私、失敗しないので! この決め言葉を発するのは、米倉涼子演じる外科医大門未知子、別の名をドクターXと言う。一昨日ある新聞に“失敗しない人生は、大失敗”と、古老の言葉として載っていた。いいことを言うな、ならば失敗は何回位していいのだろうか。プロ野球の一流バッターを3割打者というが、10回の内7回は打ち損じ、つまり失敗しているということになる。ドクターXは一度も失敗していないが、他のドクターたちは失敗ばかりだ。病院の手術室に赤いランプがついている間、手術室は密室となる。そこで何が起きようと部外者には分からない。手術中に亡くなりましたが、実は手術に失敗して亡くなりました、この可能性はきっと数多くあるのだろう。信じるものは救われるというが、信じたいがために生き地獄ということも多い。二度と不倫はいたしませんと、誓約書を書いた男と、その相手の女とが、何年かぶりに出会ってしまった。偶然の一致、ある夏のある日、そのバスにさえ乗らなかったら。そして男と女は大失敗へと向う。つまらないメロドラマを昼に流すのを欧米ではソープオペラという。主婦が洗濯(ソープ)を終え一服しながら見るからだ。日本では一時昼メロといって流行った。男と女が奈落の底に落ちていく先には、失楽園がある。私に人生相談(?)をしに来た人に向って、これを書いている。必らず読むと言っていたから。口で言っても地獄への話は伝わらない。人間の下半身は別人格と言う。(どんな聖人も)そこで物言うのが自制心なのだが、不倫を重ねる男と女は、ビョーキと私は診断する。動物なら去勢をするのだが、人間という動物には、つける薬もない。私は行くところまでトコトン行けと無責任に言う。後は死んでも命がありますようにと祈れだ。バイアグラの逆のインポグラみたいな薬が出るといいのだが。あるところでラブホテルを経営している後輩がいるのだが、コロナ禍で商売大繁盛だと言う。多くは本物の夫婦(子どもたちがずっと家にいるから)とおぼしき人々らしい。そして当然イケナイ関係の人々だ。私に相談に来た者は、実はノロケてたのかも知れない。私はいままで何作か短編映画を作ったが、斬ったり、刺したりが多い。一度不倫をテーマにした作品を作りたいと思っている。そこで国内外のその手の作品を見ている。太宰治原作はよくみると、実は殺人犯ではと思う。無理心中で死んだのは、きっと大失敗だったのだと思う。不倫している人、どうか私に話を聞かせてください。どんな相談(?)でも来てください。ある外国映画では中年の銀行の社長(CEO)が、SMマニアで全裸になり縄で体中グルグル巻きにされ、夜な夜な女王様にムチで打たれ、足で踏みつけられる。家にはステキな奥さんがいるのに。そしていたぶられて女王様に犯される。新宿の歌舞伎町に行くと、こんな人はたくさんいる。代表的なのが大学教授、弁護士、医師だという。あとは変態たちだ。大金持ちの女性もSMマニアは多いらしい。昼と夜の顔は、別人となるのだ。一生懸命働いているオトーチャンを大切に、オカーチャンにはしっかりサービスをだ。それしかないのだから。日本の作品は、ワンパターンでいま一つつまんない。ラブホテル経営者の男に一度入り口(受付)をさせてくれと言ったら、それは駄目とピシャッと断わられた。今、日本版の「昼顔」を見ているのだが、つまんない作品だ。“さよならはダンスの後に”とか、矢吹健の“うしろ姿”とか、“あなたのブルース”。“風の盆恋歌”を聞いているのだ。長引くコロナ禍はさまざまなドラマを生み落としている。午前四時四十一分三十七秒、沖縄のミュージシャン喜納昌吉の、♪~ 泣きなさい 笑いなさい……花を咲かそうよを聞いている。ロールパンとチーズを食べている。♪~ 河は流れてどこまで行くの 人も流れてどこまで行くの……名曲である。仲宗根美樹の「川は流れる」はいい。最高だ。♪~ 思い出の 橋のたもとに 錆びついた 夢のかずかず……。失敗の病葉(ワクラバ)だ。ざんげの値打ちもないけれど、十四で恋をし十九でナイフで男を刺し刑務所へ。それでも刑務所の窓から初めての男を想いつづけるのだ。北原ミレイは実にいい。阿久悠は大天才、なかにし礼も大天才だ。今、若者の間で昭和が静かなブームである。レトロが新しい。制服にルーズソックス、ひょっとして、ペチコートを広げた女の子が出るかも知れない。ドドンパが流行するかも知れない。昭和はいい。私ももう一度昭和に帰りたい。昭和は不倫といわず“ヨロメキ”と言った。黒木憲「霧にむせぶ夜」を聞き、朝刊を読んで眠ることにする。私は失敗ばかりだ。新作の映画は昭和のタッチで行く。きっと大失敗だと思うが、大成功を目指す。♪~ 好きになったら 忘れられない……ドドンパ、ドドンパ。私の恋人は映画と歌なのだ。(文中敬称略)
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