ終えた。
しばし残りの記事を読み、で、立ち上がると左の男がワンドリンクサービスありますよと教えてくれた。とても人のことが気になる親切な人なのだ。
ビール飲んだからいいの、アリガトネと言ってレジに向かった。
男の口の中から太いソーセージが突き出ていた。腹も大きく突き出ていた。
合計1900円、所要時間約一時間であった。ゴールドラッシュには親切な味があった。
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